ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

古野電気「FLOWVIS」、物流危機克服に焦点

ETCベースの車両入退管理に注目、滞留改善の本命か

2023年12月15日 (金)

話題デジタル機器やITシステム活用は、物流効率化のスタート地点であり、2024年問題への対応をテーマに多様なバックボーンを持つベンダーがシステム開発競争を繰り広げている。利用者としては、その中からどれがもっとも最適な効率化システムなのか、「正しく選択する力」が問われることになる。

古野電気は、同社のETCの検知システムなどの技術力をバックボーンとして車両入退管理サービスFLOWVIS(フロービス)を開発、物流効率化システム市場での普及を目指す。

なるほどと納得。ETCを車両入退管理サービスに活用するメリット

「私たちは、高速道路の料金収受用装置を50年以上にわたって設計、製造しており、ETC車載器本体やETCを利用した無線での認証技術を培い、独自の車両入退管理サービスに結実しました。多くの車に搭載されているETC車載器を活用すれば、24年問題にも対応できるのではないかと考えています」と、システム機器事業部営業部長の北川憲司氏は語る。

▲システム機器事業部営業部長の北川憲司氏

国土交通省の発表では、ETC利用率は94%以上、利用台数は1日あたり837万台とされている。すでに多くの車に搭載されていることもあり、ETC車載器ごとの固有IDをトラックの動態管理に活用するのは、なるほど合理的なアイデアと納得させられる。ETCの検知・識別システムを活用した物流施設の効率化システムは少ないが、高速道路の運用ですでに利便性と信頼性を確立したシステムでもあり、利用者にとっても導入イメージがわきやすいのではないだろうか。

高速・有料道路の料金収受用システムでは、DSRC(境域通信)と呼ばれる双方向無線通信技術が活用されており、私たちになじみのあるETCゲートの開閉も、ETC車載器の固有IDを、DSRCが検知・識別することで制御している。同社は国内で唯一、このDSRCを活用したソリューションを多岐にわたる市場で展開しているシステム開発企業であり、07年から、マンション駐車場への車両入退を管理、効率化するDSRCソリューションとしての活用が広まった。マンション駐車場に登録車が近づくだけでゲートの開閉と連動するシステムを構築し、セキュリティ強化の面でも有効なマンションETCシステムとして実績を積み重ねることから領域を拡大し、工事現場車両の入退管理や事故防止、大型バスターミナル「バスタ新宿」でのバス入退管理などへと活用の場を広げ、コンテナターミナルへの導入では、実際にトラックの港湾滞在時間の短縮を実現したことが、工場や物流施設でのさらなる普及を目指す契機となったという。

▲DSRCソリューションは、物流に限らずさまざまな場で活用されている

ETC活用・FLOWVISで実現する、ドライバーの働き方改善と現場見える化

24年問題の根幹とも言えるドライバーの働き方改革。その対策として「荷役・荷待ち時間の2時間ルール」が提唱され、具体的な取り組みが求められている。荷待ちを解決するソリューションとして、バース予約受付システムは度々取り上げられるが、「残念ながら、まだ車両入退管理サービスについては認識されていないのが実情かと思います。本当に荷待ち時間を削減するためには、バース受付システムだけではなく、その前工程である施設への入場段階から効率化し、荷役作業現場につなげることが大切です」(北川氏)。バース予約受付システムはバース部分での最適化を促すが、ドライバー自身による端末操作を要するもの、その前後段階での作業や時間調整までは機能が及ばないものが多数だ。FLOWVISはトラックの施設への入場から退場まで一元管理し、物流工程の流れ自体をスムーズにすることで、バース予約受付システムだけでは効率化できない工程で、トラック運転手の無駄な作業と拘束時間を削減する。

▲FLOWVISの運用イメージ

「今でも、施設入場時に入場記録を手書きで記載しないといけない施設があります。当然、運転手は車両を一旦降りて守衛室前で記載する必要があり、守衛室前に渋滞が発生するケースさえありますが、それではバース部分を効率化した意味がありません」(北川氏)。ETCを活用したFLOWVISによる管理であれば、スピーディーで高い検知性能により、トラック運転手は車両を降りることなくノンストップで入場登録が可能となり余計な作業工程を削減することができる。

FLOWVISはカメラによる車番認証にも対応し、車番とETCどちらの認証機能も兼ね備えたハイブリッド管理システムとして、ETC未搭載の車両も含めてすべての車両を管理できることもセールスポイントの1つである。入退場管理機能をパッケージ化して、幅広い利用者に使いやすく提供されるシステムとなっているが、やはり物流現場においての導入では、ETC・DSRCを活用することでの機能性こそが、他のソリューションとは一線を画すポイントだと感じる。

▲カメラでの車番認証、ETC認証どちらにも対応しており、すべての車両を管理することができる(クリックで拡大)

