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幅広いニーズに寄り添う、Landportつくばみらい

2024年7月31日 (水)

▲「Landportつくばみらい」の完成イメージ(出所:野村不動産)

話題野村不動産は2025年6月、茨城県つくばみらい市に物流施設「Landportつくばみらい」を完成させる。周辺には常磐自動車道・谷田部インターチェンジ(IC)、谷和原ICがあり、各IC付近には大手荷主企業の物流施設が林立している。

競合が多く、差別化が難しい地域で当該施設をどうアピールしていくのか。デベロッパーとしての狙いと施設の強みについて野村不動産に話を聞いた。

都心へのアクセス良好、労働力も確保しやすい立地

「Landportつくばみらいの強みは立地にある」と、物流事業部課長代理の田邉裕美子氏は語る。そもそもLandportつくばみらいは谷田部ICからは7.1キロ、谷和原ICからは9.1キロの距離にあり、首都圏へのアクセスは悪くない。東北エリアへの配送にも便利な立地だ。

▲物流事業部課長代理の田邉裕美子氏

常磐道、圏央道を自在に利用できる立地の良さは、物流施設としての強みに他ならない。田邉氏は「周辺施設と比べても、都心までの距離にはほとんど差がない」と自信をのぞかせる。

また26年には谷田部、谷和原よりもさらに近い場所に「つくばみらいスマートIC」が開通予定。物流施設としての利便性はさらに上がる見通しだ。現在、複数の運送会社が谷和原ICを利用しており、混雑が問題になっている。つくばみらいスマートICが完成すれば、無用な混雑を避けてスムーズに荷物を運べるようになることが期待できる。


▲(左から)広域図、配送圏図(それぞれクリックで拡大)

▲物流事業部の太田怜良氏

物流事業部の太田怜良氏は「周辺地域と比べて労働力を確保しやすいこともつくばみらいの特徴」と語る。確かに谷田部IC付近には大手荷主の物流施設が集まっており、そちらに新しく拠点を構えても労働力の奪い合いが起きかねない。その点、つくばみらいには竣工済みの大手物流施設が比較的少ない。

自身も2児の母である田邉氏は「開発が進み、つくばみらいには子育て世代が移住しつつある」とし、地域のより一層の発展に期待を寄せた。高齢化による労働人口の減少が社会問題化しつつある現代において、若年層の流入が見込める地域は非常に大きな価値を持つ。

▲施設周辺3キロ圏内の労働者人口(クリックで拡大)

荷主企業としては、想定以上に人件費が高騰するといった事態も避けたいところだ。つくばみらいの周囲3キロには2万人以上の人口があり、有効求人倍率は1.4となっている。4000人だけ労働者人口が多い、つくばの有効求人倍率が2.23であることを考えても、労働力は確保しやすいといえるだろう。前述したように労働力の奪い合いが起こり、賃金が大幅に跳ね上がるといった事態も当面は起こらない見通しだ。

Landportつくばみらいは災害に強い施設でもある。この施設は国土交通省が公表するハザードマップにおいて、津波、高潮、洪水、土砂災害の対象外地域にある。自然災害によって庫内が浸水する危険が非常に小さく、従業員の安全確保はもちろん、荷物の保全という観点からも安心材料が加わる形だ。

▲周囲のハザードマップ(クリックで拡大)

土地所有者とWIN-WINの関係を目指す「等価交換方式」

なぜ「つくばみらい」なのか。今回、野村不動産がこの場所にLandportを構えることになった経緯について、田邉・太田の両氏に詳しい話を聞くことができた。

太田氏によると「竣工までの期間、土地は野村不動産の所有ではない」という。「建築費は高騰し、ゼネコンの受注余力も減るなかで、土地の所有者が自ら建物をつくることが難しい現状がある」(太田氏)。そこで野村不動産は、土地の活用法に悩んでいる個人・企業のために「等価交換方式」という仕組みを導き出した。

等価交換方式では、野村不動産側が必要な建築費を負担し、ゼネコンの確保・折衝を一手に担う。その上で、物流施設が完成した暁には、土地所有者と土地建物の権利を分割する。こうすることで、土地所有者は、施設完成後も賃貸収益として所有分の利益を受け取ることができ、正にWIN-WINの事業となる。

