調査・データインドの市場調査会社アステュート・アナリティカは24日、日本の再生医療や遺伝子治療向けの低温物流(コールドチェーン)市場は2024年から33年までの間に3.7倍の規模に成長し、2億984万ドルに達するとの予測を公表した。年平均成長率は15.86%となる。
レポートによると、日本は再生医療や細胞・遺伝子治療向けの低温物流システムで、世界的に主導的な立場にある。政府も14年以降、先進医療向けの安全な流通を実現するための支援に取り組んでおり、25年度には低温物流の研究開発に500億円を計上した。民間企業も積極的な投資を行っており、こうした官民の取り組みで市場規模も24年に5739万ドルと短期間で急速な成長を遂げた。
温度に敏感な生物由来製品を扱う再生医療や細胞・遺伝子治療で、低温物流は医療を支える重要な役割を担っており、さまざまな技術開発が行われている。特に、承認されている15種類の細胞治療製品には、個々の患者のニーズに合わせた低温輸送が必要で、日本の強固な物流インフラがそれを支えている。
25年には、細胞治療向けに特別に設計された35種類の新しい極低温輸送システムが市場に導入され、最大10日間、マイナス196度の温度を維持できるようになった。最新の温度管理技術では、温度変動を最大0.1度の精度で追跡でき、25年には、日本の低温輸送の80%以上に、こうした高度な監視システムが搭載されるとみられる。
AI(人工知能)と機械学習アルゴリズムの導入も進んでおり、予知保全と輸送経路の最適化によって、時間的制約のある治療薬の輸送時間を平均15%短縮した。
ブロックチェーンを活用した追跡システムの普及も進んでおり、15のブロックチェーンプラットフォームが開発の後期段階にある。ブロックチェーンの活用によって、サプライチェーン全体のトレーサビリティーとセキュリティーが強化されると期待されている。
現在も30種類以上の新たな極低温コンテナの開発が進められており、中には外部電源なしで最大30日間超低温を維持できる自立型極低温ユニットの開発も含まれる。さらに、次世代の凍結保存技術が開発されれば、細胞治療の保存期間が現在の平均48時間から最大14日間に延長できるとされている。
国内には温度制御包装・監視システムの開発に特化した専門研究所が80か所あり、物流技術の進歩に貢献している。さらに30年までに50か所の新しい低温物流に関する技術研究センターが開設される予定で、専用温度管理倉庫を含む専門施設の総数は全国で170か所を超える。
日本の再生医療や細胞・遺伝子治療分野の低温物流市場でシェア上位を占めるのは、DHLグループ、ワールド・クウリアー、ユナイテッド・パーセル・サービス・オブ・アメリカ(UPS)の海外企業で、計50%のシェアを占める。
DHLは、グローバルネットワークと医療ニーズに合わせた高度な低温物流システムが特長で、デジタル追跡システムや速達配送など日本特有のニーズにカスタマイズされたサービスを提供している。
ワールド・クウリアーは、日本国内の航空貨物輸送ライセンスを取得し、物流能力が大幅に向上。温度に敏感な製品をより効率的に輸送できるようになった。個別対応を重視し、日本の規制基準を順守するのに必要な、細胞・遺伝子治療物流の複雑な要件を管理する能力を備えている。
UPSはリアルタイム監視システムと高度なデータ分析で、正確な温度管理を行い、リスク軽減を図っている。日本での専門施設や物流拠点への投資、ヘルスケア業界のステークホルダーとの戦略的パートナーシップで、業界のトレンドや規制変更を常に先取りしながら先進医療のニーズに対応している。
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