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LOGISTICS TODAY Special Reports「防災・事故防止特集」<下>

物流災害対策のカギ、それは「時間と人手」の確保だ

2022年10月19日 (水)

話題LOGISTICS TODAYが「防災・事故防止特集」の一環として実施した、物流関連ビジネスを展開する企業を対象としたアンケート。ここでは調査結果に基づいて、災害対策における問題認識とその背景に迫すとともに、物流に携わる事業者の防災対策意識のあり方を問う。

不足する災害対策に取り組む「時間と人員」、荷主の協力もカギに

さまざまなリスクへの対応が求められるなかで、災害対策を現場で講じるにあたっての課題も山積しているのが実情だろう。ここでは、災害対策で不足している課題について尋ねた。

回答率が最も多かったのは「災害対策に取り組む時間や人員」で68.8%に達した。「知識や情報」(45.5%)▽「荷主や取引先の協力・理解」(32.5%)▽「発災後の対応策における実効性」(31.2%)――が続いた。

(イメージ)

EC(電子商取引)サービスの普及やコロナ禍を端緒とする宅配需要の高まりは、物流現場における就労環境に急激な変化をもたらしている。取り扱う荷物の量が増えているだけでなく、その荷姿も多様化。その結果、現場での従事者における業務負担が急速に高まっているのだ。繁忙を極める現場で、災害対策は「分かってはいるものの、すぐに対応できる時間や人員を捻出できる余裕はない」のが本音だ。回答結果からは、こうした現場における「悲鳴」が聞こえてきそうだ。

こうした課題認識の理由について、自由記述方式で回答を求めた。「要は人海戦術でモグラたたきの体制」「人手不足や人材不足により、事前準備などが後手後手になっている」などの人員不足を指摘する回答が目立ち、なかには「日常業務優先で災害対策に時間がなく人員配置もできない」「実務優先であり人員を割り当てる余裕がなく、荷主はコストダウンに一生懸命であり遅々として進まない」と優先順位を指摘する意見もあった。

さらに現場オペレーションにかかる課題認識も。「災害対策専門の部署が親会社にあり、自社にはないので時間・人員の不足が発生」「極論扱いで一定数の部下の協力が得られない」「外部よりも内部、方法よりも体制が脆弱。本腰を入れて準備していない」と、現場で災害対策を講じる組織やシステムが整っていない状況を指摘している。

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他には、知識の向上や情報の取得・整理の必要性を訴える意見や、BCPの実効性・現実性の乏しさを危ぶむ声、さらにはリスクに対する投資不足、災害発生からの時間の経過による意識の薄れを指摘する回答も。災害発生直後は、こうした防災意識の機運が高まるものの、時間が経過するにつれて意識が薄れるのが常なのは、この世の理(ことわり)と言うものだろう。

とはいえ、災害列島で事業を展開するにあたって「備えあれば憂いなし」との意識を決してなくしてはならない。筆者が心を打たれた回答に、その心構えの大切さが込められている。「東日本大震災の教訓が生かされていない」。思い出してみよう、11年前のあの日のことを。それが防災意識を再認識する第一歩になるはずだ。

加速する物流防災DX、大切なのは使い手の「使命感」だ

最後に、災害対策を対象とした各種サービスの関心度について聞いた。近年は、防災にかかる先進機器・システムを活用した多様なサービスの開発が加速し、まさに「物流防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」の様相を呈している。

こうした動きは回答結果でも浮き彫りになっており、「災害情報を素早く配信する情報サービス」(53.2%)▽「非常時に電力を確保できる商品・サービス」(49.4%)▽「災害時にシステム障害に対応したりバックアップしたりできるサービス」(37.7%)▽「既存設備に手を加えて災害に強くするサービス」(35.1%)――との回答が目立った。

回答結果から浮き彫りになったのは、防災対応に必要な取り組みとして、迅速な情報の取得や電力やシステムのバックアップといった事業継続に必要なリソースを求めていることだ。こうした着想から、持続的な物流サービスの実現に向けた防災対策のあり方が浮かんでくる。物流防災DXの取り組みは、システムの先進性もさることながら、それを扱う現場さらには経営者の意識、つまり「使命感」にかかっていることを忘れてはならないだろう。

>>【上】防災意識で示せ、社会インフラ担う物流の「底力」

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