「ETCシステムを基盤としているので、車両側に特別な改造を加える必要もありません。また、天候によって検知性能が低下することもなく、カメラによる車番検知のように、ナンバープレートの汚れや折れ、太陽光の反射などで読み取りが停滞する心配もありません。使用するETC車載器、ETC2.0車載器はメーカーを問わず、あらゆる機種に対応可能、また、ETC車載器本体の固有IDを検知するため、ETCカードの挿入も必要ありません」と営業1課主任、原田恭兵氏は語る。入場を確実に検知することで、その後のバースでの作業準備などと連携し、より効率化することも可能となるなど、物流の「流れ」全体を最適化しようと考える時、ETCによる「流れ」を止めないシステムの優位性が際立つ。

▲営業1課主任の原田恭兵氏

「各種ゲートシステムと連携して、入場受付から入場ゲート開閉まで無人化・自動化することが可能となり、守衛スタッフや、警備スタッフなど人材コストの削減・見直しにおいても有効です。もちろん、未登録の車両は入場できないようにするなどセキュリティの強化にも貢献します。入退場のスムーズ化とセキュリティ強化、どちらの面でも省人・省力化やコスト削減を前提とした運用が実現できます」(原田氏)。入退場履歴を可視化することもセキュリティ強化につながり、社会的問題でもある人手不足など、直面する課題においても解決策となり得る。

「企業の社会的責任」を支える、車両入退管理サービス・FLOWVIS

事業企画部企画マーケティング課主査、西村正也氏は、「さらに、最近多いのは、ホワイト物流やCSR(企業の社会的責任)という観点からのお問い合わせです。ドライバーの負担削減はもちろんですが、ドライバーの働き方、労務状況を見える化して、働き方改革につなげたいという、企業の社会的責任やコンプライアンスを意識した相談も増えていると感じています」と言う。

(クリックで拡大)

荷待ち、荷役の2時間ルールが正しく守られているか、トラックドライバーの荷役時間削減に向けての取り組みが行われ、確実な効果をあげているかなど、施設の効率化の取り組み成果にもエビデンスが求められるが、FLOWVISならばすべての車両入退場と滞在データが自動管理されるため、取り組みの具体的な効果を見える化し、それらのデータ管理の面でも効率化できる。

また、「施設の入場前車両による渋滞解消も、周辺住民への配慮などCSRにおける重要な取り組みです。FLOWVISはまさに、ゲート前での車両停滞を防止するシステムであり、施設周辺住民に企業としての取り組みを示し、地域社会との連携を深めることにも役立てていただけると思います」(西村氏)。交通安全への姿勢やアイドリングによる環境悪化の防止など、企業としての役割は今後も重要性を増していくだけに、FLOWVISによる車両入退管理で準備を整えておくことも検討すべきだろう。

ちょっと待って。その効率化、本当に機能してますか?

物流改革に向けた政策パッケージにともなって示された「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」では、物流業務の効率化や合理化を進めるために、実施することが推奨される事項として「予約受付システムの導入」が言及されている。そのため、ともすればDXとして予約受付システムだけ導入しておけば、取り組みの使命は果たしたと勘違いしたりはしないかと、懸念される。

▲事業企画部企画マーケティング課主査の西村正也氏

古野電気も、「既存の効率化システムが期待通りのパフォーマンスを発揮しているか否かは、物流作業の流れ全体を見直す重要な指標となります。もし思うような効果が出ていないのなら、全体最適化に至っていない可能性があり、前後工程の再検討が必要です」(西村氏)と問題提起する。スムーズな流れを作るという点で、FLOWVISはAPI連携による他のシステムとの連携機能も強化し、ゲート制御、受付・バース予約、誘導システム、倉庫管理システム、車両位置管理システムなど、さらなる円滑な施設運用へと機能を拡張していくことにも備える。工程ごとの細切れの効率化ではなく、上流から下流まで停滞することのない、スムーズな現場構築の中核となり得るソリューションだとも言える。

高速道路を利用した経験があれば、ETCレーンの利用がどれだけ効率的であるか、またETCのシステムがどれだけ信頼できるシステムであるかを体感しており、それが、現在の高いETC利用率につながっていることがわかる。工場・物流施設においても、FLOWVISの機能が広く認知されることからETCによる効率化を体感する経験が積み重ねられ、物流施設の最適化においてはFLOWVIS導入がごく自然な選択となっていくのではないだろうか。

FLOWVISは、物流改革を加速する機能性、合理性、拡張性を備えたソリューションであり、バース予約受付システム同様に、国策としての物流効率化において導入が推奨されるべきシステムとしてのポテンシャルがあると言っても過言ではないだろう。サプライチェーンの流れ全体での効率化こそが重要であるとの視点は、編集部の提言と合致するところでもあり、同社のETC活用ソリューションの普及による物流改革には、今後も大いに期待したい。

古野電気「FLOWVIS」