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夏休みは「物流映画」で気分転換と休息を

2025年8月13日 (水)

ロジスティクスお盆休みを迎え、家族サービスで普段より忙しいという人も多いかもしれない。その一方、体の休息こそが努めとばかり、家から一歩も出ないという過ごし方を選択した人もいるのではないか。

かくいう私も、できれば一歩も外出せず、月額料を支払っている配信サービスを有効利用するつもりだ。異常な暑さも、格好の言い訳となる。

ついに誕生した物流映画「ラストマイル」(2024年)

昨年は、物流業界を舞台にした日本映画「ラストマイル」が話題を集めた。巨大物流センターを中心に、EC(電子商取引)事業者や物流事業、宅配ドライバーなどそれぞれの立場から、連続爆破事件に対峙するサスペンスストーリーが展開する。優れた脚本で、登場する企業人それぞれの奮闘を純粋に楽しめるはもちろんだが、物流に携わる人たちにとっては別の楽しみ方もできたのではないか。物語の鍵を握るそれぞれの企業のモチーフとなった会社を想像したり、「あ、これトラスコ中山のセンターだ」「AutoStoreが出演してる」など、業界人ならではの見方もできたのではないだろうか。

また、これまで映画における「倉庫」といえば、“敵のアジト””違法取引の現場“”凄惨な拷問現場”などなどネガティブな印象が強かっただけに、ありのままの現代の施設像が広まった功績も大きい。「第48回日本アカデミー賞」では最優秀脚本賞はじめ10部門を獲得するなど、映画界から高い評価を得たのも喜ばしいことだ。

筆者の拙い知識では、これだけ真正面から物流業界を題材に据えた映画作品は無かったはずだ。主人公が、物流センターのセンター長とマネージャーという組み合わせは今後も出てこないだろう。

それでも、この休日を利用して、物流に関係する映画に関心を持ったという読者に、極めて私的な“物流必見映画”を、いくつか紹介してみたい。せっかくの休みに仕事を思い起こさせるような映画の紹介など大きなお世話だ、と怒られるかもしれないが、その点はあくまでも、個人的にこじつけた“物流映画”に過ぎないので、ご安心いただきたい。

「キャスト・アウェイ」(2000年)

ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演。「ラストマイル」の主人公は物流センターの管理者だが、トム・ハンクス演じる「キャスト・アウェイ」の主人公は、フェデラル・エクスプレス(FedEx)のシステムエンジニアという設定だ。物流領域との親和性ではいい勝負ではないか。

FedExの配送効率化のために婚約者と過ごす時間も削って世界を飛び回る主人公。しかし飛行機墜落事故に巻き込まれ、たった1人で漂着した孤島でのサバイバル生活に挑むという物語である。映画の大半は、絶望的な状況下での悪戦苦闘の描写だが、1分1秒を争う配送、時間に拘った主人公が、無人島生活の中で失ったものが「時間」だけでなかったという皮肉も効いている。それでも、主人公が新たな希望を見出すきっかけは、1つの荷物を届けることだったというあたり、立派な物流映画だといえるのではないか。

なお、トム・ハンクスは、ソマリア海賊による貨物船人質事件の実話をドラマ化した米映画「キャプテン・フィリップス」(2013年)でも、主人公であるマースク所属の船長を演じており、もはや“物流俳優”の称号を与えたい。

「イル・ポスティーノ」(1994年)

人の思いを込めた葉書や手紙を届けるということは、それだけでドラマになり得る職務といえる。郵便配達人を主人公とした映画は数多く、名作揃いだ。1999年の中国映画「山の郵便配達」も、郵便配達人としての誇りと家族の絆を描いた物流映画に相応しい作品だが、ここでは、イタリア・フランス映画「イル・ポスティーノ」を取り上げたい。島の郵便配達人となった純朴な青年が、祖国から追放されたチリの有名詩人へ郵便を届けながら成長していく様子が、南イタリアの鮮やかな風景、音楽とともに描かれる。日常業務の疲れが溜まっているという人に見てもらいたい映画だ。

ここで豆知識を1つ。印象的なタイトルで知られ、これまで4回にわたって映画化されている「郵便配達は二度ベルを鳴らす」には、郵便配達人は登場しない。

「激突!」(1971年)、「恐怖の報酬」(1953、1977、2024年)

映画でトラックが活躍することで、その運転手になりたいという人が増えれば、物流業界に貢献する立派な物流映画と定義したい。ただ、昨今の若者が「トラック野郎」シリーズに影響を受けて運転手になりたいと思うような事態は、あまり期待できないだろう。また、「ワイルドスピード」シリーズを見てトラック運転手になりたいというような人には、申し訳ないがあまりこの業界に来てほしくないというのが正直なところだ。

残念ながらトラックやトレーラーも、カーアクションではその巨体で周囲の車を薙ぎ倒すなど、やはり“悪役”の印象が強い。スティーヴン・スピルバーグ監督「激突!」は、ただただひたすら巨大なトレーラーに追いかけ回され命を狙われる物語。現代の理不尽な煽り運転の恐怖も想起させられる。当時無名のスピルバーグ監督の不気味な演出は、トレーラーの印象を悪くするのにどれだけ貢献したことだろう。反対に、「コンボイ」(1978年)という作品では、大型トラック運転手たちを悪徳警官に立ち向かう反権力のヒーローに位置付け、公開当時盛んに宣伝していたのをぼんやりと記憶している。巨大なトラックが子どもたちにとって強さの象徴となるのは、「トランスフォーマー」でも明らかだ。ただし少年時代の筆者にとっては大味な映画というおぼろげな印象しか残っておらず、トラックドライバーへの憧れにはつながらなかったようだ。

「恐怖の報酬」は、”トラック輸送”がテーマの手に汗握るサスペンス映画である。筆者が見たのは1977年のリメイク版だが、昨年もまた新たなリメイク版が配信されているほどの人気コンテンツといえる。映画としては面白いが、残念ながらこれもトラック運転手になりたい人が増えるような内容ではない。この映画の面白さは、少しの衝撃でも爆発するニトログリセリンをトラックで運搬するという手に汗握る緊張感、仕事から逃げ出したくなるようなピンチの連続にある。泥道、豪雨、今にも落ちそうな吊り橋など、次々に試練が襲いかかるという展開に、日頃から安全輸送を心がける運転手たちはどんな感想を抱くことだろう。

以上、「ラストマイル」の好評をきっかけに、お盆休みに「物流」に関係した映画で楽しむことはできないかと、思いつくまま提案してみた。とはいえ、物流現場の最前線では、夏休みなどないという人も多いだろう。だからこそ、休めるときにはしっかりと回復することが重要である。“頑張って気分転換する”ことで万全の体調を整えることも、物流に携わるものの大事な努めだ。

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