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物流効率軸にサプライチェーン見直せ、経産省検討会

2023年4月6日 (木)

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行政・団体経済産業省は5日、原料費の高騰により「40年ぶりの物価高」と謳われる国内経済の現状に対応すべく昨年7月から開かれている「物価高における流通業のあり方検討会」の内容を報告書にまとめた。目指すべき方向性として、サプライチェーンを効率化するために垂直統合や水平連携を促進する必要があると指摘。その鍵となる考え方として「デザイン・フォー・ロジスティクス」(DFL)を提起した。サプライチェーン全体を物流効率を軸に見直すDFLの考え方を促すことで、同省は「複雑化した国内の流通構造」を連結させたい考えだ。

DFLは元来、製品や梱包、包装の形態を、保管や輸送など物流の効率化に重心を置いて設計することを指したもので、小売業に当てはめると「発注から店頭での品出し」までを一気通貫で捉えた上で、需要予測や自動発注などデジタル技術を活用した発注業務、取引先とも連携した計画的な物流、スムーズな庫内作業や在庫管理など、あらゆる業務オペレーションを再構築していくことが考えられる。

メーカーや物流事業者をはじめ多くのプレーヤーが複雑な流通構造のなかに入り乱れている現状で、サプライチェーンの全体最適化を自然発生的に期待するのは難しく、現在はハード・ソフト面で標準化が進まずデータも分断され、結果的にサプライチェーン全体に多くの無駄が発生しているといわれる。そこで、今回の報告書では、製品や梱包の設計だけでなく「現場レベルの目線」を中心に、サプライチェーン全体を物流効率に基づいて一体的に見直すDFLの考え方を強調。今後の方向性を定める一案として示した。

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報告書ではまた、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が設けられる「物流の2024年問題」が差し迫っている状況もあり、業界を超えたサプライチェーン上の協働が「かつてないほど喫緊の課題になっている」と指摘。物流の危機的な状況を踏まえ、経産省や国土交通省が発表した2040年を目標とする「フィジカルインターネット・ロードマップ」に沿って、商流、物流のコード体系の標準化▽物流資材の標準化と運用検討▽取り引き透明化に向けた商慣習の見直し▽データ共有の際のルール化――などを国と業界が連携して着実に実行していくことを求めた。

異業種間の連携状況をみると、取り引き企業間での情報共有体制の課題が浮き彫りとなっている。卸と小売の間では業界が協調し、統一されたプラットフォーム「流通ビジネスメッセージ標準」(流通BMS)による情報共有や取り引きの電子化が進んでいるが、メーカー・卸間ではプレーヤーが多いこともあって環境整備が進まず、商品情報の同期化も不十分。卸と小売間でも商品マスタや事業者コード、物流資材が統一されておらず、作業フローも統一されていないなど、課題は多い。

報告書は、これらの解決に向けたハード・ソフト面の標準化や障害となり得る商慣習の是正、円滑な物流データの連携を可能とするプラットフォームの構築など、関係者間の合意形成のハードルを下げるためには「政府や業界団体が果たす役割は引き続き重要」との認識を改めて提示。その上で、納品伝票エコシステムのような共通基盤や標準化に関する議論が精力的に行われている製・配・販連携協議会の取り組みや検討を政府が「後押しすべき」と強調した。

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LOGISTICS TODAY編集部
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