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シッピオ、国際物流PF拡大へ資金調達16億円

2022年9月28日 (水)

(イメージ)

ロジスティクス貿易業務のデジタルフォワーダーで、国際物流プラットフォームを提供するShippio(シッピオ、東京都港区)は28日、シリーズBラウンドで総額16.5億円の資金調達を実施したと発表した。既存の投資家に加え、今回から日米を拠点とするグローバル投資ファンドDNX Ventures、Spiral Innovation Partners、東京海上日動火災保険、みずほキャピタル、あおぞら企業投資など新たに5社を引受先とする第三者割当増資などを実施。累計調達額は30億円となった。

新型コロナウイルス禍やウクライナ侵攻により、物流供給網や資源高といった影響で国際物流のコントロールは難しさを増して複雑化している。貨物輸出入に関わる変更、調整、交渉の頻度が高まったことで、非効率的なオペレーションから生じる現場の負荷が課題だ。

こうした社会情勢を踏まえ、シッピオは今回調達した資金で、グローバルを含めて60人から100人規模まで多様な人材の採用を進めるほか、国際物流プラットフォームの機能・サービス開発を推進。事業領域の拡大に向けたM&Aなどに投資する予定だ。事業拡大により荷主だけでなく、物流事業者の課題解決につながる機能やサービスの開発に取り組み、汎用性の高いプラットフォーム構築を目指す。

この日は、新たな荷主の負荷軽減ソリューションサービス「Any Cargo」のリリースも発表。貨物全体の輸送状況をクラウド上で一元管理できる利便性が特徴。国際物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を一層推進していくとしている。

▲Any Cargoのサービスイメージ

Shippioが挑む貿易DX、カギを握る事業基盤の強化

社会に欠かせないインフラとして、実務面での効率化が叫ばれている物流ビジネス。陸海空と幅広い領域で展開されるなかで、とりわけDXによる事業運営の改善余地が大きいとされるのが、国際物流だ。

グローバル経済の進展を受けて、国際間における「モノの流れ」は今後、物量だけでなく品質面でもさらなる向上が求められる。人口減少時代に突入しこれ以上の内需拡大が見込めない状況下で、アジア太平洋諸国をはじめとした経済連携を模索する動きは、もはや必然と言えるだろう。

こうした通商環境下で実務面での壁になっているのが、実務的な貿易業務におけるDXだ。とくに商品の輸出入にかかる通関業務は非常に多くの手続きが必要で、効率化は喫緊の課題だ。ところが、その手続きの煩雑さゆえに自動化が進まないというジレンマに陥っているのが実情だ。

こうした課題を抱える通関業務の効率化を実現できないか。DXの力で難解な課題に挑むのが、シッピオだ。デジタルフォワーディング事業を展開する気鋭のスタートアップは、貿易DXという概念を国際貿易の世界に浸透させたのみならず、通関業を含めた貿易ビジネス実務のあり方そのものを変革しようとしている。シッピオの視座は、すでにここまで高まっているのだ。

国際物流を巡っては、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする地政学的リスクを各地で抱えるなど本来あるべき自由な交易にはほど遠い状況にある一方で、越境EC(電子商取引)など海を越えたモノの移動は活発化している。シッピオにとっては、まさに千載一遇のビジネス機会が転がっているのだ。

こうしたチャンスを着実に果実としていくためには事業基盤のさらなる強化が欠かせない。その取り組みが、今回の協和海運のグループ化であり、国際物流プラットフォームのシッピオにおけるさらなる機能強化に向けた各種開発費用を充当するための資金調達なのだ。世界の通商ネットワークで生き残りを図れるか否か。シッピオの果敢な挑戦物語は、もっと広く認知されてもよいはずだ。(編集部・清水直樹)

通関事業に参入へ、シッピオが協和海運を買収