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車両動態情報プラットフォームtraevoがつなぐ、分断された物流現場の最適化

庸車とも連携、配送情報を統合して物流DX実現を

2023年12月15日 (金)

話題物流危機は、個社、あるいは各業種単位の取り組みでは解決できない。発着荷主、運送事業者、サービスベンダーなど業種を超えたつながりによって、初めて実効性のある改革となる。

運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の理念も、まさにこの業界一丸の思想。運輸業界だけでなく、荷主やITベンダー、車載器メーカーなどの協力企業が連携し、デジタルテクノロジーを利用することで、運輸業界を安全、安心、エコロジーな社会基盤に変革し、社会に貢献することを目指す。

しかし、物流業界においては、多重下請け構造や、メーカーごとの独自規格のデジタルツール乱立などにより様々な情報が分断されている。2024問題を筆頭に、各所で求められている物流の効率化のためには、まず業界一丸で改革を目指す基盤の整理から始めることが必要だ。

物流現場の見える化を妨げる、規格乱立、多重構造の分断

traevo(トラエボ)は、そんな分断された物流現場全体を見える化して、TDBCの理念を具現化するために開発が進められたソリューションである。車両動態情報プラットフォームtraevoの普及を目指す事業会社として、traevo代表取締役社長の鈴木久夫氏は、「発着荷主にとっては、今荷物がどこにあるのか、それを把握するだけでも、多重請負でデジタル情報が分断された運送現場では大きな負荷となっています。到着予定が遅れている荷物がいつ頃着くのか、そもそもどの車両が運んでいるのかを、荷受けサイドだけではなく、発荷主や元請運送会社でさえわかっていない。優れた車両動態管理システムもありますが、大半は他社製品との連携が取れないがゆえに、運送会社個社単位では管理できるが、サプライチェーン全体としてみると一元管理ができない煩雑さが荷主と運送現場の悩みです」と語る。

▲traevo代表取締役社長の鈴木久夫氏

多重請負構造と車載器メーカーの独自仕様から生じた情報分断の壁は、24年問題で働き方の効率化が求められるトラック運転手にとっても、アナログ連携の弊害をもたらす。運行状況確認への電話応対や、予定時間変更の調整連絡など、運転に割くべき時間が無駄な作業に奪われるなど、ドライバーの負担も大きい。

「traevoプラットフォームは、分断されている運行情報・ドライバーの作業情報を一元的に見える化し、サプライチェーン可視化の物差しとして活用してもらうことを目指しています」(鈴木氏)

デジタコデータ活用から業界、発着荷主一丸の共同利用へ、traevoの開発思想

traevoが車両動態情報を可視化する基盤としたのが、すでにトラックに搭載されている通信型デジタコからのデータ収集である。「車載器メーカーごとの違いを超えた車両動態の管理プラットフォームを構築するにあたって、まず協力デジタコメーカー各社との合意形成から取り組みました。1社でも多くのメーカーから、まずはデジタコの位置情報を、さらにはドライバーの作業情報を提供いただく連携を作り上げ、車両動態管理プラットフォームとしての網羅度と精度をあげてきました。現在では、ほとんどのネットワーク型デジタコメーカーとデータ提供で連携可能な状態です。」(鈴木氏)

▲traevoのサービス概要(クリックで拡大)

物流業界全体で活用できる情報基盤となるプラットフォーム作りに向けて、まずはデジタコデータのインタフェース標準化を入り口とし、協力デジタコやGPSメーカーから、さらに動態管理サービスベンダー、ドラレコメーカー各社との連携へと拡大することで、車両データをリアルタイムに収集、蓄積し、業種の垣根を超えて活用できるデータハブシステムを構築していった。一元管理のための新たなシステムを用意してお仕着せるのではなく、現在のリソースを関係各社の理解・協力のもとに有効活用するのがtraevoの発想だと言える。そのために設定されたデータ使用料金も1台につき毎月500円という低価格。まずはみんなで使える環境作りを目指し、サービスベンダーによるシステム提供とは明らかに違う開発の出発点が、ソリューションの実用性や信頼性の裏付けとなっている。

車両動態管理プラットフォームが変える、荷主・運送会社の日常業務

traevoは車両動態管理システムではない。デジタコやGPSから収集できる位置情報やタイムスタンプ、ドライバーの作業ステータス(出庫から荷役状況、待機、休憩など)などの車両情報を、車載器メーカーの制約なく、荷主・元請・委託運送会社・着荷主と共有できる「車両動態管理プラットフォーム」として、オープンな共通動態データ活用からの効率化を促すソリューションである。

