
▲映画「バトルクーリエ」の監督・主演を務める大東賢氏。事務局内のアクションスターのグッズなどからは大東氏の映画への想い、こだわりが伝わってくる。
国内昨今、トラックドライバーの長時間労働の是正が社会的な課題となっている。メディアでも盛んに「2024年問題」が取り上げられ、トラックドライバーという仕事の過酷さや泥臭さは、より多くの人の知るところとなった。
運送業界にとって象徴的ともいえるこのタイミングで、運送をテーマにした特撮映画「バトルクーリエ」が公開される。今回は同作の監督・主演を務める大東賢氏に映画の見どころやメッセージ、運送業界に対する想いを聞いた。
大阪府四條畷市、大東氏の活動拠点である「PGA事務局」にはトレーニング器具のほか、アクションスターのポスターやグッズ、フィギュアがところ狭しと並べられている。大東氏がアームレスリングの選手だったこともあり、競技用の台も見受けられた。室内を少し見回しただけでアクションや特撮、映画に対する思い入れの深さがひしひしと伝わってくる。
時は2050年、バトルクーリエの主人公は運送会社で働くアルバイトの配達員(クーリエ)。会社から支給されたパワードスーツは不完全で信頼性が低く、主人公は半ば押し付けられるような形でスーツのモニターに選ばれる。そんななか、闇の組織ゴッハイ(誤配)が暗躍。不完全なスーツを身にまとったクーリエの戦いが始まる──。
不完全なスーツを着用したクーリエは変身ができない。それに対し悪役は変身ができるという。資金潤沢な悪役は高性能のパワードスーツを購入できるのに対し、主人公側は安価なスーツをローンを組んで購入するしかないという始末。運送業界のこういった構造的な歪みもテーマの一つだ。
また、あらすじだけ聞くと勧善懲悪の単純なストーリーのように感じるが、大東氏によると敵方のゴッハイにも深い事情があるという。ゴッハイの首領の父親は運送会社でパワハラを受け、自殺してしまった。首領はその恨みから運送業界に復讐をしようとしているのだ。敵を悪と切り捨てないところにも、運送業界全体を俯瞰しようとする大東氏の思惑が感じられた。
大東氏がこのような映画を撮ろうと思ったのは、実際に運送業界で働いた経験があったからだという。20代に役者を志してから10年以上、副業としてドライバーを続けた。「今回の作品では自分の前半生を題材にした。実際に体験していることだからこそリアルに描ける」(大東氏)
大東氏は「運送業界には感謝している」としつつも、「電子で登録したものを紙に再記入したりと、無駄な作業も多い印象。もっとこうしたらいいんじゃないかなという思いはあった」と話す。さらにキャスティングには中高年の方を多く起用。それもまた2050年の運送業のリアルを思い描いた結果だという。大東氏は高齢化が進むトラックドライバーの実情を鋭く突く。
バトルクーリエは現在、クラウドファンディングを実施中。資金は順調に集まっているようで、すでに目標額の70%近くを回収した。支援内容によっては試写会に行けたり、エンドクレジットに名前が載ったりするという。声のみの出演にはなるが、今作には藤岡弘、氏も参加している。特撮界のレジェンドと一緒にクレジットされるというのは、特撮好きにはたまらない特典ではないだろうか。
「運送業界には感謝しているし、ただ文句を言いたいわけではない。業界をもっとよくしたい、みんなで業界のこれからを考えたい」と話す大東氏の目は生き生きとしている。ドライバーに注ぐ視線も熱い。「アルバイトでもがんばれる、輝けるっていうことを伝えたい。主人公も最初はお客さんに嫌われる。でも誠意を持って接しているうちにお客さんに認められるようになる。だから業界の上層にはドライバーをもっと大切にしてもらいたい」
サブタイトルは「運送ドラゴン」とした。「ドラゴンにはヒーロー、神さまといった意味を込めている。ドライバーには自分の仕事に誇りを持って打ち込んでもらいたい。そうすれば運送業界はもっと良くなるんじゃないか」。大東氏の熱い思いは、ぜひ劇場で確かめてもらいたい。

▲脚本を担当したのは大東氏の妻・千尋さん(左)
■クラウドファンディングページ
https://camp-fire.jp/projects/view/757652
■予告動画
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