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求荷求車マッチング、長距離・帰り荷の利用多く

2023年1月17日 (火)

調査・データ物流分野のシステム開発やコンサルタントを手掛けるascend(アセンド、東京都新宿区)は17日、トラック運送の求荷求車マッチングサービスに関し、運送事業者と荷主企業との取引データについての調査・分析結果を発表した。長距離運送の帰り便の荷物確保を目的とした利用が多いことや、成約単価の地域差が確認された。「非公開案件」と呼ぶ一部の運送事業者に限定したマッチング方式では、通常のマッチングより成約単価が7%程度高くなる傾向も分かった。

(イメージ)

この調査はアセンドが国土交通省の委託を受けて行ったもので、調査対象とした求荷求車マッチングサービスは、日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)が管理するWebKIT(ウェブキット)とした。求荷求車サービスの先駆者として広範囲の事業者の取引情報を有していることから調査対象に選び、2014年4月から21年3月までの7年分の取引データを調べた。

発表によると、まず、長距離運送では、都市圏(関東・近畿・中部など)が出発地点となる荷物の数が、都市圏が到着地点となる荷物の数を上回った(成約ベース)。地域間の集荷・配送案件数を確認すると、関東・近畿・中部から出た荷物が他地域へ配送されていく傾向が強く出た。このデータに事業者へのヒアリング情報を加味して分析した結果、ウェブキットが長距離運行で帰り荷を探す際に利用される場合が多いことが推察されたという。

次に、運送料金の成約単価は、地域によって10~20%程度の差異が確認された。荷物の到着地域(配送地域)よりも発送地域(集荷地域)の運賃相場の影響をより強く受けていた。

マッチング方式の違いで取引価格に差も

ウェブキットのマッチングには、荷物の情報がすべての運送事業者にさらされる「公開案件」と、過去に取引実績がある事業者や荷物の特性に適している事業者に限定してさらされる「非公開案件」(特定公開案件とも呼ぶ)の2つのマッチング方式があるが、非公開案件の方が公開案件より成約単価が高くなる傾向があった。平均して7%程度の開きがあった。運送事業者と荷主企業との過去の取引実績や信頼関係が、非公開案件の対象に選ばれる要素になっている。

▲成約案件平均単価推移(数値は7年間通年の平均値を1としたときの指標、出所:国土交通省)

これらの分析を踏まえ、アセンドは、次のような指摘を行っている。まず、求荷求車マッチングサービスシステムは、特に帰り荷を確保し、帰り便の実車率を高める手段としての有効性とニーズが認められた。その場合、往々にして「荷物がないよりは安値でも受ける方がよい」という心理状態での価格競争により、運送価格の下落を助長させる懸念がある、と指摘している。

プラットフォーム側の工夫も必要

次に、運送事業者を限定した非公開案件の方が公開案件より取引価格が高くなる傾向については、荷主企業との信頼関係を大事にしようという運送事業者の企業努力を誘発するものとして肯定的にとらえている。

国交省も、今回のデータ分析から得られたことを重要な示唆と受け止めており、求荷求車システムの運用にあたっては「運送会社間の完全に自由な交渉を前提とするのではなく、相性の良い荷主企業と運送事業者をマッチングする工夫や、取引ルールの⼀層の明確化など、プラットフォーム側の工夫が求められる可能性がある」と指摘している。

9割近くが求荷求車サービス利用意向、信頼構築カギ

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LOGISTICS TODAY編集部
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