ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

物流スタートアップ・ベンチャー特集/第8回

モノのパスポートでSC最適化/LOZI•マーチンCEO

2022年10月18日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第8回は、LOZI(ロジ、名古屋市中区)のMartin Roberts(マーチン・ロバーツ)CEO(最高経営責任者)です。

サプライチェーン(SC)をつなぐ「モノのパスポート」。LOZIが実現を目指す世界観です。

生産から調達、さらに製造から販売まで、ある製品の原料や製造プロセス、さらに製品化された場所といった情報を記録しながら輸送経路や輸送品質などの物流情報を統合することにより、サプライチェーン全体を可視化できます。その実現に向けた取り組みとしてLOZIが2020年に提供を開始した、バーコードをスマートフォンで読み取ることにより製品を追跡できるサービス。それがモノのパスポート「SmartBarcode」(スマートバーコード)です。

モノのパスポートという発想は、2018年11月にLOZIを設立した動機とつながっています。ある広告代理店で新規事業開発のマネージャーとして、若い女性を中心に絶大な人気を誇る韓国コスメチック(コスメ)を扱う越境EC(電子商取引)を手がけていました。ビジネスはブームにも乗って盛況でしたが、ある問題があることに気づいたのです。

それは、韓国から国内に到着して通関を経た後の商品の流れを追跡できないことでした。いわば、国内におけるサプライチェーンの全容がまったく見えない状態になっていたわけです。商品が適切な形で届いているかどうか、輸送プロセスが最適かどうかを判断することができません。

(クリックで拡大)

通関後の商品を追跡できる方法はないか。あらゆる方法を模索した結果、たどり着いたのが、二次元コードをスマートフォンのアプリケーションで判読する方法でした。商品追跡のニーズは、サプライチェーンの最適化を求める荷主企業を中心に高まりつつありました。こうした動きも追い風となり、3度目となる起業を決断したのです。

それからの1年半は、この「追跡」のプロセスを提供できるシステムの開発に全力投球の日々でした。モノのパスポートを完成させるための仕組みの構築に知恵を絞りながら、試行錯誤を繰り返しました。中国サプライヤーの商品を代行販売する仕事で運転資金を捻出して開発費を確保しながら、20年春にようやく完成にこぎ着けたのが、スタンドアローンタイプのスマートフォン用アプリケーションだったのです。

ある大手総合物流企業が、アフリカ向け小口貨物を追跡するためにこのスタンドアローンタイプを導入。その実績が次のステップへ進む原動力となりました。他の機器やシステムに接続せず単独で使用するスタンドアローンタイプから、管理画面でユーザーが自身でアプリケーションを作れるプラットフォームタイプに進化させることにより、より的確な貨物追跡サービスを提供できるようにしました。

貨物追跡以外の機能も充実させました。人的エラーによる誤出荷・誤積載を防ぐ「ペアリング機能」は、貨物とパレット、貨物と車両を誤って組み合わせた際にアラートで知らせるものです。この機能を提供することにより製造管理の最適化、つまりサプライチェーンの可視化に向けた大きなステップとなりました。

バーコードの再利用やあらゆるバーコードについて追跡できる機能も付加することにより、ユーザーの抱えるより幅広い問題解決を実現できているのが、SmartBarcodeの強みになっています。サプライチェーン上にある多角的な問題を解決するために、あえて完成形を持たないシステムとして進化しているのです。

モノのパスポートは、現時点でプラットフォームとして相応の進化を遂げています。とはいえ、未だに物流業界で実現されるべきと考えるのが「データの標準化」です。荷主企業や物流事業者は今もそれぞれ個別のデータ形式で情報をやりとりしており、いわゆるフィジカルインターネットの実現に向けた障壁になっています。行政が音頭を取る形がスムーズかと思いますが、我々もこうした標準化に準拠できるような中間ツールを構築するなどの努力が必要ではないでしょうか。それが、将来の物流をより効率化・最適化する布石になると考えるからです。(編集部・清水直樹)

物流スタートアップ・ベンチャー特集TOPページ