イベントX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)と本誌は8日、「物流DX未来会議2025」を都内で開催した。セッション「物流DXはCLOと4PLで加速する」では、APT(アプト、千葉市美浜区)の栗原勇人氏と、シグマクシスの池田祐一郎氏が登壇。APTは、自社で物流センターを建設・運営する新事業「Σ」(シグマ)を発表し、物流業界の変革に主体的に乗り出す覚悟を示した。
シグマクシスの池田氏は、物流業界が大きな変革期にあると指摘する。2024年の物流関連2法の改正を機に、時代は「荷主主導」へと転換しつつあるという。一方で、ドライバー不足とEC(電子商取引)市場の拡大で需給バランスは崩れ、2030年には輸送能力の3割が不足するとの予測を示す。池田氏はこの危機的状況を乗り越えるキープレイヤーとして、CLO(物流統括管理者)と、物流戦略の実行を担う「4PL」の存在を強調した。CLOは、CEO直下の役員クラスとして経営指標に連動した物流戦略を主導する役割だ。4PLは、従来の3PLをさらに上位の概念で統括し、荷主の物流機能の一部を代替することで物流全体の最適化を推進する。池田氏は「今後は不動産デベロッパーや商社など、異業種からの参入も想定される」と展望を述べた。

▲シグマクシスの池田祐一郎氏
このような潮流を受け、創業40年の「ロジテック」企業であるAPTは、新たな一手を示す。登壇した栗原氏は、既存のマテハン設備を更新・最適化する「Re:DX」と、新設倉庫の自動化を支援する「New DX」を事業の核としてきたと説明する。同社はこれまでの知見を発展させ、自社で完全自動化の物流センターを建設・運営し、オペレーションまで包括的に提供する新事業「Σ」(シグマ)を推進すると発表した。新事業では、将棋AI(人工知能)ソフト開発を手がけるヒーローズと提携し、倉庫内の各種システムを統合管理するAIシステムを開発。自社開発のロボットと海外の優れた機器を組み合わせ、ベンダーフリーで最適な物流センターを構築する。栗原氏は「主に中規模の顧客をターゲットとし、新サービスによって物流コストの2割削減を目指す」と目標を掲げた。

▲APTの栗原勇人氏
新事業への移行は、単なる事業拡大ではない。栗原氏は「弊社が自分たちでリスクを取って投資して物流をしない限りは、お客様と同じ気持ちになれない」と語り、業界変革への強いコミットメントを表明した。顧客の投資判断を待つのではなく、自らが事業主体となって課題解決を主導する「覚悟」を示した。コンサルティングの立場で変革を説く池田氏と、実業家としてリスクを負う栗原氏。両氏は立ち位置は違えど「物流業界を変革したいという共通の強い思いがある」と語り、今後の連携に意欲を見せセッションを締めくくった。
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