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モーダル「帰り荷なし問題」改善、明治と昭和産業

2023年1月25日 (水)

環境・CSR明治は25日、昭和産業と協業し、鉄道によるモーダルシフトの復路において、物流業務を効率化に向けた商品輸送の取り組みを始めると発表した。復路に積み荷がないという非生産的な状況を改善するため、積み降ろし作業時間の短縮に効果的な装置「オートフロアコンテナ」を活用。物流の効率化を推進するとともに、輸送に係るCO2排出量の削減にも寄与する。

物流面からの環境負荷低減や業務効率化を通じて、ドライバーの働き方改革や脱炭素化への対応につなげるのが狙い。発表によると、今回の取り組みで昭和産業の復路に関わるCO2排出量は年間で従来比70%減の20トン削減につながる。

▲鉄道輸送経路とモーダルシフトによる効果(出所:昭和産業)

具体的には、往路は明治の倉敷工場(岡山県)から粉末プロテイン製品「ザバス」などを出荷後、岡山貨物ターミナル駅(同)から越谷貨物ターミナル駅(埼玉県)を経て同社倉庫(同)まで運ぶ。復路では、昭和産業船橋工場(千葉県)から同社製品を東京貨物ターミナル駅(東京都)、神戸貨物ターミナル駅(兵庫県)と鉄道で輸送し、昭和産業の倉庫に届ける。

改善のポイントとなるオートフロアコンテナは、荷台の床を電動でスライドさせるための装置。荷物を荷室の入り口に積んで、床ごと奥にスライドさせるため荷室の奥まで荷物を移動できる。このため、荷室内での積み降ろし作業が不要になり、荷室スペースを有効活用できるほか作業者の負担軽減にもつながる利点がある。

環境対応と効率化の両立、メーカー物流の「あるべき姿」を示す好事例に

メーカーによる製品輸送で問題となるのが、納入先からの「帰り便」だ。工場から卸や小売業者の倉庫などに納入する場合に、復路で運ぶ荷物がないのは当然なのは分かる。とはいえ、タクシーのように帰社の途中で荷物を集めて運ぶことができれば――。荷台を空っぽにして戻ってくるトラックを目にして、誰もがそう考えるのではないだろうか。

こうした効率の悪い事態がなぜ続いてきたのか。もちろん、メーカー側にも配送先にもそれぞれさまざまな事情があるのだが、その最たるものの一つに、1事業者で製品物流を解決させようとする自前主義があるのは間違いないだろう。

メーカー各社が、独自の技術やノウハウを注入して世に送り出す製品を最適な形で消費者に届けたい、と考えるのは当然のことだ。それならば、その製品にふさわしい方法で輸送する必要がある。

いくら信用できる輸送業者であっても、やはり最終的に責任の所在を含めて安心できるのは自社グループの輸送システムだ。品質へのこだわりの強さゆえに、こうした自前主義が優先されてきたことは、決して責められる話ではないだろう。

しかし、持続可能な社会の実現を目指す取り組みに注力する機運が急速に広がると、そうも言っていられなくなってきた。トラックをはじめ輸送業務における温室効果ガスの排出削減は至上命題となり、メーカーも対応を迫られるようになった。むしろ、こうした環境対応を推進すること自体が企業価値の創出につながる、という発想が求められるようになったからだ。

明治と昭和産業の協業による、物流の環境負荷低減と業務効率化の取り組みは、こうした自前主義からの脱却をさらに推進する好事例になりそうだ。復路を有効に活用することで、モーダルシフトの効果をさらに高めることにもつながる。

何よりも、メーカー物流における環境対応と効率化を同時に推進できる効果的な取り組みとしての期待が広がる。客観的なデータ抽出も含めて、メーカー物流の在り方を考える好機となる継続的な成果の創出を望みたい。(編集部・清水直樹)

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