ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

HAZMAT倉庫「プロロジスパーク古河6」、2024年12月完成目指す

危険品・普通品の一体運用施設で実現するSCM

2024年1月23日 (火)

話題恥ずかしながら、何気なく使っている化粧品や香水、制汗スプレー類もその成分に応じて、まとまった数量を保管する場面では「危険品」に分類されるとは知らなかった。時代の変化とともに、危険品に対する認識も変わり、物流現場においても最新情報に更新された対応が必要となっていることをつくづく思い知らされる。

▲(手前)2024年12月完成予定のHAZMAT倉庫群「プロロジスパーク古河6」

プロロジスが、茨城県古河市の「プロロジス古河プロジェクト フェーズ2」において、新たに全8棟からなるHAZMAT(ハズマット)倉庫「プロロジスパーク古河6」の開発を進めている。HAZMATは危険品を意味するhazardous materialの略称。HAZMAT倉庫は建築基本法や消防法などで定められた保管量や、建物構造、人員体制に準拠しなければならない。

▲プロロジス開発部部長の佐藤英征氏

近年、危険というイメージとはかけ離れた日用品まで、消防法上の危険物に該当する商品は年々増加する状況にある。プロロジスのエグゼクティブディレクターであり、開発部の佐藤英征部長は「HAZMAT倉庫需要の拡大はひしひしと感じます。大きな要因はコンプライアンス意識の高まりと厳密化でしょう」と背景を語る。コロナ禍を経て、「安全性」と「コンプライアンス」を重視した拠点ニーズが、HAZMAT倉庫需要を後押しする。

先駆者・プロロジスだから実現した、攻めのHAZMAT施設開発

プロロジスは2008年、マルチテナント型物流施設「プロロジスパーク市川1」(千葉県市川市)に最初のHAZMAT倉庫を併設してから、15年にわたってこの分野でノウハウを蓄積。マルチテナント型の併設とBTS(専用開発)型を合わせて15棟のHAZMAT倉庫を建設してきた実績を持つ。


▲(左)「プロロジスパーク市川1」の全景、(右)同施設に併設されたHAZMAT倉庫

この古河においても、5月に竣工したマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク古河4」と併設でHAZMAT倉庫を用意したのだが、「普通品の物流拠点と、HAZMAT倉庫との一体運用による優位性を訴求したところ、たちまちHAZMAT倉庫が満床となってしまい、一体運用での古河4使用を希望していたお客様に、お断りしなくてはいけない状況となってしまった。改めてHAZMAT倉庫8棟の古河6を用意することで、普通倉庫の古河4と一体の拠点運営を提案できる」(プロロジス・佐藤英征氏)という。

▲プロロジスパーク古河4と併設HAZMAT倉庫(左下)

荷主企業・物流企業の中には、求めているエリアでHAZMAT倉庫を確保できず、危険品だけを離れた場所で取り扱っていたり、床面積の不足などで苦労している企業も多い。普通品と危険品の一体運用によって、横持ち輸送などのムダな輸送コストと多拠点体制による管理コストを圧縮できる施設運用の実現は、危険品を商材にもつ荷主企業にとって大きな魅力となる。

▲24年12月完成予定のHAZMAT倉庫群「古河6」は、主に普通品を扱う「古河4」と隣接するため、普通品と危険品の一体運用が可能となる

アース製薬とロジコアが語る、古河4・6の魅力

▲アース製薬執行役員グローバルSCM本部SCM部部長の北村浩二氏

アース製薬も、HAZMAT倉庫の一体運用に魅力を感じ、プロロジスパーク古河4への入居を決めた企業の1つである。同社の執行役員でありグローバルSCM本部SCM部の部長を務める北村浩二氏は、「2024年問題を前に、共同輸送やリードタイムの延長など、さまざまな輸送モードの変革を進めているなかで、拠点施設の見直しも課題となっていました。ちょうどそのタイミングで、古河のスペックを紹介されたことが入居のきっかけとなりました」と背景を語る。

このアース製薬に古河4を紹介したのが、同施設でアース製薬の物流を受託しているロジコア(大阪府茨木市)である。ロジコアは、これまで主に幹線輸送でアース製薬の物流を担ってきた。

