調査・データドイツの経営コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーは5日、アジアのサプライチェーンの現状や課題を解説したレポート「アジアサプライチェーンの再構築」を公表した。米中対立を契機に潮流が変わりつつあるアジア経済圏について、国別に現状や課題を分析し、展望を示した。
レポートでは、新型コロナ禍以降、北米は製造業を国内に回帰させ、ヨーロッパは再工業化を目指し、アジアは世界の工場としての役割を超えて、域内でのバリューチェーンと産業エコシステムを構築しようとしていると指摘。北米や欧州が国内回帰と空洞化対策に注力しているのに対し、アジアは地域内における統合や、経済間の役割再定義、国境を越えたシナジーの深化が進んでいるとした。こうした情勢を踏まえたうえで、各国の対応状況を分析している。
中国については、アジアのサプライチェーンハブとなっているものの、地位は急速に変化してきた。これまでは中堅製造業が経済のけん引役だったが、政府は上流産業の再編を進め、化学や金属、基礎産業といった過剰生産能力に悩まされてきたセクターの統合を進めている。労働集約型生産が東南アジアにシフトするなか、中国の現状は移行期にあり、産業界はバリューチェーンの上流へ、自国のエコシステムは世界的な競争力獲得に向かっているとした。
日本は政策的な支援も受けながら、先端技術や素材、精密機器などのハイエンド製造業において世界をリードしている。自動車や産業機械は経済の成長エンジンとなっているが、半導体やバイオテクノロジーはさらなる強化が求められている。
国際競争力維持のため、日本企業はグローバル・サウスへの進出とチャイナプラスワン戦略を進める一方、政府は半導体などの戦略産業に投資を集中させながら、幅広い貿易連携を推進してきた。また、自然災害の頻発やサイバー攻撃の深刻化、地政学的な緊張などで、企業はリスク管理の強化と、より強靭なサプライチェーンの構築を迫られている。
このほか、韓国やインドネシア、ベトナム、フィリピンの7か国の現状についても分析している。
アジア全体については、中国の広大な産業インフラや、台湾の半導体技術の優位性、日本の先端素材と精密機器、韓国のバッテリーとコア部品、東南アジアの豊富な資源やコスト競争力のある製造業など、それぞれが優位性を有しているとしたうえで、「アジアの経済圏にとって、いかに規模や技術、資源の統合を深め、強靭なネットワークへと転換していくかが重要になる」としている。
同社はレポートについて「アジア各国の産業構造とサプライチェーンの動向を分析するとともに、自然災害、国際紛争、サイバーセキュリティー、パンデミックなどの多様なリスクがもたらす脅威と、リスクマネジメントのあり方を解説した。サプライチェーンをどう強化すればよいのか、適切な経営判断に不可欠な視点と手法が学べる」としている。
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