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自動車税制の議論、トラック業界の出方は【解説】

2022年11月17日 (木)
LOGISTICS TODAYがニュース記事の深層に迫りながら解説・提言する「Editor’s Eye」(エディターズ・アイ)。今回は、「『走行距離課税』に断固反対、自工会正副会長が表明」(11月17日掲載)を取り上げました。気になるニュースや話題などについて、編集部独自の「視点」をお届けします。

行政・団体12月が近づき、ことしも税制改正の議論が佳境を迎える。自動車関連税制を巡る議論が例年以上に熱を帯びており、トラック運送業界関係者も行方を注視している。10月に浮上した「走行距離課税」を巡っては、日本自動車工業会(自工会)が11月17日の記者会見で「断固反対」と意見表明しており、次は全日本トラック協会など陸運業界が示す態度も重みを持ちそうだ。

税制改正は、毎年12月に与党、続いて政府が各税制改正大綱をまとめ、それをもとに財務・総務両省が翌年度の税法改正案を通常国会に提出する。それに先立ち政府税制調査会は中長期的視点に立った税の在り方を議論し、与党税制調査会は翌年度の税制改正を実質的に決めるとともに、今後の見直し方針を大綱に盛り込む。政府税調の10月の総会で意見として出た「走行距離に応じて課される税制」が、今すぐに具体化することはなさそうだが、これから税調でどう検討され、大綱にどう記されるかが将来を占う重要なポイントとなる。

走行距離課税に全ト協「コメントなし」

全日本トラック協会はLOGISTICS TODAYの取材に対し、「今は今年度末で期限切れとなる措置の延長を求めているところ。走行距離課税に関して現段階ではコメントはない」(事務局)と話し、様子見の姿勢でいる。仮に導入されれば、長距離運送会社を中心に大きな負担となることが予想される。全ト協は商用車ユーザーの国内最大規模の団体であり、協会内での議論や外部への発信は、自工会同様、改正論議への影響度は小さくない。いつ意見を発信するのだろうか。

この問題に関しては、鈴木俊一財務相も10月20日の参議院予算委員会で「走行距離課税は一つの考え方」と発言。日本経済団体連合会の十倉雅和会長も11月7日の記者会見で「EVの普及を想定して、関連する税の形をいろいろな角度から検討することは大事」と一定の理解を示している。

「断固反対」の自工会、ユーザーを代弁?

「断固反対」を表明した自工会は、17日の会見で豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が「(自動車)ユーザーも国民ですよと(政府に)申し上げている」と話し、永塚誠一副会長も「ユーザーの納得がいくような国民的な議論を行うべきだ」と述べるなど、自動車ユーザーへの配慮を色濃くにじませた。永塚氏は走行距離課税で負担が増える納税者として「物流事業者」を例示してもいる。むろん車両販売を維持したいという思いはあろうが、それでも物流事業者を含むユーザーの声を先取りし、代弁した発言と受け取れる面もある。

(イメージ)

次はトラック業界がどう動くか、発信するか。国民の目はそこにも向けられよう。少なくとも12月の税制改正大綱とその後の国会審議を経た後、来夏の税制改正要望までには態度を決めることになる。全ト協など各トラック団体には税制に対する会員企業の建設的な意見と、運送事業にどのように影響するかの論拠の整理が望まれる。さらに、HV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)などの普及で軽油取引税やガソリン税などの燃料課税が減収となり、道路の維持・補修財源が不足する現実を踏まえ、ユーザー団体の見地からの、より抜本的な自動車税制の在り方についての提案も待たれる。

エコカー減税の見直し、12月の焦点に

一方、目前の23年度税制改正については、全ト協もことし8月に政府などに改正要望を提出している。4月末で期限を迎える自動車重量税の「エコカー減税」や、3月末が期限の自動車税環境性能割の特例措置、自動車税のグリーン化特例の各延長などを求めている。エコカー減税について政府は、脱炭素に貢献するEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を優遇し、ガソリン車は適用要件を厳しくするといった見直しを検討しているとされる。業界の声を聴いた与党税調が12月上旬にどう決着させるか、注目される。(編集部・東直人)