▲ロジコア営業本部部長の佐藤竜一氏

「アース製薬の施設運用においては、まずHAZMAT倉庫であることが条件でした。古河4にHAZMAT倉庫が併設される計画が公開されたことで、まさに求めていたものはこれだ、と。これからの改革プランにも大きく貢献するのではないかと考えたことがスタートになりました」と、同社営業本部部長の佐藤竜一氏は経緯を語る。

アース製薬の商品の中で危険品に分類されるのは、主に虫ケア用品(殺虫剤)をはじめとするエアゾール製品。これまでは工場のある兵庫県赤穂市で、これらも保管していた。

「海外で生産する商品や、国内(関東)で生産されるOEM商品についても、一旦赤穂へ入れてから各地へというプロセスだったので、拠点見直しも含めた抜本的な改革が必要となっていました。サプライチェーン全体での物流コスト削減と効率化を進めることを重視し、その前提として、まずは危険品を保管できる場所という条件で拠点を見直したときに、プロロジス古河プロジェクトがタイミング的にも立地的にもぴたりとハマったというところです」(アース製薬・北村氏)


▲(左)兵庫県赤穂市にあるアース製薬坂越工場、(右)代表的なエアゾール製品

アース製薬にとっては、既存の関東周辺拠点やOEM業者とも連携しやすい立地に、HAZMAT倉庫がタイミングよく供給されたことで、新たなサプライチェーン構築への工程が一気に具体化したといえよう。また、施設の耐震性や蓄電池・畜燃料などのBCP対策が整っている点も入居の決め手になったという。

「まずは、季節波動や関東巨大商圏の需要に柔軟に対応する、保管施設としての運用からスタートすることで在庫回転率を高め、やがては、輸送モードの改革などと合わせた、サプライチェーン全体の再編成においても主力拠点として活用することを考えています」(アース製薬・北村氏)

ロジコアの佐藤竜一氏は「HAZMAT倉庫は需要に対してまだまだ少ないという実感があります。今回はタイミング的にもうまくマッチングしましたが、まだまだ危険品取り扱いを前提とした施設を探す荷主さんは多い」といい、物流危機を契機にしたSCM見直しのなかで、HAZMAT倉庫を中心とした施設需要がますます高まる可能性を示唆する。

▲ロジコアとアース製薬が利用する、古河4併設のHAZMAT倉庫

両者にはさらに、マルチテナント型物流施設としての古河4についても意見を聞いた。ロジコアの佐藤竜一氏は、「高い天井は保管効率を高める点など、ほかの施設と差別化できる、もっとも大きなポイントです」と語り、梁下有効高6.3m以上(一部最大8.6m)と、高積みによる効率的な保管や、自動化機器の導入、製造加工などでの運用も想定できることを評価する。他方、アース製薬の北村氏は、別の観点から古河4を評価した。

「今後、この施設をベースにして、ほかの入居企業と新しい取り組みができるのではないかと期待しています。物流効率化において同じ悩みを持つ企業同士が、共同配送などの取り組みで一丸となる、そんな場所になってほしい」(アース製薬・北村氏)

物流改善意識の高い企業が集まることで、新しい物流効率化のアイデアが生み出される──。同氏はこうした「共創の場」としてのポテンシャルに期待を寄せる。

▲「プロロジスパーク古河4」は、延床面積12万平方メートル超の大型物流施設。同施設を含む古河プロジェクトの広大な敷地内には、さまざまな業種・業態の入居企業が集う

古河6と古河4に共通するコンセプト「お客様第一」「チャレンジ精神」

需要が高まるHAZMAT倉庫だが、プロロジスがこの分野に着手した当時はまだ、時代を先取りしすぎたのか、チャレンジャーとしての苦労も味わったという。そもそも、HAZMAT倉庫自体、土地や建設に要する費用と床面積だけで考えれば採算が合わない建物といえるが、プロロジスの佐藤氏は、「まずお客様のニーズに応えるのが第一。それに加えて、当社のチャレンジ精神が生かされている」と開発背景を語る。

