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法改正対応に強み、進化続ける「トラックキング」

2025年5月12日 (月)

話題物流業界の法改正に対応し、キャブステーション(東京都新宿区)が運送業向け運行管理システム「トラックキング」の機能強化に乗り出している。4月1日から義務化された実運送体制管理簿に対応する機能を今夏にもリリース予定で、既存の運行管理データからボタン一つで出力できる仕組みを構築中だ。

旅客運行で培ったスピーディーな対応力

同社は旅客業界向けシステム「バスキング」で全国800社以上と契約する実績を持つ。旅客業界で培ったノウハウをトラック業界に展開することで、物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を加速させる狙いがある。

同社企画営業部事業統括責任者を務め、トラックキングの開発・マーケティングを指揮する河原大輔氏は「バスは法改正が頻繁だが、トラック業界は数十年大きな変化がなかった。今回が変革点になるのではないか」と指摘する。運送業に比べると高い頻度で法改正が行われ、よりデリケートな「人」を運ぶという業務なため、より詳細な法制度が整備されている旅客の分野での制度対応を繰り返した同社は、その豊富なノウハウを携えてトラックキングを作り上げている。

▲キャブステーション企画営業部事業統括責任者の河原大輔氏

実運送体制管理簿は、荷主から運送業者、そして下請け業者への多重構造を可視化するために導入された制度。荷主企業が自社製品をどの運送会社が実際に運んでいるかを把握することで、多重下請け構造の透明化と運送ドライバーの労働環境改善を目指す制度だ。自動車運送業の健全化に向けた取り組みであり、トラックドライバーの働き方改革に資する法整備ではあるが、一方で行政からは具体的な出力様式が示されておらず、運送各社は対応に苦慮している。

同社による20社以上の運行管理システム会社への調査によると、この制度に対応しているのはわずか1、2社という状況だ。河原氏は「ほとんどの会社が運行管理システムの中にこの機能を備えていない。これはチャンスだと考えた」という。これまで詳細にわたる管理項目への対応を、頻繁に行われる法改正に合わせてやってきた同社にとっては、こうした対応はお手の物と言える。

柔軟な対応力で運送業界に切り込む

同社が2020年7月にリリースした「トラックキング」は、直感的な操作性を重視した設計が特徴だ。「法令への対応はもちろん行うが、現場がどう使いやすいかを考えて作る。それがフィット力だ」と河原氏は強調。数か月ごとに変わる法令に柔軟に対応してきたバス業界での経験が、トラック業界向けシステムにも生かされている。

▲「トラックキング」活用の流れ(クリックで拡大)

国土交通省は物流業界の課題解決に向けて本腰を入れ始めており、今後も法改正が続くと予測される。運送事業許可の更新制導入も検討されており、更新に際しては法律に則った各種管理項目の記録なども必要になる。どの業界も労働人口減少時代で人手不足に陥っており、物流、運送業界は24年問題も到来している。限られたマンパワーで生き残るためには、システム化による業務効率化が不可欠だ。

同社のシステムはクラウドベースで一元管理が可能。河原氏は「紙で3年分保存すると、トラック100台規模の会社では部屋が書類でいっぱいになる。電子データでの保管が合理的」と指摘。タブレット端末を使った点呼や運行指示など、ペーパーレス化も進められるという。「システム導入で人材不足を補い、余計な時間を削減することで、運送業界の労働環境を改善に貢献したい」と抱負を語った。

同システムの大きな特徴は、マスターデータの有効活用だ。荷主、荷受人、運送会社などの情報をマスター登録しておくことで、多重構造下での運行管理を効率化できる。河原氏によれば「どの階層の会社が使っても、どこから受けてどこに出しているかが見られるようになっている」という。さらに、荷物の混載にも対応し、必要に応じてエントリーを追加することができ、あらゆる荷物に即座に対応できる柔軟性を備えている。

▲トラックキング「運行台帳」画面(クリックで拡大)

実運送体制管理簿については、「運行一覧」画面で条件を指定し、一括でデータ抽出できる機能を開発中だ。もちろん、管理簿を出力するのに必要なデータは既に、運行管理、案件管理などの項目から入力される仕様になっている。まもなく実装される管理簿出力機能により、特定の荷主や特定の期間ごとに必要な管理簿を簡単に出力できるようになる。出力されたPDFはクラウド上に保存し、必要に応じて共有する仕組みだ。紙での保管が必要な場合も、必要なときに印刷するだけで対応可能だという。

労働時間管理や教育記録も同システムでカバーしている。「人と車と経理上の問題が別々のシステムで分散されると使いづらい」との認識から、横断的に情報を管理できる仕組みの構築も検討中だ。同社は教育システム「グッドラーニング!」も展開しており、運転手の教育記録管理もサポートしている。

(クリックで拡大)

DXで運送業の効率化、省人化を支援

タブレット端末を活用した点呼や運行指示など、現場のペーパーレス化も推進。「スマートフォンで指示を受け、打刻し、データがクラウドに集約される仕組みで、バックオフィス業務の時間も削減できる」と河原氏は強調する。ドライバーのみならずバックオフィス要員の採用も難しくなっている昨今では、こうした省人化、効率化のソリューション導入は必須の取り組みといえそうだ。

同氏は、トラック業界の将来について「物流はこれからも増えるが、人口減少と時間規制で対応が難しくなる」との見方を示す。「荷主が求める資料を確実に提出できること、労働時間の上限規制に対応できること、人手不足を効率化でカバーすることが生き残りの条件になる」と分析する。

多くの運送業が、システムを導入する際に気になることの一つは、「一度入れてしまったシステムを、いつまで使い続けられるのか?」ということだ。その点で、キャブステーションが競合他社と一線を画す点は、法改正への迅速かつ的確な対応力だ。今後、トラック業界でも規制強化が見込まれるが、先々の変化への対応への強みがあるのは、ユーザーにとって心強い要素と言える。

また、こうした柔軟な対応が可能になるのは、トラックキングがクラウドベースの一元管理となっているからこそ。データもシステムもクラウドにあるため、最新の法制度に対応した状態での利用が可能となる。クラウド上で一元管理される荷主、荷受人、運送会社などのマスターデータを活用し、多重構造下での運行管理を効率化。実運送体制管理簿の作成も、データ抽出からPDF出力まで一連の流れを自動化する開発を進めている。

教育も網羅し、運送業全体をサポート

同社のビジョンは単なるシステム提供にとどまらない。前述のグッドラーニング!というeラーニングサービスも展開し、運転手の教育も支援。「多種多様な社会ニーズに応える高付加価値のサービスを提供」する企業として、運輸業界全体の課題解決に取り組んでいる。

▲「グッドラーニング!」は映像を多用したわかりやすいコンテンツが特長(クリックで拡大)

キャブステーションには「Something New」という企業文化が根付いており、新しい物事に積極的にチャレンジする風土がある。この文化が同社の革新的サービス開発を支えているのだろう。従来の旅行業界向けサービスからバス・タクシー業界、そしてトラック業界へと事業領域を拡大し、常に業界の一歩先を行くサービスを提供し続けている。

物流業界の課題が深刻化するなか、キャブステーションのシステムは「単なる管理ツール」ではなく「現場の負担を減らす道具」として、トラック業界のDX化と持続可能な発展に貢献していきそうだ。

「トラックキング」サービスページ

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