話題野村不動産が展開するLandportシリーズの新たな拠点「Landport東海大府(愛知県大府市・東海市)」が、2025年10月に竣工予定だ。敷地面積9万8265平方メートル、延べ床面積は24万6539平方メートルを誇り、地上6階建てのPCaPC造(プレキャスト・プレストレストコンクリート造)。倉庫部分は5層で、中央車路を挟んで東区画・西区画の2区画構成、ダブルランプウェイ方式となっている。梁下天井高は各階5.5メートル、床荷重は1平方メートルあたり1.5トン(1階B区画のみ、天井高6.5メートル、床荷重2トン)で、10トン車555台分のトラックバースを完備。特に1階は両面バースがあり、荷物の積替え、中継輸送に適した設計だ。
万全の災害対策、危険物倉庫併設の超大型・マルチアクセスな物流施設
想定される対象テナントは、中部経済圏で盛んな自動車産業に関連する企業をはじめ、小売チェーン、EC(電子商取引)企業など。あらかじめ対象業種からの意見を聴いて反映し、幅広い業種に対応できるように設計されているが、危険物倉庫を併設することもテナント幅を広げる工夫の1つだ。リチウムイオンバッテリーや消毒用アルコールなど、近年需要が高まっている品も保管することができる。近隣にLandport小牧(愛知県小牧市)もあるため、2拠点体制のテナントも想定しているという。
東海といえば、心配なのは南海トラフ地震などの災害の危険性が叫ばれていることだ。その点を受けて都市開発第二事業本部建築部の黒川泰匡氏は「この施設は大規模な自然災害にも耐えられる仕様」と自信をのぞかせる。取得に10年近くを要したという用地は名古屋港の近くでありながら、ハザードマップ上で津波、高潮、洪水、土砂災害のいずれも色付けがなされない「対象外地域」で安全性が高い。液状化が発生しにくい地盤であることも確認済みである。加えて、建物にも免震構造を導入、大幅に揺れを軽減し、保管物の損壊を最大限まで減少させる。また、いざというときに役立つ、72時間の運転が可能な非常用発電機、防災備蓄倉庫も施設内に完備し、事業継続力を高める予定だ。
▲野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部建築部の黒川泰匡氏(左)とリーシング担当の峰岸健太郎氏(右)
「テナント企業が安心して業務を行える環境を提供することが我々の使命」と語るのは、野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部リーシング担当の峰岸健太郎氏。災害を恐れることなく展開でき、万が一の発生時も影響を最小限に抑える施設となることが見込まれる。
環境への配慮と効率化の両立策もしっかりと備える。特別高圧受電と省エネ設計、エネルギー効率の良い設備で電力消費量とテナントの電力コストを削減するとともに、将来的にEV(電気自動車)トラックの充電設備に対応するためのポテンシャルも有する。特にEVトラックは次世代の持続可能な運送において注目度の高い方法の1つであり、今後充電設備の需要も伸びる見込みで、展開に期待が寄せられる。また、将来への備えの点では、荷物用エレベーターを初期稼働の他に将来7か所増設できるよう、ピットが用意されている点も興味深い。これらの取り組みは、立地面も含めた施設規模、災害対策とあわせて、すでに多くの物流企業・荷主企業から高い評価を受けているという。
立地とサービスで課題を解決する中継輸送拠点
Landport東海大府は、立地の点で相当の利点を有している。名古屋港まで5.4キロメートルで輸出入貨物の取り扱いも容易である上に、近隣消費地である名古屋市内や、自動車産業をはじめとする生産の中心地である西三河地区への利便性も高い。さらに東名高速道路や名神高速道路につながる名古屋高速道路・大高IC(インターチェンジ)、伊勢湾岸自動車道・大府ICまでそれぞれ0.5キロメートルなど、高速道路インフラへの高いアクセスで、中部・名古屋経済圏から全国各地への輸送の要衝となれる。
複数の高速ICへのアクセスに加え、本物件の前面には新設道路が整備済みであり、大型車のスムーズな通行が可能となっており、愛知県全域と三重県東部が30分圏内、渋滞がなければ東京からでも3時間半で到達可能だ。大規模な輸送と倉庫従業員の通勤の両方を支えるため、490台分の広大な駐車場を確保し、さらに555台分のトラックバースの一部は駐車場に転用できる仕組みも構築した。2024年問題で注目される、東京-大阪間等の中継輸送拠点の需要の高まりに対応する物流施設としての機能を有している。
大規模経済圏に近いことは、人口の多さとも結びついている。東海大府エリアの人口は20万人程度。近隣他地域に比べその数自体も多いが、製造業や物流業に従事する人口が多いのも特徴だ。倉庫内での労働力確保の課題解決にも資するのはもちろんのこと、この地に新たな雇用機会を提供することは地域経済活性化の観点からも意味がある。用地取得を受け持つ野村不動産都市開発第二事業本部開発部の半田歩武氏は、「Landport東海大府の開発は、地元の経済活性化にも寄与するものと考えている」と語る。
もちろん、施設側での人材誘致の努力も怠らない。働きやすさと効率化の両面を確保する1階の一部への低床バース採用に加え、共用の会議室と3か所のカフェテリア、無人コンビニエンスストアなど、近年の新設物流施設ではメジャーな設備を充実させるほか、さらにシャワールームやコインランドリーまで設置予定という。ねらいは人材確保だけでなく、異なる業種の企業同士が情報を共有し、新たなビジネスチャンスを創出することにも向けられている。
テナント企業にとってうれしいのは、充実した設備でビジネスチャンスが生まれることだけではない。Landportシリーズには物件ごとにLTM(ロジスティクス・テナント・マネジメント)と呼ばれる物件担当がつき、テナント企業に対し包括的なサポートを提供する。運営サポート、トラブル対応はもちろんのこと、ニーズに応じた設備導入の支援、業務効率化に向けた拠点最適化シミュレーションやレイアウト提案、そして野村不動産が運営する企業間共創プログラム「Techrum」(テクラム)を通じた自動化支援サービスまで受けられる。最先端の設備を利用した最適化で、自社の業務効率化を進めることが可能になるのだ。
野村不動産の新たなフラッグシップへ、高まる期待
用地取得に当たっても関係者との綿密な協議を繰り返してきた野村不動産は、Landport東海大府の建設を担う矢作建設工業とも、非常に良好な関係を築いている。LOGISTICS TODAYの取材では、野村不動産の営業担当者とLandport東海大府建設の現場監督とが、肩を並べて現場を巡回する様子も目にすることができた。現場の雰囲気もよく、すれ違う現場作業員の方々は一様にしっかりとしたあいさつを返してくれた。こうした事実からもデベロッパーと現場との良好な関係がうかがい知れた。
▲「Landport東海大府」建設現場の様子
建設に関するさまざまな不正や問題が発覚する昨今だが、デベロッパーがこれだけ深く関わり、友好的な関係のもとで現場を訪れていれば、Landport東海大府にそのような心配は不要だろう。
「規模だけではなく、立地や建物スペックを含め、Landport東海大府は野村不動産のフラッグシップとなる物流施設」と峰岸氏。野村不動産の新たな挑戦を前に、竣工への期待が高まっている。Landport東海大府は、現在もテナントを募集中だ。