このコンセプトは、マルチテナント型物流施設の古河4においても、2階で両面バースを実現するダブルスロープや、最大8.6mの梁下有効高など、既存の“汎用性”の枠にとらわれないチャレンジで具体化されている。

▲プロロジスの松野亙吾氏

古河4の設計に携わった、コンストラクション・マネジメント部の松野亙吾氏は、同社で初めてダブルスロープを取り入れたことを、「機能面はもちろんですが、単純にダブルスロープは今までなかったよね、みたいなチャレンジ精神で後押しされた面もあるかもしれません。開発としては、やりがいのある企業風土です」と話し、白い歯をこぼす。

古河4は、1・2階ともにクロスドック可能な両面バースを備え、1階はワンフロアでの機動性を重視、2・3階はメゾネット構造で垂直搬送能力を高め、保管効率を上げた運用に対応する。「特別高圧電力の受電も計画しており、冷凍冷蔵倉庫や工場、流通加工場としての活用、自動倉庫をはじめとする大規模なマテハン機器の導入など、あらゆる用途に対応できる」(プロロジス・松野氏)という。

▲プロロジスパーク古河4は、同社初のダブルスロープを採用し、1・2階ともに両面バースでクロスドック可能。2・3階は梁下有効高が6.3m(一部最大8.6m)に設定されており、自動倉庫などの導入によって高い保管効率を実現できる

「関東の中心」だから実現できる、スケールの大きな物流改革

立地面では、圏央道の五霞インターチェンジ(IC)、境古河ICからいずれも10分とアクセスに優れた関東地方のほぼ中央に位置し、国道・高速道路を経由して東西南北の主要都市・港・空港まで1時間ほどで到達できる。また、東北自動車道からダイレクトにつながる加須エリアから10kmと、関東全域はもちろん、東日本における広域配送拠点としても最適で、高速道路網を使って東北方面や関西方面へのアクセスでも利便性が高い。茨城県の西端・古河市という、関東の結び目とも言えるような場所から巨大消費圏をぐるりと見回す存在感は、物流施設として圧倒的だ。


▲(左)古河4の狭域所在地図、(右)広域所在地図(クリックで拡大)

施設内には、カフェテリアを2つと小型コンビニ、厨房で調理した仕出し弁当の提供も予定。各種環境面での公的認証など、高機能な環境性能施設として、働く人や、地域へも貢献する。それぞれ用途の違う2つの施設を一体運用することで、新たな事業展開を思い描けることはもちろん、そこで働く人たちの笑顔も想像できることが、このプロジェクトの魅力だとも言える。

▲入居企業の従業員向けカフェテリア

まだまだ成長を続けるプロロジス古河プロジェクトフェーズ2。ニーズ第一のコンセプトと、チャレンジ精神が、その完成に向けて力強くけん引する。「希少な工業専用地域の中で、各社の成長に合わせた事業拡張、拠点拡大に対応できるのも強みです。皆様のニーズを取り入れながら、必要な施設や設備を増設し、プロロジス古河プロジェクトフェーズ2を完成させていくことが目標です」(プロロジス・佐藤英征氏)。

プロロジスパーク古河4・古河6の概要
■プロロジスパーク古河4
所在地:茨城県古河市北利根15番地
敷地面積:6万8129平方m(2万609坪)
延床面積:12万3266平方m(3万7288坪)
※うち、HAZMAT倉庫棟999平方m
構造:柱RC造+梁S造、地上3階建て
完成:2023年5月
交通:圏央道・五霞ICから10分(6.4km)、新4号バイパス(国道)まで3分
物件ページ:https://www.prologis.co.jp/portfolio/kanto/koga4
■プロロジスパーク古河6
所在地:茨城県古河市北利根16番地
敷地面積:2万1100平方m(6400坪)
延床面積:7800平方m
(2356坪)
構造:鉄骨造、地上1階建て
完成:2024年12月
交通:圏央道・五霞ICから10分(6.4km)、新4号バイパス(国道)まで3分
物件ページ:https://www.prologis.co.jp/portfolio/kanto/koga6
■問い合わせ
上記ページ内の問い合わせフォームよりお問い合わせください。
プロロジス開発部(TEL:03-6860-9090/メール:pldnews@prologis.co.jp)