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ESRギブソン代表、横浜幸浦PJの強みは「スケール」

2023年2月21日 (火)

▲ESR横浜幸浦DC2の外観。スケールの大きな構造が強みだ

拠点・施設ESR(東京都港区)は21日、マルチテナント型物流施設「ESR横浜幸浦ディストリビューションセンター2」(ESR横浜幸浦DC2、横浜市金沢区)の構内をメディアに公開した。物流施設の整備が加速する東京湾岸部でも屈指の規模を誇るESR横浜幸浦DCプロジェクト(PJ)の第2弾。スチュアート・ギブソン代表は「首都圏最大規模のロジスティクスパークが誕生した。地の利を生かしたプロジェクトが着々と進んでいる」と開発の意義を語った。

▲ESR横浜幸浦DC2の完成の意義について話すスチュアート・ギブソン代表

ギブソン代表は、ESR横浜幸浦DC2の最大の強みについて、「スケール」(規模)であると強調。「土地を取得してからの4年間、『この広い敷地をどう活用して価値を生み出すか』を熟考してきた」と振り返った。今回のESR横浜幸浦DC2の稼働を新たな節目として、「働く人の意識を高められる物流拠点として、さらにスケールを生かした取り組みを推進していく」と話した。

さらにギブソン代表は、ESR横浜幸浦DCプロジェクトでR&D(研究開発)関連施設の誘致を検討していることも明らかにした。横浜市内の企業からライフサイエンス関連拠点としての活用について打診があるという。

ギブソン代表は、今後も大都市圏を中心とした物流施設開発プロジェクトを推進していく考えだ。「我々は20年間の国内におけるプロジェクト開発実績から、立地選定能力に強みがある」として、物流ビジネスを的確に提示できる好立地を模索していく考えを示した。

ESR横浜幸浦DC2は、東京湾に面した33万平方メートルの広大な敷地で2021年6月に着工。4期にわたる物流施設開発プロジェクトのうち、1期目の横浜幸浦DC1に続く2期目にあたる。ESRとしては国内で29件目、神奈川県内では6件目の開発案件だ。国道357号や16号といった主要国道をはじめ、首都高速道路や横浜横須賀道路などを経由して首都圏全域へのアクセスが良好。横浜港や東京港、東京国際(羽田)空港といった広域輸送の拠点としても適した立地だ。

▲ESR横浜幸浦DC2の倉庫部分。物流運営の効率性と汎用性を重視した設計が特徴だ

機能面では、倉庫の床荷重を1階で1平方メートル当たり2トン、2階以上も1.5トンを確保。全フロアで2.5トンのフォークリフトが走行可能な仕様とすることで、重量物を含めた多様な種類の荷物を取り扱えるのが強みだ。荷物用エレベーターは各階に10基、垂直搬送機は12基をそれぞれ設置できる構造としたほか、特別高圧電力を供給できる仕様としたことから各種ロボットやマテリアルハンドリング機器、冷凍・冷蔵設備などの導入もしやすくする。最小賃貸区画は920坪(3036平方メートル)で、半フロア6500坪(2万1450平方メートル)からワンフロア1万3000坪(4万2900平方メートル)まで使用できる。

横浜市南部を中心としたベッドタウンの豊富な労働人口も背景に、雇用確保の面でも優位性が高い。勤務者の就労環境を確保するため、ラウンジやスカイテラスを整備。子育て中の勤務者を支援する保育室も設置する。敷地の南側に設置されている未使用のガントリークレーンを産業遺産として保存。夜間はライトアップやプロジェクションマッピングで演出することも検討するなど、より良い都市景観を演出する取り組みにも注力する。


▲(左から)ラウンジ、スカイテラス

▲産業遺産として保存するガントリークレーン。この地域の記憶を継承するESR横浜幸浦DC2のシンボルと位置付ける

「ESR横浜幸浦ディストリビューションセンター2」概要

所在地:横浜市金沢区幸浦1-8-3
敷地面積:9万282平方メートル(2万7310坪)
延床面積:19万5374平方メートル(5万9100坪)
構造:プレキャスト・プレストレストコンクリート工法(PCaPC)造、免震構造、地上4階建て
完成:2023年1月31日
稼働:2023年2月1日
アクセス:首都高速道路湾岸線「幸浦インターチェンジ(IC)」2.4キロ、「杉田IC」3キロ/横浜横須賀道路「並木IC」2.5キロ/金沢シーサイドライン「並木北駅」1キロ
ウェブサイト:https://jp.esr.com/our-portfolio/yokohama-sachiura-distribution-centre-2/

横浜幸浦から物流業界の問題解決策を発信するESR、決め手は「汎用設計」

1977年に完成した、東京湾に面した埋立地である横浜市金沢区の幸浦地区。みなとみらい地区から移ってきた大手メーカーの工場や横浜市の水処理関連施設などが立ち並ぶ、典型的な湾岸産業エリアだ。ここに開業するESR横浜幸浦DC2は、「人と環境にやさしい物流施設」をコンセプトに物流施設としての独自路線を打ち出すことで、首都圏を中心にビジネスを展開する物流事業者の多様なニーズに対応していく戦略拠点となる。

ESR横浜幸浦DC2の特徴の一つは、汎用性を重視した設計だ。45フィートのコンテナトレーラーも走行可能な、上り・下りの専用ランプウェイを結ぶ「中央車路」「センターバース式」を採用。各階へ一方通行でアクセスできる構造としたほか、トラックバースも各階に50台設置した。全フロアで1メートルの高床式倉庫として、バースの奥行きは14.5メートルを確保。将来の柔軟な運用を念頭に、ドックレベラーを各階で最大20基まで設けられる仕様とした。

こうした汎用的な設計にこだわった狙いは、多様化が急速に進む物流ニーズへの的確な対応を進める場を提供することにある。東京湾岸部における物流施設と言えば、かつては重量物か食品関連など輸入品が主な取扱品の定番だった。

しかし、近年は様相も変化。新型コロナウイルス禍も契機としたEC(電子商取引)の普及による宅配需要の増大など、輸配送サービスの多様化が進んでいる。立地面でも首都圏では湾岸部から首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線などの内陸部へ、さらには都心への回帰と、流動的な状況が顕著となっている。

輸送サービスにおける従来の固定観念が揺らぐなかで、その場を提供する物流施設の仕様にも革新が求められるのは当然のことだ。むしろ、こうした物流業界のトレンドに適したサービス提供力を先取りして提案する、そんな機動的な取り組みが必要になってきている。

香港に本社を置き、アジア太平洋各国で物流不動産やデータセンター開発を手掛けるESRは22年、不動産投資ファンドのARAアセットマネジメント(シンガポール)を買収してアジア太平洋地域最大級のアセットマネジメント会社になった。グローバル規模の実績を礎に、最新の物流トレンドを的確につかみ施設開発に落とし込む。ESRは、こうした事業戦略をここ幸浦地区で具現化することで、物流業界における構造的な問題の解決策を提示しようとしている。(編集部・清水直樹)

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