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アイミッションズパーク桑名

商社スピリットあふれるカインズ専用BTS施設

2023年8月2日 (水)

話題伊藤忠商事が物流開発事業をスタートさせたのは2004年。2018年に物流特化型の公募ファンドを組成、運営し、物流不動産の証券化事業に取り組んできた。その中で商流と物流のネットワークを積極的に活用して得た顧客ニーズをもとに、入居企業の要望に沿って建てられる方式(BTS型)の物流施設開発を中心に事業を展開している。

6月に竣工した物流施設「アイミッションズパーク桑名」も、ホームセンターチェーンを展開するカインズ(埼玉県本庄市)のBTS型物流拠点として開発された。日本各地で236店舗(7月時点)を展開するカインズにとって「西のマザーセンター」と位置付けられ、中部・西日本エリアへの配送機能と海外荷物の保管機能を併せ持つ拠点となる。

▲施設外観

伊藤忠グループとカインズは小売店舗の開発などで連携してきたが、今回の物流施設開発はこれまでで最大規模の共同事業。開発期間がコロナ禍の直撃を受ける逆風を乗り越えての施設完成は、改めて商社としての同社グループの総合力が発揮されたものといえる。

24年の本格稼働へ向けて最終準備に入るアイミッションズパーク桑名が、どのようなコンセプトで開発されたのか。同社の住生活カンパニーの建設・不動産部門において、建設第二部建設第三課長を務める赤木信太郎氏と、施設の担当者である同課の宮尾蒼太氏と松原ひとみ氏に話を聞いた。

カインズの理想を反映した働きやすい環境

アイミッションズパーク桑名が位置する三重県桑名市多度地区南部は、市が産業誘導ゾーンとして定めたエリアにある。東名阪自動車道「桑名インターチェンジ(IC)」から7.5キロ、「桑名東IC」から7キロの場所にあり、全国への広域配送拠点及び名古屋中心地への配送拠点として利便性の高い立地。今後も新名神高速道路、東海環状自動車道の整備で、さらなる利便性の向上が見込まれている。

▲建設第二部建設第三課施設担当の宮尾氏

延床面積9万3627.13平方メートルの4階建て施設で、1階に3面トラックバース、2階にもスロープからアプローチできる片面バースを設置。宮尾氏は「スタート段階からカインズ様と綿密な打ち合わせを繰り返して形にしてきた、最終完成形です」と、その設計意図を説明する。

「施設開発にあたってカインズ様から頂いた第一の要望が、施設で働く人々への配慮でした」(宮尾氏)。本格稼働が始まると、施設内で200から300名以上の人々が働くことになり、まずワーカーが働きやすい環境を整えることを大切にするカインズの思想が、設備にも反映されたという。1階、3階、4階それぞれに、休憩室を設置。「1階は大地、3階は緑、4階は空というようにフロアごとにテーマの違う、デザイン性の高いカフェのような空間で寛いで頂けます」(松原氏)。1階2階にシーリングファン、2階から4階にはスポットクーラー、4階には天井カセットタイプの空調設備を設置し、適切な室内温度で作業できる環境も整えられ、2階にはドライバーのための休憩室まで用意されている。


▲フロアごとにテーマの違う休憩室

外観でも地域との調和と、カインズの拠点としてのシンボリックなデザインにこだわったといい、カインズ、伊藤忠それぞれのコーポレートカラーと桑名市の市章をイメージした緑色と青色を壁面に配色し、夜間は木の枝をイメージしたデザインで建物をライトアップして、地域のランドマークとしての存在感を放つ。

また、環境面でのきめ細かい要望にも対応した設計となり、伊藤忠のグループ会社であるVPP Japanと連携し、建物屋上に自家消費型の太陽光発電設備を導入。発電した電力を使用し、施設で使用する電気の年間平均の55パーセントを再生可能エネルギーで調達する予定としている。
また、海に流れ出る可能性のあるプラスチックごみを回収、リサイクルした素材を施設の一部に使用するなど、カインズとして物流施設で初めて取り組む環境対策を実装し、環境負荷低減へ貢献する姿勢を明確にする。「断熱性の高いサンドイッチパネルを採用し、全館LED照明に加えて、TCとDC機能を併せ持つ施設ということで、エリアに応じて人感センサーも設置し、きめ細かい節電対策も施しています」(宮尾氏)

