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物流拠点の最大集積エリアから「あるべき姿」発信

内陸工業団地中央に汎用性高い新施設、三菱地所

2023年6月7日 (水)

話題山梨県の山中湖を水源に、神奈川県の中央部を縦断して相模湾に注ぐ相模川。その西岸を走る首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のさらに西側、厚木市から愛川町にまたがる「内陸工業団地」の中央部で、ある物流施設の建築が計画されている。三菱地所のプロジェクト「厚木市上依知物流施設計画」(仮称)。2024年11月に「ロジクロス」シリーズのボックス型物流施設として完成する予定だ。

▲「厚木市上依知物流施設計画」(仮称)イメージ図

三菱地所は、中京圏や関西圏と首都圏を結ぶ物流の「玄関口」として倉庫などの拠点が集まる厚木エリアで既に2件の物流施設を運営しており、今回で3番目のプロジェクトとなる。同じく県央の座間市や相模原市、海老名市でも開発中の案件を含めて6か所の拠点網を構築するなど、物流関連ビジネスにおける重点地域と位置付けていることが分かる。

この重点エリアで新たな施設の開発に踏み切る同社の狙いは何か。物流事業者や荷主企業、さらに従業員や地域経済にどんなメリットを提供しようとしているのか。今回の計画の全体像に迫る中で、同社が描く物流施設の「あるべき姿」も浮き彫りになってきた。

自然とつながる新コンセプトで商機うかがう

▲ 物流施設事業部 熱海貴司氏

1966年に造成された内陸工業団地は分譲用地が200万平方メートルを超え、全国でも有数の規模を誇る。三菱地所はその中央部の一角にある2万9600平方メートルの敷地で、4層構造のボックス型物流施設を計画する。様々な規模の物流施設が林立する厚木エリア。三菱地所が3か所目の拠点として計画する新物件には同社が2021年のブランドリニューアルを機に新たに設定した「物流施設に、オアシスを。」のコンセプトを取り入れる予定だ。

「総合デベロッパーとして培ってきた街づくりのノウハウを活かして、自然とのつながりを向上させる手法『バイオフィリックデザイン』をベースとした、自然を感じる豊かな空間を創出することにより、働く人の癒やしやモチベーション向上につなげます」。物流施設事業部 熱海貴司氏は、厚木エリアでは初めてとなる新コンセプトに基づく構成で差別化を図る狙いを強調する。

▲バイオフィリックデザイン イメージ図

バイオフィリックデザインは、人間が本能的に持つ「自然とつながりたい」との欲求に従い、光や水といった自然の要素を取り入れる発想が特徴で、就業者の幸福度や生産性、創造性を高める効果が期待できるという。この理念に共感した同社は「オアシス」をコンセプトに掲げ、よりよい就業環境を創出すると取り組みを訴求することで、入居する事業者の物流機能向上や従業員確保を支援する考えだ。

「かつての物流施設は業務の機能確保を重視するがあまり、ともすれば無機質になりがちな施設もありました。しかし、多様化する就業者への対応や地域貢献などを踏まえて、新たな発想による業務空間の提供を重視する取り組みを進めています」(熱海氏)。数多くの物流施設の開発事業者が集う厚木エリアで、こうした新たなイメージを定着させることができるか、関心が高まりそうだ。

ゆったりしたボックス型で産業需要取り込む思惑も

▲物流施設事業部 簗瀬真史氏

三菱地所は今回のプロジェクトで、最大4テナントが入居できるボックス型施設を整備する。延床面積は5万2800平方メートルと、ボックス型としては比較的余裕のある物件と位置付けられる。

「入出荷における動線を分離できる両面バース構造を採用します。広めのフロアにより適している、自動車や機械といったメーカー関連の資材保管ニーズを主に想定しています」(物流施設事業部 簗瀬真史氏)。厚木エリア周辺には、メーカー関連の工場や事業所が多く立地する。

産業界では過剰在庫を持たないいわゆる「ジャストインタイム」の発想が主流となっていたが、新型コロナウイルス禍も契機に在庫の重要性を見直す動きも見られるようになっている。三菱地所は、こうした動きを意識しながら、着工を間近に控えて新物件の詳細な設計を進めていく考えだ。

ドライから危険物まで視野に「幅広い対応力」の強み

今回の新物件では、こうした産業用途に対応する取り組みとして、消防法で定められた「危険物」を大量に保管する危険物倉庫への対応も視野に入れる。危険品の対象は医薬品からEV(電気自動車)向けリチウムイオン電池、さらには化粧品まで広範に及ぶ。コロナ禍で製剤などの危険品に属する医薬関連品の輸送・保管頻度が高まったことも、危険物倉庫の需要を高めるきっかけとなった。

「マルチテナント型の大規模施設と異なり、ボックス型として整備する今回の新物件は、ドライ倉庫フロアと危険物倉庫をより近接して設置できることで、入居する事業者に新たな利点を提供できると考えています」(簗瀬氏)

幅広い構成を実現することにより、さらに多様な物流ニーズに対応できる汎用性・拡張性の高いボックス型施設を目指す。これが三菱地所の追求する新発想の物流施設であり、これを全国最大の物流拠点集積地である厚木エリアから発信することで、物流業界への訴求力を最大化する目論見もある。

9月に控えた着工までに、どこまで入居を希望する事業者に柔軟な対応力を訴求するか。首都圏を中心とした物流施設開発プロジェクトで実績のある三菱地所の腕の見せ所だ。

厚木市上依知物流施設計画(仮称)の概要
所在地:神奈川県厚木市上依知3029 3,4,7(地番)
敷地面積:2万9600平方メートル(9000坪)
延床面積:5万2800平方メートル予定(1万6000坪)
構造:未定、地上4階建
交通:首都圏中央連絡自動車道「相模原愛川インターチェンジ」 3.0km、「圏央厚木インターチェンジ」6.1km、JR相模線「下溝駅」3.9キロ
竣工:2024年11月予定
物件ページ:https://logicross.jp/facilities/685/
問合せ先: 03-3287-6380 logicross@mec.co.jp

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