ロジスティクス流通経済研究所(東京都千代田区)は8日、宮崎県で実施した農産物と日用雑貨の共同物流に関する実証実験の結果を発表した。同研究所は2月2日から8日まで、農産物の出荷情報と加工食品・日用雑貨の物流情報を連携させ、産業の垣根を越えた共同物流の有効性と課題を検証した。
同研究所は「研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム」(BRIDGE)の一環として、スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」(ウカビス)とリテール物流・商流基盤を連携させ、業界横断型の共同物流システムを開発・検証した。さらに、加工食品や日用雑貨の東京から九州への主要物流ルートが福岡経由に限定されている点を踏まえ、災害時の物資輸送リスクの回避策として、宮崎港と神戸港をフェリーで結ぶ新ルートやえびの市の物流拠点活用も検討した。

▲「農産物と加工食品・日用品等の共同物流の実現」のためのシステム連携(出所:流通経済研究所)
実証実験では、農産物輸送の往路として宮崎港-神戸港-東京ルート、日用雑貨輸送の復路として東京-大阪-神戸港-宮崎港-えびの市(さらに福岡・鹿児島)ルートを設定した。これにより、農産物の戻り便で頻発する空車問題を解消し、復路に日用雑貨を積載することで輸送効率の向上を図った。フェリーを活用した複線化により、陸路福岡経由の単一ルートに依存しない物流体制の実現を目指した。
同社によると、ukabisとリテール物流・商流基盤の連携により、これまで不安定だった戻り便への日用雑貨の積載が安定化し、帰り荷の確保と積み込み拠点の固定によって、実車率と運行スケジュールの安定化が期待できるという。フェリー導入によるCO2排出量は、現状の4.22トンから2.93トンへ31%削減できた。また、ドライバーの拘束日数も通常の5-6日から4日に短縮され、22-33%の負担軽減が実現した。さらに、農産物輸送ではばら積みを採用し、復路の雑貨品はパレット輸送としたことで、荷役時間が3時間から30分へと短縮し、労働負担が83%軽減した。今後、青果物もパレット輸送へ切り替えることで、さらなる効率化が見込める。

▲実証実験の行程(現在と実証の比較)(出所:流通経済研究所)
従来、東京から九州への輸送は福岡経由の陸路に偏っていたが、今回の実験で宮崎港経由でえびの市の物流拠点を活用する新ルートを実用化した。これにより、BCP強化と物流ルートの多元化が進み、災害時のリスク分散や異業種共同輸送によるネットワーク強化の見通しが立った。
ただし、青果物のパレット化については積載率低下による効率やコスト面での課題が残る。これらの課題を克服するには、ダブル連結トラックなどによる長距離幹線輸送の効率化、ラストワンマイル配送活用の柔軟なサービス展開、そして幹線輸送と地域配送の最適な切り替え地点の調整が重要となる。今後は行政や企業、業界の垣根を越えたさらなる情報共有が求められる。
同社は今回の実証結果を受け、季節や地域による変動性の高い農産物と安定供給可能な加工食品・日用雑貨の連携、および複数荷主企業の情報共有強化を通じて、共同物流や往復輸送の機会拡大と国内物流全体の最適化を進める。平時から九州地域のネットワーク多元化と安定化を図り、災害時にも対応可能なBCP体制構築を目指すとともに、鉄道やフェリーを活用したモーダルシフトと本格的なCO2削減にも着手するとしている。
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