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首都圏のLMT内定率27%と低水準、CBRE調査

2022年10月5日 (水)

調査・データシービーアールイー(CBRE、東京都千代田区)が4日発表したレポート「首都圏大型マルチテナント型物流施設(LMT)の内定率を読み解く」によると、今後竣工する物件の貸室総面積のうち、竣工前にテナントが決定している面積の割合を示す「内定率」は27.0%(2022年第2四半期時点)にとどまった。20年第3四半期に記録した62.3%から35.3ポイント減少し、直近3四半期の平均(40%)も下回る水準だ。

(イメージ)

内定率低下の要因として、新規物件の供給増加により、分母が大きくなった影響が考えられると指摘。今後も大量供給が予定されているため、テナント企業側の選択肢が広がっており、慎重に物件選びが進められている可能性を示唆している。

一方で、物流企業を中心に、テナント拡張への意欲は依然として力強いとも指摘。内定率の低下は「需要の潮目の変化を判断する指標の一つ」と捉え、「内定面積や背景事情などを総合的に検証する必要がある」と分析している。

物流施設は新型コロナウイルス禍で成長。同社が2021年に実施した投資家を対象にした意識調査によると、オフィスを抜きトップのアセットタイプ(資産の用途種別)になった。ことしに入ってオフィス人気が復調したものの、物流施設への関心の高さと旺盛な投資意欲を背景に、デベロッパーが積極的に開発を推進。首都圏では大型マルチテナント型物流施設の新規供給が21年から23年にかけて3年連続で過去最高を更新する見通しという。

テナント需要は、18年から20年当時のような過熱した状況ではないものの、内定面積自体は減退しておらず、テナント企業の多くが今後3年間で倉庫の拠点を増やす意向を示しているとの調査結果もある。

今後の注意点としては、23年第1四半期以降、国道16号、圏央道の両エリアでの竣工が増える動向について言及。都心から離れた地域が物流エリアとして定着すれば、さらに内定率が押し下げられる可能性があるとし、物件のスペックや立地によってテナントの誘致力に差が出てくることも想定されるとの見方を示している。

今回の内定率には、特定の入居予定テナントの要望に応じて建築されるBTS型物流施設は含まれていない。

コロナ禍収束も見据えた倉庫間の競合、物流サービスの持続的向上につながる期待も

全国各地で繰り広げられている、物流倉庫の建設ラッシュ。建築工事が完了して本格的に稼働する2023年から24年にかけて、物流倉庫の供給力は極大値に達すると予想されている。その結果、サービスを提供する側である物流施設の開発事業者に対して、より高度な差別化を促す力学が働く。激化する競争に勝ち抜くための新たな戦略を講じる必要に迫られるからだ。

物流施設の開発事業者が倉庫の大型化と拠点網の拡大を図る狙いは2つある。まず、EC(電子商取引)サービスの進展を主な背景とした取扱量と種類の増加だ。インターネットによる購買スタイルが定着し始めたところへ、新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」が追い討ちをかける形で、消費スタイルの多様化が急速に進展。店舗から宅配へと購買シフトが加速するのに合わせて、倉庫現場で取り扱う商品の量とともに種類も急速に拡大した。

もう一つは、開発事業者が見込むコロナ禍収束後の経済回復だ。コロナ禍による経済活動の停滞は、すでに回復基調に転じているとの見方が大勢ではあるものの、未だ全体的な不安定さは拭えないのが実情だ。経済の本格回復の時期についてはさまざまな試算がなされているが、開発事業者は2023年以降にそのタイミングが到来すると想定。経済活動の回復による取扱量の急増を見据えて供給できる「床」を確保したい思惑がある。

(イメージ)

確かに説得力のある仮説なのは間違いない。とはいえ、首都圏郊外を結ぶ国道16号や圏央道沿線で加速する物流倉庫の建築工事の風景を眺めながら、さすがに供給過多ではないかと懸念を抱く向きも決して少なくないのではないか。それがたとえ過多ではないとしても、ライバルが増えればそれだけ差別化を明確に示す必要が出てくる。停滞期を抜ければ、そこには新たな厳しい競争環境が待っていた。そんなところだろうか。

こうした将来を先取りするかのように、最近稼働した物流倉庫には新潮流が生まれている。IT機器開発事業者とタイアップして先進物流ロボットを活用できるサービスを展開したり、現場業務に関わる悩みごとの相談を受け付ける窓口を設けるなどの取り組みがその例だ。スペースを貸し出すコア事業に新たな価値を付加することにより、「選ばれる倉庫」になることを目指しているのだ。

「内定率」の低下が指摘されている、足元の倉庫市場。こうした競争激化による物流サービスの持続的な向上につながるのであれば、決して悪い傾向ではない。(編集部・清水直樹)

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