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運送会社DXに盲点、点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や方向性探る

「点呼」のあるべき姿とは-討論イベント詳報(10)

2022年9月30日 (金)

話題LOGISTICS TODAYは、オンラインイベント「運送会社DXに盲点、“点呼業務”の主要メーカー・販社と徹底討論」を9月7日に開催。点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や今後の方向性について論戦を展開しました。イベントにおける登壇者の具体的なやりとりを詳報する連載企画。第10回(最終回)は、運送業における点呼の仕組みのあり方について提言します。

運送業における点呼制度のあり方、高いハードルの緩和がポイントか

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
ここまでIT点呼と遠隔点呼のメリット・デメリットや課題、どうあるべきなのか、どうなっていくだろうかと、さまざまな話をしてきました。今までの話を踏まえて、運送業における点呼の仕組みがどうなっていくべきとお考えになっていらっしゃるのか。皆様にお聞きしていきたいと思います。

というのも、メーカーあるいは販売会社の立場から、遠隔点呼やIT点呼を入れるべきなのかを、そもそも皆様がどう考えているのかをお尋ねしたいと思います。すでに触れていただいた面もあるのですが、改めてそのあたりの話をしていきます。

点呼制度はこの先どうなっていくのでしょうか。いつ頃、どのくらい先まで見通しが立っているのかもうかがいたいと思います。松本様、点呼制度はこの先どうなっていくとお考えですか。

<東海電子取締役安全・健康システム営業部の松本剛洋部長>
少なくとも2025年まで国土交通省が指針を出しております。事業用自動車総合安全プランという形です。その中で遠隔点呼あるいは自動点呼が間違いなくキックオフされるのですが、先ほども申しました通り、自動点呼に関しては国土交通省の方とお話をしておりましても、ハードルは高いのかなとかなり感じております。そこがどう緩和されていくのかが、今後の重要なポイントだと思います。

<赤澤>
なるほど。そういう情報交換を国とされる機会は結構あるんですか。

<松本氏>
そうですね。特にこのような新しい制度が始まったことで、メーカーの立場として確認すべきこともありますし、逆に協力できる部分もありますので、ある程度情報交換はさせていただいております。

<赤澤>
皆様よりいろんな質問をお寄せいただきました。ここで皆様がお使いになられたり挑戦されたりするときには、メーカー側が課題があれば課題として受け止めて、制度や機器類などあらゆる面で、改善に向けて自社での努力だけではなく運用される側にも伝えていっていると、ここで明らかになりました。そういうことも踏まえて、取り組んでいただければいいかと思います。

どうなっていくのかという意味では、吉田様はどうお考えですか。

「対面点呼のデジタル化」との選択肢も

<テレニシ法人事業本部ソリューション営業二部の吉田寛之部長>
先ほどの2025年の指針もありますので、デジタル化が加速していくと思います。実際には点呼が対面からIT・遠隔に変わっていく中で、各利用者の運行に合ったものを突き詰めていただければいいのかなと思います。まだ1拠点のお客様にあたっては、そもそも遠隔点呼はできないですし、そういう面で対面のデジタル化が今後必要になってくるのかなと思います。

<赤澤>
対面のデジタル化っていう選択肢もあるんですね。

<吉田氏>
というのも考えられます。

<赤澤>
実際に皆さんは事業者の方から悩みを受け止めるケースもあると思うので、お考えに影響している面もあると思います。そのあたりも踏まえてサンコーテクノの坂口様は今後、点呼制度の方向性についてどうお考えですか。

<サンコーテクノ機能材事業本部の坂口正一副本部長>
実際にIT点呼から始まりまして、遠隔点呼は絶対に進めるべき動きかなと思います。いかに現場が使いやすいか、導入しやすいかの議論も進める中でしっかりしていかなければいけないと思います。

ただし、政府もデジタル省がニュースに出ているように、世の中がデジタル化を推奨している中では、業界自体がそこに合わせて安全をいかに担保していくかというところにシフトチェンジして、ギアをあげていく必要があると思います。

<赤澤>
デジタル人材を育成していくのか、確保するのか、企業によって方法は違うのかもしれませんが、デジタル人材の確保は運送業にとって不可欠になりそうですね。

<坂口氏>
そうですね。あとは若い世代はある程度デジタルに慣れているので、もともとスキルを持っている人たちも運送業界に就職するような形に世の中が変わってくると思います。もしかしたら意外とスムーズに進む可能性もあると考えています。

<赤澤>
例えば、もし特にITスキルのない10台くらい車両をもった運送会社さんで、「安全を考えたときに、こういった点呼を入れるべきだと経営者として分かったんだよね」と、相談があったとしたら皆様、どう対応されますか。成澤様、いかがでしょう。