▲traevoでは、荷主・元請・委託運送会社・着荷主と車両情報を共有することができる

荷主にとっては、これまでのアナログな連絡作業ではなく、荷物の運送状況確認をプラットフォーム上で可視化できるとともに、荷待ち・荷役の2時間ルールなど、運転手の作業状況を把握するという荷主の責任を果たすことにも大きな役割を果たす。さらにデジタコ搭載トラックごとのデータを確認できるので、多重構造を要因とする情報分断もない。これまで障害だったメーカーごとの規格や多重請負構造による分断を解消し、データの標準化活用を一気に加速することも可能となり、政府の政策パッケージや緊急パッケージで提起された課題への、具体的な取り組みともなる。

また運送会社にとっては追加設備を設置する必要、負担がないことがデータ協力に加わる大きなメリットだ。無駄な作業工程を必要とせずに、運転手の作業状況を荷主とも共有できることは、これからの運賃適正化交渉にも役立つのではないだろうか。

行政も加えたさらに大きな連携で、物流・環境課題を解決する基盤に

traevoのデータベースは、さらに一歩先の最適化への基盤ともなる。これから取り組みの本格化が課せられるCO2削減への取り組みにおいては、走行距離データと積載荷の伝票データを付け合わせることで荷主ごとのCO2排出量を測定でき、カーボンニュートラルへの第一歩を踏み出すことができる。また、複数荷主が発(荷積み)着(荷下ろし)地点を登録し、traevoの地点間運行実績(頻度)データから、より効率的な共同配送相手をユーザー間で自由に探せる「共同配送プラットフォーム」形成への拡張も期待できる。

また、今後需要の増加が見込まれるコールドチェーンの配送温度管理での運用も開始されている。温度センサーからのデータもメーカーに関係なく車両動態データとともに一元管理し、荷主から元請、委託運送会社、着荷主までレイヤーフリーで温度管理を共有できるので、冷凍冷蔵商品輸送のさらなるサービス向上にもつながる。

▲発着荷主や運送事業者が抱えている、このような多くの課題の解決に寄与するのがtraevoだ

これら、traevoの機能を最大化するには、さらなる協力パートナー、連携の輪を広げることが今後の重要なテーマとなる。活用できるデータベースの充実が、さらなる共創の輪を広げ、次の最適化へとつながるはずだ。ただ、それら協力企業の拡大に向けた道のりにも、いまだにハードルはある。traevoの機能を活用するには、通信型デジタコもしくはGPS通信サービスが必須だが、いまだにアナログ車載器や非ネットワーク型デジタコの利用も多い。「EU、米国などでは国が規制的措置などスマートタコメーター導入を主導しており、日本でも通信型デジタコ搭載義務化へと進んで然るべきタイミングです。これらも今後、貨物車両・ドライバー状況把握のためのデータ基盤構築を見据えて、行政からの後押しが具体化されると考えています」(鈴木氏)

TDBCでは11月、業界有識者や経済産業省からのゲストを招き、「2024年問題法制化直前セミナー」を開催した。経済産業省からは、政策パッケージ・緊急パッケージに基づく規制的措置、財政的措置について解説されたという。鈴木氏は、「緊急パッケージで提言された即効性のある設備投資・物流DXの推進には、『物流効率化に向けた先進的な実証事業』への予算投下など、行政による支援も想定されており、来年1月の通常国会を経て、より具体的に推奨されるシステムの概要が明示されるのではと予想しています。traevoも行政が関わる実証事業への参加で得たノウハウを生かして、物流改革に貢献できるチャンスと捉えています」と語る。8月に発表された政府主導の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の最終取りまとめにも、「物流プラットフォームによる物流可視化事例」としてtraevoが取り上げられており、その有用性に関しては国との協働作業や、大手企業の運用事例で実証されている状況だ。

運輸事業者と荷主企業や各種ソリューションベンダーなどとの連携に、さらに行政が加わり、労働状況の一元把握や、環境対策取り組みのデータ基盤としてtraevoの活用が広がることが、物流課題における重要な前進となるのではないだろうか。同社が目標としている「25年までに貨物用車両20万台への導入」が実現すれば、その時の物流業界の景色も大きく変わっているかも知れない。

traevoホームページ