イベントLOGISTICS TODAYとX Mile(東京都新宿区)は8日、「物流DX未来会議2025」を都内で開催した。パネルディスカッション「荷主企業・物流企業それぞれの立場から見た、物流DX推進の現状と課題への対策」では、荷主、物流、ソリューション提供のキーマンが登壇。PwCコンサルティングの葛西徹弥氏をモデレーターに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質と今後の展望について議論を交わした。

▲PwCコンサルティングの葛西徹弥氏
ディスカッションでは、多くの企業のDXが部分的な業務効率化、すなわち「改善」のレベルにとどまっている現状が課題として共有された。ソフトバンクロボティクス(港区)の武田一哉氏は、「既存プロセスを見直す『改革』に至らず、局所的なROI(投資利益率)の議論に終始して『費用対効果が合わない』と本格導入が進まないケースが多い」と指摘した。物流DXは単なるデジタル化ではなく、サプライチェーン全体の「変革」を目指すものだという認識が示された。

▲ソフトバンクロボティクスの武田一哉氏
各社の立場からも課題が挙がった。荷主のキリンビール林達也氏は、Excel(エクセル)中心だった需給計画をアルゴリズムで最適化する「MJプロジェクト」を進める一方、「長年、自社物流で完結していたため、世の中の先進的な流れから遅れがちだった」と過去を振り返る。

▲キリンビールの林達也氏
物流企業ロジスティードの櫻田崇治氏は、「顧客ごとの個別最適化が多く、全社横断でのデータ活用が進んでいない。特に協力会社への依存度が高い輸送領域のデータ化が今後の課題だ」と述べた。

▲ロジスティードの櫻田崇治氏
議論の核心は、物流を「コスト」と捉えるか、「付加価値を生むサービス」と捉えるかの意識改革の必要性に及んだ。登壇者らは、物流を単なる削減対象と見なす限り、DXへの前向きな投資は進みにくいと強調。顧客体験の向上や売上貢献につながる「サービス」と位置付けることで、初めて戦略的な投資判断が可能になるとの見解で一致した。今後の物流組織は、従来の「縁の下の力持ち」という受け身の姿勢から脱却し、サプライチェーン全体を俯瞰する視点で、経営に近い立場で全体の「改革」をリードする存在になる必要があると結論付けた。
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