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全農物流と福島の系列会社が合併、東北事業を強化

2023年2月2日 (木)

M&AJA全農は1日、4月1日付でグループ子会社の全農物流(東京都千代田区)とJAパールライン福島(PLF、福島市)が合併すると発表した。合併後は全農物流として存続し、国産農畜産物の販売拡大につながる物流機能を拡充。両社の統合を通じて東北地区における事業基盤を強化し、変化する物流業界の環境対応を急ぐ。

発表によると、全農物流は全国、PLFは福島県を中心に、いずれも農畜産物や肥飼料の輸送、保管に関する物流事業を行ってきた。全農が100%出資する全農物流は1971年に設立。売上高は2021年度実績で727億7000万円、従業員数は917人(22年12月末現在)。PLFも全農が100%出資する貨物運送事業者で、設立は1972年。売上高は21年度実績で55億600万円、従業員数は92人(同)。

「農産品の輸送能力不足」問題、JA物流会社合併で解決は

農産品物流を巡って記憶に新しいのは、NX総合研究所が昨年11月に公表した「物流の2024年問題」の影響に関する試算だ。

(イメージ)

これは、24年4月に適用されるドライバーの「改正改善基準告示」により、農水産物の輸送能力が2019年度実績比で32.5%不足するという内容だった。全業界の輸送能力不足14.2%を上回り、業界別で最も高い数値だったこともあり、消費者にとって身近な野菜や果物が「運べなくなる」かもしれない可能性を示す定量的なデータとして、業界メディアをはじめ多くのメディアで取り上げられた。

同じNX総研の試算に関する調査では、農水産業界におけるトラック運転手の1年の拘束時間で3300時間以上が53.4%に及び、他の業界よりも高い水準である実態も報告された。改正改善基準告示では、トラック運転手の年間拘束時間は原則3516時間から3300時間へと短縮されるが、農産品の輸送業務は長距離だったり荷待ち・荷役の長時間化が常態化したりしている課題を露呈したといえる。

今回、全国に強固な物流網を持つ全農物流がJAパールライン福島を吸収合併する背景には、こうした「物流危機」への対応や改善も当然視野に入っているだろう。全農物流は農家が生産した米穀や青果、酪農品をはじめ、生産に必要な飼料や肥料の輸送を担っており、まさに農業者と二人三脚で日本の農業と食卓を支えている存在。東北地方にとどまらず、全国規模で物流事業基盤の強化を進めていくのか、JAグループの動向に注目したい。(編集部・安本渉)

30年度のトラック輸送能力34.1%不足、NX総研推計

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