▲夜間の施設外観

カインズ「西のマザーセンター」の強力なスペック

もちろん、カインズの「西のマザーセンター」としての物流機能面でも、専用施設としてテナント要望を反映した、個性的な仕様となっている。

1階の通過型センターはバースを3面に配置し、開口部有効高5.5mのウイング車専用バースを一部設置するなど搬出入の機動性を最大限に突き詰め、2階にはコンテナ車の接車を想定し、ゆとりのある片面バースが採用された。「敷地外構部では複数の大型トラック・コンテナ車用の待機場を設置するなど、実際の倉庫オペレーションを意識して使い勝手の良い設計とした」(宮尾氏)。全バースの接車可能台数は138台におよび、4つの車両入口など、1日に300台以上のトラックが出入りすることとなる施設において、機動性と安全性を両立する。カインズはこれまで、海外からの荷物を群馬県太田市の物流センターに集約し、そこから全国に配送していた。今後は桑名が、海外貨物を中部・西日本エリアへ配送する新たな拠点となり、配送距離と時間の短縮や、ドライバーの稼働距離の短縮など、CO2削減や2024年問題に対して取り組むカインズの取り組みを、設備面でサポートしていく。

▲1階バース

また、当初より自動化機器、マテハン使用を想定した施設作りとなっていたため、「マテハン機器設置を前提とした防火区画の形成、柱間隔の調整などにも工夫した」(宮尾氏)と語り、マテハン対応用のハト小屋や、マシンハッチの設置、垂直搬送機の増設位置なども、庫内オペレーションから想定される特別配置で作業効率の向上を助ける。

▲建設第二部建設第三課施設担当の松原ひとみ氏

また、「この土地自体の標高が高く、BCP対応も万全です。危険物倉庫も設置しており、多彩な品目を扱うカインズのサプライチェーンを支えます」(松原氏)。

カインズからの要望は、施設内設備だけにとどまらず、施設の前面道路のスペックや車両の導入経路など、地域の人々の安全性や快適性にも及んだといい「周辺道路などの新設工事では、市が全面的に協力してくれたことが大きかった」(赤木氏)と、関係各所の協力に改めて感謝する。伊藤忠商事、カインズ、市、敷地開発と建物施工では矢作建設工業(愛知県名古屋市)が、何度も協議を繰り返すことで、事業拡大とともに環境への貢献、労働問題の解決なども目指すテナント意向を、すべてこの施設に盛り込むことを実現したのである。

BTS開発で強みを発揮する商社スピリット

同社が、BTS型施設を中心に実績を積み重ねてきたのも、今回の事例のようにテナントの要望と向き合い、徹頭徹尾テナント目線での開発を行うことこそ、企業の強みを発揮できるという信念があるからだといい、赤木氏は「商社スピリットで作り上げた施設」という表現で、その強みを表現する。

同社のコーポレートメッセージ「ひとりの商人、無数の使命」に込められているのは、担当者個々の力や自由闊達な精神に加え、ミッションを最後までやり抜くプロ意識、危機を乗り越える現場主義の底力だといい、メッセージに込められた企業理念をもっとも反映できるのが、BTS型施設の開発事業であるという強い思いがあふれる。もちろん、BTS型施設での実績は、マルチテナント型開発でも生かされ、物流施設事業はさまざまなサプライチェーンの変化に対応しながら拡大している。しかし、テナントにとっての「御用聞き」に徹し、さまざまな課題解決をサポートしながら、商社としての誇りと責任を、物流施設という形に落とし込む、その理想型が、BTS型施設なのだという信念は変わらない。また、その信念こそが、アイミッションズパークをほかの施設とは違う「個性的」な物件にしている。

▲建設第二部建設第三課長の赤木信太郎氏(左)

拡大し続ける総合商社のネットワーク

アイミッションズパーク桑名は、「カインズ桑名流通センター」として、まずは24年2月に通過型のTCとして、4月に保管型のDCとしての本格稼働をスタートさせる予定であり、輸送の効率化と店舗への商品供給のスピードをさらに加速させながら、環境問題や労働問題への課題にも対応して行くこととなる。
伊藤忠グループは、これを契機に、カインズとのさらなる協業の実現を目指し、物流拠点の開発にとどまらず、店舗新設や商材・資材の調達支援、物流機能の提供など、様々な形での価値提供に取り組んでいく。

また新たなネットワークが広がることで、同社グループの「商社スピリット」が発揮されるフィールドも無限に広がり続けていく。

アイミッションズパーク桑名の概要
所在地:三重県桑名市多度町力尾字
敷地面積:6万7886.86平方メートル(2万530坪)
延床面積:9万363平方メートル(2万8322坪)
交通:東名阪自動車道「桑名インターチェンジ」7.5キロ、「桑名東インターチェンジ」7キロ
竣工:2023年6月
問合せ先:03-3497-7001 リーシング担当
物件詳細