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EV開発フォロフライ、整備業の全国組織と提携

2023年6月9日 (金)

▲3月に行われた車両整備研修の様子(出所:フォロフライ)

荷主ラストワンマイルに適した国内初の1トンクラスEV(電気自動車)トラックを自社開発し、国内普及を進めているEVメーカーのフォロフライ(京都市左京区)は8日、三井住友海上火災保険(東京都千代田区)とグループ会社のエーシー企画(同)がサポートする整備業の全国組織であるアドバンスクラブ(AC)と車両整備、アフターメンテナンスにおいて業務提携を開始することを発表した。

既にことし3月13日に、三井住友海上火災保険の千葉研修所において、フォロフライの車両整備認定工場資格取得に向けた研修を実施し、ACの研究機関であるASKnet(アスクネット)会員を中心に整備士が30人集まり、オンラインで20人弱が座学・車両整備の実車研修に参加した。

アドバンスクラブは整備業界トップレベルの会員数2186(2023年3月末)を誇る全国組織で、全国52支部で構成されており、各支部事務局を三井住友海上の各支店に置いている。エーシー企画ではセミナー運営、整備技術相談、物販斡旋などアフターマーケットに向けた各種活動を支援する。また、事務局を担う研究機関アスクネットでは、実燃費向上のための技術開発、環境認証の取得など脱炭素社会の実現に向けた活動により社会課題の解決に向けて積極的に取り組んできた。今後は両社連携のもと、EV整備網をさらに充実させ、顧客が安心して購入できる体制を構築し、脱炭素化に努めていくという。

損保の力借り整備網を全国に―フォロフライ研修会

商用EV(電気自動車)の整備業務で協業を発表した新興EVメーカーのフォロフライと損害保険大手の三井住友海上火災保険。協業の裏には、大手損保が持つ全国的な自動車整備工場ネットワークを借りて自社の整備網を急ぎ構築したいフォロフライのニーズと、縮小に向かう国内自動車市場の中で数少ない成長領域であるEVビジネスを強化したい三井住友の戦略がある。LOGISTICS TODAYは協業発表を前に、両社が千葉県内で3月13日に開いた自動車整備士向けの第1回研修会を取材し、それぞれの責任者に協業の狙いや展望を聞いた。(聞き手・東直人)

▲座学研修の様子

整備体制づくりを担当するフォロフライ福谷亮太執行役員CSO(最高戦略責任者)

──整備研修会の手ごたえは。

「集合研修会は初めてだったが、三井住友海上が保険代理店契約を結んでいる全国各地の整備工場から30人の整備士を集めてくれた。オンラインでも15人の受講があり、まずまずの手ごたえを感じている。当社のEVを知らない方も多く、実車を細かく見てもらえてよかった。『制動装置は従来の商用車と大きく違わない』などの感想があり、安心していただけたようだ」

──現在はバン型と平ボディーの小型商用EV2車種を販売しているが、整備体制をどう構築するのか。

「国土交通省の認証工場と指定工場の計30の事業者が当社製EVのオーナーに対してアフターサービスを行う。三井住友海上のネットワークを借りて、まずは1都道府県に最低1工場、つまり47拠点以上にする計画だ。中長期的には100拠点以上を目指す」

──整備士を集めての集合研修をどう考えているか。

「これまでは販売台数が限られていたので、整備工場単位で整備研修を受けてもらっていた。しかし、これから車両の量産に入る計画で、これまで通りでは済まない。集合研修が必要で、首都圏以外でも開催したい。整備士の方たちと話す貴重な機会にもなる」

──部品の供給体制はどうなっているのか。

「中国や日本で製造された認定部品を茨城県つくば市の倉庫で保管している。必要な部品はウェブで注文を受け、即日ないし翌日に発送手配をかけている。部品倉庫の増設も検討する」

──大手の国産車メーカーが商用EVに本腰を入れ始めた。どう見ているか。

「国産の商用EVが増えるのは当社にとってもありがたい。運送業界などにEV導入の機運が高まってくるだろう。そうなれば、既存のディーゼル車やガソリン車に近い価格帯という当社の強みが発揮できると考えている」

保険代理店である自動車整備工場へのサポートを行っているエーシー企画・桜井孝尋モーター支援部部長(三井住友海上グループ)

──商用EVの整備研修会を開いた狙いは。

「当社は全国2000か所以上の整備工場と関係があり、これまでも経営者・整備士の方向けに自社の研修施設を提供してきた。これからは実践面でEVへの対応力が求められてくる。商用領域では国産大手より先に新興メーカーのEVが登場してきたので、実車を使った整備研修を早く行いたいと考えていた」

──スタートアップであるフォロフライ製のEV研修を行った意味とは。

「新興企業のネットワークづくりのお手伝いをさせてもらえればと考え、当社側からフォロフライに開催を呼び掛けた。従来から電気・EV対応研修は実施していたが、メーカー研修のお手伝いは初めてだ。新興メーカーとEVに触れたいと思っている整備工場の橋渡しになればと思う。自動車の脱炭素化やEV化に関連して、損保にできるサービスはまだまだ開発できると考えている」

EV整備、30人が熱心に学ぶ

千葉県印西市の三井住友海上火災保険施設で開かれたフォロフライ製商用EVに対する整備研修会では、沖縄県を含む各地から集まった30人の整備士たちが車両を囲み、メーカーの技術担当者の説明を真剣に聴きながら車両の構造や整備の手順、注意点などを確認した。

研修会場に持ち込まれたのは、バンタイプの「EVVAN F1」。主に都市内での宅配などに使われる車種で、製造は中国のメーカーに委託している。座学の後の実車研修では、技術担当者に促され、整備士たちが一人ずつ運転席回りや下回りをのぞき込み、モーターやインバーター、コネクター類などを確認していた。

参加者の1人、東京都品川区で指定工場を営むCSトナンの吉田幸弘社長は「整備工場はあらゆる車種への対応力をつけないと事業が成り立たない。フォロフライのEVも取引先から整備を受託しており、ある程度は把握はしていたが、細かい注意事項が聞けてよかった」と話していた。海外メーカーのEVと共通する部分もあり、参考になったという。

沖縄県うるま市で電動モビリティーの販売や整備を手がけるemade(イメイド)の古波蔵篤専務は「これまで日産のリーフや、ゴルフカートを扱っており、EVには慣れているが、改めて整備の手順を確認した。全国から仲間が集まっており、EVにはそれだけの可能性があるのだと感じた」と語った。古波蔵氏は研修の合間に、販売車種のシート増設などユーザー目線に立った要望をフォロフライ側に打診していた。

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