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JILSが全国大会開催、ロジ大賞各社が取組発表

2023年10月25日 (水)

▲一橋大学CFO教育研究センター長・伊藤邦雄氏

ロジスティクス日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が主催する「ロジスティクス全国大会2023」が24、25の両日、都内で開催された。参加した物流・荷主企業が2日間で78企業に上ったイベントの2日目は、通算40回目となる「2023年度ロジスティクス大賞」の受賞記念講演として、受賞した各企業から施策内容の紹介に加え、フレームワークスの秋葉淳一会長、一橋大学CFO(最高財務責任者)教育センター長の伊藤邦雄氏による、「ロボット」「人材」をテーマとした特別講演が開かれた。

最初に登壇したのは業務改革奨励賞を受賞したエレコム。1万5000アイテム、ばら出荷率87%と多品種小ロットの流通形態を取る物流センター作業の機械化・省人化を進め、ピッキング・補充作業において従業員が「歩かない」物流を実現させた。最新の物流拠点には補充、ピッキング・搬入のフローで従業員の歩行が必要だった箇所にAGV(無人搬送車)や自動倉庫を採り入れたことで、補充からピッキング・搬入、仕分け、梱包、出荷までを完全自動化し、従来の保管型センターと比較して62%の省人化を達成。その過程では、システムエンジニアリング会社と協力し、自社センター業務の徹底した現状分析と改善策の策定を行っており、システムベンダーとの二人三脚の取り組みが現在の効率化につながっていると話した。

続いては、技術革新奨励賞に選出された南日本運輸倉庫(東京都中野区)、DENBA JAPAN(デンバ・ジャパン、千代田区)、DENBA DISS(デンバ・ダイス)から、鮮度保持テクノロジーを駆使し、食材の長期間保持を可能とした次世代コールドチェーンが紹介された。デンバプラスという専用機器を設置することで鮮度空間を形成し、食材の細胞を壊さず凍結させることで栄養流出を防ぎ鮮度を保持する技術で、使用中の冷蔵倉庫に後付けできるほか、トラックの荷台やコンテナ内での使用も可能。アンテナ機能により空間全体の冷凍品に効果が及ぶ仕組みとなっている。海外海上輸送や離島への長距離海上輸送へ活用されているだけでなく、温度や湿度、経路のトレーサビリティーの面での成果も報告された。

技術革新特別賞に選ばれたのは、Mujin(ムジン、江東区)の知能ロボットとAGV(無人搬送車)連携による多品種ケースハンドリングシステム。物流業界で今後拡大する多品種小ロット化に対応するため、さまざまな荷姿やケースに対応する知能ロボットと、非固定設備であるAGVを使った、高い柔軟性を誇る自動化システムで、品種の切り替えが容易で、今後の事業拡大を想定した冗長性も備えている。技術面では、さまざまなセンサーを搭載した知能ロボットが荷姿などを計算し、最良の積み付け方法や動作を決定することで効率化。ムジンのソリューションはハードではなく、ロボットの「脳」の部分であるため、他のメーカーが開発したロボットにも応用できるのが特徴だ。

社会性特別賞には、加藤産業(兵庫県西宮市)とヤマサ醤油、日本パレットレンタル(JPR)の3社が取り組む、入荷検品レスと伝票レスを同時実現することによる製配双方の物流業務効率化の取り組みが選出。3社間の流通での課題解決を漸次的に進め、卸業者(加藤産業)の検品作業時間を60%削減、伝票レスによる各種事務作業軽減、メーカー(ヤマサ醤油)の納品車両台数の20%削減を達成した。検品レスに必要な事前出荷データ(ASNデータ)の作成が必要となることや、紙伝票から電子伝票の移行期は二重運用となるなどの課題があり、3社は今後も完全伝票レスへの移行を進めていくとともに、検品レスと伝票レスの同時実現を業界標準として実現できるよう、取り組みの意義や必要性を訴求していくとした。

▲フレームワークス・秋葉淳一会長

特別講演では、フレームワークス(東京都港区)の秋葉淳一会長が「ロボットフレンドリーな環境構築に向けたDXと共創〜borderless〜」というテーマで講演。秋葉会長はロボットフレンドリーを達成する上で重要なこととして「伝える努力と知る努力をもっとするべき」と主張したほか、「想像」することの大切さと、想像を生み出すのは「経験」であるとし、現場で起きたさまざまな出来事から得られる経験則を次に生かすことの重要性を説いた。また、ロボットフレンドリーな環境構築に向け、規格や標準化を検討する団体「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会」(RRI)の存在についても触れ、物流企業やシステムインテグレーター、ロボットベンダーなど多様な業態が所属する団体への参加を呼びかけた。

一橋大学CFO教育センター長の伊藤邦雄氏は、個の主体性や自律性をベースとした、これからの人的資本経営のあり方を説いた。伊藤氏は日本企業が「人材で勝てない国」になっていると指摘し、あらためて人、人材の定義を見直し、非連続な環境変化で人材の価値が変化する「人的資本」と捉え、「人材で勝つ」会社に変革する必要性を訴えた。また、現在は人的資本経営を本格展開するチャンスでもあり、逆に遅れを取れば競争力低下につながる、二極化が進む段階であるとした。今後、企業が計画すべき事項として、人的資本経営にかかわるKPIの策定や、社員による自律的なキャリア形成を支援する仕組みづくり、副業や兼業など多様なリスキリングの機会を提供、個々のリスキリングへの主体的意欲の向上、経営計画策定の人事部門の介入などを挙げた。

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LOGISTICS TODAY編集部
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