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セミナーと最終交流会に熱気、業界の未来と「恩返し」へのバトンが交錯した一日

トラボックス25周年、吉岡会長「卒業」に500人集う

2025年11月9日 (日)

イベント2025年11月8日、日本の物流ITの黎明期を切り拓いたトラボックス(東京都渋谷区)が、設立25周年という大きな節目を迎えた。この日、東京・大手町と内幸町の2会場では、業界の未来を議論する記念セミナーと、歴史に幕を下ろす最後のトラボックス交流会が連続して開催され、延べ500人を超える運送事業者や業界関係者が集結。業界の変革をリードしてきた同社の25周年を祝うと同時に、この日をもって会長職を退任する“トラボックスの顔”吉岡泰一郎氏の新たな門出を見守る、熱気に満ちた一日となった。

▲セミナー冒頭に挨拶したトラボックスの吉岡泰一郎会長

「運送業の未来」を激論、国交省鶴田局長「原価割れ事業者は退出を」

大手町三井ホールで開かれた記念セミナーは2部構成で行われた。第1部「組織と事業の作り方」では、共催者であるドライバーニューディールアソシエーション(D.N.A.)の江川哲生理事長(ライフサポート・エガワCEO)が登壇。「トラックドライバーを子供たちの憧れの職業にする」という団体の理念を改めて示し、続いてパラドックス(東京都渋谷区)の鈴木祐介執行役員がブランディングの重要性を訴えた。

▲ドライバーニューディールアソシエーション理事長の江川哲生氏

続く第2部「トラック運送業界の未来」では、業界のトップランナーが壇上にそろった。セイノーホールディングスの田口義隆社長、フジトランスポート(奈良市)の松岡弘晃社長、そして国土交通省の鶴田浩久総合政策局長が登壇し、トラボックスの吉岡会長とLOGISTICS TODAYの赤澤裕介社長兼編集長がモデレーターを務めた。

議論はM&A戦略からトラック新法、10年後の経営戦略まで、核心を突くテーマで白熱。特にトラック新法について問われた鶴田局長は、「一定期間をトータルして、ちゃんとした人件費も払えないような事業は続けていただくわけにいかない」「合理的な価格形成を阻害する、あまりにもあり得ない低い価格で仕事を取る人には、もう出て行っていただくしかない」と述べ、新法が業界の構造改革に向けた強い意志の表れであることを明確にした。

また、セイノー田口氏が「知恵を集めること」と「未来からの逆算」によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を説けば、フジトラ松岡氏は「整備や燃料の内製化」と「SNS活用による採用戦略」という徹底した現場主義の経営哲学を披露。日本の物流をけん引するリーダーたちの本音がぶつかり合う、濃密な90分となった。

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500人が「卒業」に乾杯、89回目にして最後の交流会

セミナーの熱気が冷めやらぬまま、会場を帝国ホテルに移して開催された「東京交流会 兼 創業25周年式典」。89回目にして最終回と銘打たれたこの交流会には、全国から500人のトラック運送事業関係者が駆けつけ、会場は立錐の余地もないほどの熱気に包まれた。

▲トラボックスの皆川拓也社長

トラボックスの皆川拓也社長は開会の挨拶で、「25年間トラボックスを率いてきた会長(吉岡氏)の退任の日でもある。ビジョナルグループの一員として我々も変わらなければならないが、業界と皆様のためにサービスを作るという思いは変わらない」と、感謝と決意を述べた。

乾杯の音頭に立った国交省の鶴田局長は、2日間のセミナーにも触れ、「平たく申し上げますと、稼げる産業にして、担い手のドライバーがこの産業で働きたいと思えるようにしていかなければならない」と激励。そして、「吉岡さんの輝く未来にもお祈りをして」と、500人のグラスと共に高らかに乾杯の発声を行った。

▲乾杯の発声を行った国交省の鶴田総合政策局長(右から2人目)

宴も酣(たけなわ)、イベントの最後には吉岡会長が登壇。「私は卒業しますが、トラボックスも運送業界も明日も明後日も続きます。交換した名刺をぜひ生かして、これからのご商売に続けてほしい」と参加者にエールを送った。

そして、25年間の感謝を述べた後、「一人だけお礼を言いたい人がいる」と、壇上にトラボックスの創業者の一人である藤倉運輸(東京都足立区)の藤倉泰徳社長を呼び込んだ。「この人がいなかったら、私が銀行を辞めてトラボックスに入ることもなかったし、皆様と会うこともなかった。お兄ちゃんのような存在です」と吉岡氏が紹介すると、藤倉氏は声を詰まらせながら「25年前、よっちゃん(吉岡氏)がいなかったらトラボックスは2年で潰れていたと思う。頑張ってもらったおかげでこの光景がある。本当にありがとうございました」と応え、会場は万雷の拍手に包まれた。

▲(右)トラボックスの創業メンバーである藤倉運輸の藤倉泰徳社長

吉岡氏は新会社「ワンロジ」の設立についても改めて報告。「元々の銀行で培ったものと、M&Aで会社を売った経験を生かし、中小零細の皆様を助けることで業界に恩返しをしたい」と次なる挑戦への意欲を語った。デジタル(求荷求車)とアナログ(交流会)を両輪に、25年間を駆け抜けたパイオニアの「卒業」と、次の世代へのバトンタッチ、そして自らの「第二の創業」。トラボックス25周年という節目の一日は、日本の物流業界の過去と未来が凝縮された、象徴的な一日となった。(特別取材班/鶴岡、林、福崎)

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▲セミナー会場の外には物流展示会が設けられ、登壇者を含む多くの参加者が新しいテクノロジーに触れた

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