ロジスティクス国土交通省は8月27日に公表した来年度予算概算要求のなかで、海事分野でのカーボンニュートラルを推進するため、化石燃料の代替燃料として期待されている水素やアンモニアの輸送手段の確立や、洋上風力発電の技術開発に取り組む方針を示した。こうしたカーボンニュートラル推進に向け、1億9600万円の予算化を財務省に求めた。
自然界に広く存在し、水からも取り出せる水素は脱炭素に向けた次世代の燃料として期待されており、国も「水素サプライチェーンを早期に構築できれば、海外市場への展開によって、産業の競争力強化を図る好機にもなる」としている。同様にアンモニアも新たなエネルギーとして期待されている。
ただ、課題は供給コストで、水素やアンモニアの供給コストを化石燃料と同等程度まで下げるためには、船舶などによる、効率的な大量輸送手段を早急に確立する必要がある。このため国交省は、圧縮水素を輸送する際の安全基準策定のための調査やアンモニアを船舶間で積み替える際の安全基準策定のための調査などを行う。
圧縮水素の輸送では、海上の水素ステーションと呼ばれる圧縮水素運搬船の利用が想定されているが、水素を大量輸送した際のリスク評価を行い、安全基準案を策定する。また、可燃性の水素を安全に運ぶには、水素をトルエンに反応させ、メチルシクロヘキサン(MCH)という化学物質にして運搬する方法が期待されているが、MCHを大量輸送する際の漏洩時のリスクなどを検証し、安全基準の策定に向けた調査を進める。
アンモニアの運送についても、船舶間で積み替えなどを行う際の漏洩の危険性などについて調査。こうした調査と安全基準の策定を進め、安全な大量輸送方法の早期確立で国際競争力の強化を図る。
また、洋上風力発電については、2040年までに30-45ギガワットの案件を形成するとの目標を達成するため、技術開発や実証事業、環境整備を進める。
今後、洋上風力発電の普及が進むにつれ、施設の大規模化が予想されることから、大規模化に対応した検査手法の検討や、将来導入が期待される新技術・新コンセプトへの対応の検討などを進め、技術基準・安全ガイドラインの見直しや拡充を行う。特に現在の検査は、全数目視検査が前提で、大規模化には、検査のコスト増が課題となる。
このほか、国際海事機関(IMO)では、「2050年頃までに温室効果ガス排出をゼロにする」との目標を達成するため、新たな国際ルール作りが進められている。
日本がIMOで合理的な提案や主張ができるよう、調査を進め、ルール作りで一定の役割を果たす。また、IMOでは、加盟各国に労働安全確保と環境保全の要件に合致するヤードでのシップ・リサイクル(船舶解体)を義務づけている。これに基づき、国内の国内シップリサイクル事業の自動化、DX、大型船への対応などを進めて、高度化を図る。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com