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日本郵便とヤマト、対立のきっかけは「こねこ便」!?

2024年12月25日 (水)

ロジスティクス日本郵便が23日、ヤマト運輸を相手取って120億円の損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に提起したのは、本紙既報の通りだ。これにより、メール便や小型荷物の協業をめぐる両社の争いの決着は司法の判断に委ねられることになったわけだが、そもそも「世紀のお見合い」はなぜ破談に向かっていったのか。

両社が対立するきっかけとなったのは、ことし8月のヤマトによる新商品「こねこ便420」の突然の発売だった。専用資材を事前購入すれば、一律420円(税込み)で全国に荷物を送ることができるサービスで、日本郵便の「レターパックライト」と真正面からぶつかる。

“協業”相手が“競合”商品を打ち出してきたことは、日本郵便にとって「まさに寝耳に水だった」(日本郵便関係者)。事前の相談もなかったうえに、日本郵便は新商品の発表を中止するよう要請したが、ヤマト側は意に介さなかったという。

しかもヤマトが東京都内を対象に「こねこ便420」の販売をスタートしたのは、発表からわずか20日後だった。この前例にないような新商品投入のスピード感も日本郵便のヤマトに対する不信感を増幅させた。

無理もない。一般的に商品設計、プライシング(価格決め)、集配体制づくり、専用資材のデザインや印刷といった準備には一定の期間を要することを考えると、ヤマトがかなり早い段階から「こねこ便420」のリリースを企画していたことは容易に想像できる。

日本郵便は「こねこ便420」の「420円(税込み)」という価格設定にも驚愕した。現在、日本郵便の「レターパックライト」は「430円(税込み)」で販売されているが、これは今年10月に実施した料金改定後の価格だ。つまり、ヤマトは、日本郵便が6月に10月からの料金値上げを総務省に届け出たのを受けて、「レターパックライト」よりも10円安い料金で「こねこ便420」を8月から開始したのだ。

「ヤマトの動きがどうもおかしい」———。「こねこ便420」が市場に投入された8月以降、日本郵便のヤマトに対する警戒感は徐々に強まっていった。そしてことし10月に入ると、ヤマトから日本郵便に「小型貨物を配達先の郵便受けなどに投函する『クロネコゆうパケット』の運送委託を25年1月から当面の間停止したい」という主旨の申し入れ書が届く。その後、両社は文書でのやり取りを通じて協業の継続や関係の修復を模索してきたが、結局合意には至らず、訴訟にまで発展する事態となった。

今回の一連の騒動はどちらに非があるのか。破談を迎えるまでの経緯を振り返れば、その答えはおのずと浮かび上がってくるはずだ。(編集委員・刈屋大輔)

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LOGISTICS TODAY編集部
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