ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

倉庫自動化、「虫食いDX」から全体最適へ【解説】

2022年11月24日 (木)
LOGISTICS TODAYがニュース記事の深層に迫りながら解説・提言する「Editor’s Eye」(エディターズ・アイ)。今回は、「世界初のワンストップ梱包で倉庫自動化、レナトス」(11月24日掲載)を取り上げました。気になるニュースや話題などについて、編集部独自の「視点」をお届けします。

ロジスティクス物流業界における現場業務の効率化・最適化を促すDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、国内だけでなく世界各国で加速している。むしろ、米国はロボットによる自動化をはじめとする先進機器・システムの開発・導入で世界をリードする存在だ。

さらには、中国も物流ロボットの開発力を高めてグローバルでの本格的な市場参入に向けた動きを着々と進める。国内勢もこうした動きに呼応して、エレクトロニクス大手からITスタートアップまで幅広い企業が独自開発を進める。その結果、国内の物流施設はこうした世界中の先端技術が集結した見本市の様相を呈していると言えるだろう。

ところがこうした物流DXの進展と歩調を合わせて、その性格ゆえに避けられない陥穽(かんせい)があることも明らかになってきている。それが、RENATUS ROBOTICS(レナトス・ロボティクス)も指摘している「虫食いDX」だ。

(イメージ)

物流施設への自動化システム導入には、何らかの問題認識が前提になる。こうした先進システムの導入は事業者における投資案件であり、それには相応の根拠が必要になるからだ。ところが、その問題認識はどうしても局所的な内容になりがちだ。なぜなら、現場における具体的な問題は、ピッキングや検品といった特定の過程で発生することがほとんどだからだ。

国内での物流DXの取り組みも、こうした段階からスタートした。ピッキングの人手不足や過度な負担を解決するための専用ロボット導入はその好例だ。しかし、得てしてこうした問題は他のあらゆるプロセスでも発生するものだ。なぜなら、同じ物流施設内における同様の環境下で、全く異なる要因の問題が発生することはまずあり得ないからだ。

その結果、同じフロアにメーカーも仕様も異なる先進機器・システムが相互に連携できない状態で同居することとなり、その本来の機能を発揮できないままにお蔵入りしている現場さえあるのだ。

物流DXを巡る動きは、以前にも増して活発化してきている。もちろん背景にはEC(電子商取引)をはじめとする消費スタイルの多様化など市場環境の変化もあるが、物流DXの発想が「虫食い」から「全体最適」へと進化し始めたことも見逃せない。

それは、もはや市場環境への対応と言うよりも、開発者や導入事業者の抱える問題解決のあり方に依拠する概念であろう。物流施設における問題解決は、もはや事業運営全体さらにはサプライチェーン全体を視野に入れた業務最適化の一里塚であることを忘れてはいけないのだろう。(編集部・清水直樹)

世界初のワンストップ梱包で倉庫自動化、レナトス