<タイガー取締役営業本部長・成澤正照氏>
我々も現状を知らないとご提案もできませんので、経営者の方とお話をさせていただきながら、いわゆるヒアリングして会社を深掘りしていくことは必須になってきます。その中でどういったものをチョイスしてお客様に提案できるか。そのためにも営業サイドが知識や経験を持っていないとダメで、そのあたりが求められる営業力だと思っています。

遠隔点呼の活用にやはり求められる「一定水準のITスキル」

<赤澤>
なるほど。メーカーとしてはどうでしょうか、松本様。

<松本氏>
私も悩ましいところではあります。遠隔点呼の法令が高度化することで安全は担保できる反面、乗務員と運行管理者の業務負担が増えるのも事実です。従来だとパソコンを触らずに終わったものがそうはいかなくなるので、メーカーとしても課題と感じています。

<赤澤>
現時点ではそれなりのITスキルが必要になってきそうですね。

<松本氏>
必要になってきますね。

(イメージ)

<赤澤>
皆様、どうでしょうか。運送会社の方もたくさんご覧になっていると思いますけれども、皆さんの社内になんとなくITが得意だという方がいらっしゃる場合もあるかもしません。これからは、どうやらそういった方々をしっかりと業務の中に組み込んでいかなければならない、ということです。IT点呼あるいはAI(人工知能)点呼といった中から正しいものを選んでしっかり運用していく、あるいはメンテナンスしていくためには、人材が欠かせないことが分かってきました。

実は今の話は、今日の討論会まで思いもよらないキーワードだったんですよ。まさかそういう結論になるとは思っていませんでした。何も考えずにやっていたのかというと、そういうわけでは決してなくて、それなりに自分の中で着地点を想像しながら進めていたんですけれども、やはり運送業の中で必要なスキルを見直していくことが重要だと分かりました。

それと同時にIT点呼やAI点呼といった多くの種類がある点呼制度を、どうチョイスするかというのも、一様にひとつの答えにたどり着けるわけではなく、それぞれの事業者の方の事情や今後の事業戦略に応じて最適な仕組みが変わってくる。そういうことでしょうか、松本様。

<松本氏>
おっしゃる通りです。

<赤澤>
選び方のお手伝いを、事業者側からすると求めたくなる気がします。成澤様、そのあたりはどうでしょう。メーカーの方にお聞きすればいいのでしょうけれども、メーカーはやっぱり作っていらっしゃるものがそれぞれ違うじゃないですか。それぞれの特性があって「どうせサンコーテクノ様に聞けば、自社のことをよく言うんだよね」と考えるのが、聞く方からすると当たり前だと思います。メーカー側がそう答えるのも当たり前ですし。だとすると、それぞれの強みと弱みを正確に理解したうえでお答えいただけるのは、ひょっとしたらいろんなものを取り扱っている販売会社なのかなという気がします。

メーカーと運送事業者の「共創」こそが活用しやすい制度を生み出す

<成澤氏>
はい。3社の皆様の商品をお取り扱いさせていただいています。長所と短所を理解したうえでお客様のニーズや改善を希望するポイントがどこなのかを的確につかんで、どちらのシステムが最も適合するのかというところです。営業判断とともにお客様にも判断いただくことになります。

開発メーカーの皆様は、より使いやすいもの、よりいいものを作っていくのは当然のことだと思うんですけれども、ここで遠隔点呼については2時間にわたって議論してきたとおり、形作っていくのは我々サイドだけでなく、運送事業者も遠隔点呼をより活用しやすい制度や内容にしていくために要望を出していただきたいと思います。

(イメージ)

これから「物流の2024年問題」に向かって運送形態も変わるんじゃないかと冒頭で申し上げましたが、その内容に即しながら遠隔点呼もより厚みを増していくものにしていけたら「遠隔点呼一強」になってくるのではないかと思います。

<赤澤>
ありがとうございます。まさに「共創」ですね。普通なかなかいろんな業界でも、上位3メーカーがそろい踏みで業界のために答えを見い出しいこうというのは、そうそう見られない動きだと思っており、非常に貴重な機会を作っていただいたと思います。皆様、本当にありがとうございます。

今日、終盤に進むにつれて議論が白熱してきました。さらにこのあと制度が変わりより明確になってくると、また新しい課題が出てくると思います。本当に導入しようかと考える事業者も加速度的に増えていくと思います。このイベントは第2弾も開催したほうがいいのではないでしょうか。また機会があればお声かけさせていただくので、ご協力ください。

視聴いただいた皆様、LOGISTICS TODAYは今回のようにガチンコで進めております。こういう企画を実施してほしい、ここを教えてほしいという要望があれば、ぜひ質問をお寄せください。

白熱の中で、点呼DX(デジタルトランスフォーメーション)討論会のイベントを終了させていただきたいと思います。本日は皆様、大変参考になるお話をたくさんしていただき、ありがとうございました。

<一同>
ありがとうございました。

<赤澤>
またお会いしましょう。

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