野村不動産は購入した土地や周辺地域を徹底的に調査し、最適な用途を導き出す。これはさまざまな不動産開発に携わってきた野村不動産ならではの強みといえる。土地の特性に合わないプロジェクトを無理に進めることはない。

オフィスや住宅などと違い、物流施設の場合、最寄駅からの徒歩分数はそれほど重要ではない。騒音などの理由から幹線道路に近い土地は敬遠されがちだが、交通の便を重視する物流施設にとっては、かえってそれが強みになる。Landportつくばみらいも、慎重に使い道を検討した上でつくられた施設というわけだ。

また野村不動産は施設の運営を引き受けるなど、完成後のフォローにも力を入れている。人材募集やバース(荷下ろし場)の管理などは標準装備で、荷主側が望めば必ずサービス(一部有償)を受けることができる。

建物を建てて終わりではなく、ビジネスパートナーとして、土地所有者と末長く良好な関係を築いていく構えだ。野村不動産には大手デベロッパーとしてのさまざまな経験があるからこそ、こういったWIN-WINな提案ができている。

自由な使い方ができる、マルチな物流施設

Landportつくばみらいは自由な使い方ができる、マルチな物流施設を目指している。そのため施設のつくりはオーソドックスなものを採用。荷物の保管、EC(電子商取引)配送など、さまざまな活用法が想定される。

基本スペックをおさらいすると、敷地面積は1万7000平方メートル以上、延床面積は3万8000平方メートル以上。4層構造で、1階と2階には搬入のための車路があり、それぞれのバースにはトラックを19台ずつ停められる。さらにそれぞれの車路には屋根を設置。雨天でも荷物を極力濡らすことなく積み下ろし作業ができる。倉庫の床には、荷物の積み下ろしが比較的楽な高床式を採用した。

また電気代を少しでも抑えるため、庫内の照明には人感センサーを搭載。想定していたより荷物の出し入れが頻繁になった場合には、垂直搬送機を増設することも可能だ。デメリットになり得るような癖がなく、扱う商品や利用目的を問わない、使いやすい施設といえるだろう。太田氏も「尖ったニーズに応えるというよりも、柔軟な使い方ができる施設にしたい」と話した。フロアを分割して貸し出すなど、小分けのニーズにも応える予定だ。

▲周辺図(クリックで拡大)

従業員の働きやすさにも配慮する。最寄駅である首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス・みらい平駅からは徒歩18分、バスを利用しての通勤も可能だ。車での通勤者が主となることが想定されるため、70台分の駐車場も用意した。50台分の駐輪場もあり、各人が自分に合った通い方を選べる。

1階には席数43、2階には席数40のカフェテリアをそれぞれ設置。複数テナントの利用を想定し、十分な広さを確保した。食品自販機を設置したり、定期的にキッチンカーを呼んだりする計画もある。

野村不動産は年に1-2回、従業員を労うためにLandport全館を対象とするイベントを開催している。フォト・大喜利コンテストなどを行い、反響が大きい投稿をした者には景品も出す。また7月には七夕の笹飾り、クリスマスにはツリー、正月には門松など、季節ごとに装飾を変えて従業員の目を楽しませている。

田邉・太田の両氏は「潜在的なニーズはあると感じている。オープン前の満床を目指したい」と話した。「物流施設の魅力を伝えるにはとにかくリサーチが大事。利用者の姿をよりしっかり描けるようにしていきたい」(田邉氏)。

幅広いニーズに柔軟に寄り添った物流施設、Landportつくばみらい。その真価が問われる日は近い。

「Landportつくばみらい」概要

所在地:茨城県つくばみらい市紫峰ヶ丘3-36-2(地番)
敷地面積:1万7085平方メートル
延床面積:3万8587平方メートル
規模・構造:S造・耐震・地上4階建て(スロープ型、1階・2階片面接車バース)
用途地域:準工業地域
アクセス:常磐自動車道・谷田部ICから7.1キロ、谷和原ICから9.1キロ、つくばみらいSIC(2026年開通予定)から3.8キロ、つくばエクスプレス・みらい平駅から徒歩18分
完成:2025年6月末(予定)

https://www.nomura-landport.com/tsukubamirai/