調査・データ帝国データバンク(TDB)は16日、トランプ米大統領の関税政策をめぐり、適用が一時停止されている上乗せ関税が実際に適用された場合、今年度の日本の実質GDP成長率は従来予測より0.5ポイント低下し、倒産件数は3.3%増加するとの予測を公表した。調査対象の企業からも先行きを懸念する声が上がった。
トランプ大統領は今月2日、「相互関税」を実施する大統領令に署名。世界の各国・地域にベースライン関税として10%の関税を課した。その後、日本や中国、EUなど米国の貿易赤字額が大きい57か国・地域に上乗せ関税を課すことが決まり、日本は計24%の関税が課せられることになった。しかし、すぐに方針は撤回され、一部の国に対する上乗せ関税は一時停止されることになった。
現在、各国が米国と個別交渉に臨む方針だが、停止期間は90日間となっており、その間に交渉がまとまらないと、上乗せ関税が再び課せられる可能性がある。
また、報復措置を取った中国に米国が反発し、互いに100%を超える関税を掛け合うなど米中間の対立が激しくなっており、世界経済への影響が懸念されている。
このため帝国データバンクは、米国による相互関税の適用が日本経済にどのような影響を及ぼすのか、同社のマクロ経済予測モデルを用いて試算した。
試算結果によると、90日間の停止期間後、91日目からすべての対象国に上乗せ関税が課せられた場合、日本の今年度の実質GDP成長率は、従来予測から0.5ポイント下がり、前年度比プラス0.7%になる。
なかでも輸出の伸び率は、従来予測の前年度比2.7%増から同1.0%増へと、1.7ポイント低下。特に、日本の主要輸出品である自動車や自動車部品は既に個別品目関税として25%の追加関税がかけられており、輸出全体を押し下げる最大の要因になる。
輸出の伸び率低下によって、企業の設備投資も下押しされ、民間企業の設備投資の伸び率は、従来予測の同1.8%増から同1.4%増へと0.4ポイント低下する。世界経済の先行き悪化への懸念から、企業は設備投資判断を慎重にせざるを得ないうえ、関税を避けるために米国内での生産拡大を進める企業も現れることが、国内での設備投資を抑制する要因となる。
こうしたことから、企業の経常利益や個人消費も落ち込み、景気が悪化。倒産件数も今年度は1万574件と従来予測より339件(3.3%)増加し、失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると予測した。
また、90日後に上乗せ関税が適用されず、一律10%の相互関税が継続するケースでは、実質GDP成長率が従来予測から0.3ポイント低下し、前年度比プラス0.9%になると予測した。
輸出の伸び率は同1.4%増で、従来予測より1.3ポイント低下し、民間企業の設備投資の伸び率も同1.6%増と、従来予測より0.2ポイント低下する見通となった。
企業の経常利益は同0.1%増と、わずかにプラスを維持できるが、個人消費は同0.8%増へと従来予測より0.2ポイント低下する。倒産件数は1万489件と従来予測より254件増加し、失業率も2.6%と0.1ポイント上昇するとした。
企業からは「保護主義的な動きが強くなり、グローバル企業の業績が徐々に悪化する可能性がある」(建設)や「輸出が落ち込む恐れがある」(鉄鋼・非鉄・鉱業)など先行きを懸念する意見が数多く聞かれたという。同社は「経済に与える影響は広範囲に及ぶと考えられ、特に中小企業は、さまざまな経路を通じて影響を受けることになる」としている。
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