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緊急特番「トラック新法」議論、期待と課題入り交じり

2025年6月4日 (水)

話題LOGISTICS TODAY編集部は、6月4日、「トラック新法」(改正貨物自動車運送事業法および関連法)が参議院本会議で可決・成立したことを受け、同日12時15分から緊急特番「トラック新法、成立」をYouTubeライブで配信した。番組では、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介と編集委員の刈屋大輔が、数十年に一度とも言われる運送業界の大改革となる新法のポイントや業界への影響を多角的に解説。さらに、フジトランスポート(奈良市)の松岡弘晃社長がゲストとして電話で生出演し、運送事業者としての視点や新法への期待、そして残された課題について深掘りしたコメントを寄せた。本特番の模様は、LOGISTICS TODAYのYouTubeチャンネルおよび、今回初の試みとしてポッドキャストでもアーカイブ配信されている。

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番組冒頭、赤澤編集長は「トラック運送業界にとって、1990年の規制緩和以来の大きな転換点となる法律が成立した。何がどう変わるのか、そして我々はどう向き合うべきか、視聴者の皆さんと一緒に考えていきたい」と特番の趣旨を説明した。続いて、刈屋編集委員が、法案成立までの経緯、衆議院国土交通委員会での委員長提案、全会一致での可決などを報告し、「賛成232、反対2という圧倒的多数で成立した」と速報を伝えた。

番組では、刈屋編集委員が事前にまとめた解説記事に基づき、トラック新法の主要な5つのポイントについて議論が展開された。まず、「事業許可の5年ごとの更新制導入」については、これまでの「永続的な許可」から事業者の適格性を定期的に確認する制度へ移行することの意義と、準備期間の必要性が語られた。次に、「運送委託次数の制限(2次請けまで努力義務)」は、多重下請け構造是正への一歩と評価しつつ、「努力義務」という点や「実質的な支配関係」の判断基準など、実効性確保への課題も指摘された。

特に議論が白熱したのは、国交省が定める「適正原価」を下回る運賃・料金の継続的な受領禁止という項目だ。赤澤編集長は「これが一番の肝。どうやって適正原価を示すのか、荷主との価格交渉が本当に変わるのか、そして最終的にドライバーの処遇改善につながるのかが最大の焦点」とコメントした。「荷主に対する是正指導・勧告・公表の強化」については、荷主の意識改革を促し、より対等な取引関係の構築に寄与する可能性への期待が示された。最後に、「無許可事業者(白トラ)への運送委託禁止強化」が、業界の健全化と公正な競争環境の実現に不可欠であるとの認識が共有された。

▲フジトランスポートの松岡弘晃社長

番組後半では、フジホールディングスの松岡弘晃社長がゲストとして電話出演。運送事業者の立場から、新法成立への率直な思いを語った。松岡社長は「成立して良かったというのが第一印象。業界が抱える問題に対し、国が本腰を入れてくれた」と評価しつつも、「法律ができただけでは何も変わらない。実運送を担う我々自身が、これをどう活用し、行動していくかが問われる」と、事業者の主体的な取り組みの重要性を強調した。

「適正原価」に基づく運賃収受に関しては、「そもそも我々運送事業者が、自社の適正な原価を正確に把握し、それを荷主に明確に提示できなければ、交渉の土俵にも上がれない。その上で、この法律を盾に、粘り強く交渉していく必要がある」と述べ、経営努力による原価管理の徹底と交渉力の強化が不可欠との認識を示した。再委託制限については、「お客様への影響や、協力会社との関係性など、実務面での課題は多い。しかし、これを機に、透明性の高い取引関係を構築し、真に輸送の価値を評価してもらえる環境を作りたい」と前向きな姿勢を見せた。

赤澤編集長は、新法の多くが公布から最大3年以内に段階的に施行されることに触れ、「施行までの間に、パブリックコメントなどを通じて、事業者の『本当の声』を行政に届けることが重要。LOGISTICS TODAYとしても、引き続きこの問題について多角的に報じ、議論の場を提供していきたい」と締めくくった。刈屋編集委員も、「法律はあくまでルールブック。実際にどう運用され、業界がどう変わっていくのか、あるいは変えていくのか。そのプロセスをしっかりと取材し、読者の皆様に伝えていくのが我々の使命」と語った。

本緊急特番の全編は、LOGISTICS TODAYの公式YouTubeチャンネルおよびポッドキャストでアーカイブ配信されており、各氏の詳細な解説や議論の模様を確認できる。

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