調査・データ矢野経済研究所(東京都中野区)は11日、ことし1年間に世界中で廃棄・回収される車載用リチウムイオン電池(LIB)の重量は53万2058トンと見込まれるとするLIBのリユース・リサイクル世界市場に関するレポートを公表した。電気自動車(EV)の普及が進む中国が最も多く、全体の9割近くを占めている。
LIB市場は車載用を中心に拡大が続いており、今後増加が見込まれる廃棄LIBに備え、リユース・リサイクルの仕組みの構築も進められている。使用済みのLIBは焼却や破砕などを経て、リチウムやニッケル、コバルトなどが含まれる黒い粉末(ブラックマス)にされ、これがリサイクル原料となる。
レポートによると、2025年の車載用LIBの世界廃棄・回収量は53万トンを超えるが、このうち中国が88.2%を占める。バッテリー電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)が他国に先行して普及したことで、LIB廃棄・回収量も増加している。
また、ポータブル電源など車載用以外の用途のものを含めたLIBのリユース市場規模は1万5159メガワット時とみられ、中国が9割以上を占める。廃棄されるLIBから作られるブラックマス量は39万7024トンと推計され、中国は79.4%を占める。
各国の回収の取り組みを見ると、最も回収量が多い中国では、政府主導で構築されたトレーサビリティーシステムの運用が進められているが、当初想定された回収量には至っていない。廃棄LIBの多くが非正規ルートに流れているとみられ、リサイクル工場の稼働率が低下している。
日本でも想定されていた廃棄・回収量を大幅に下回る状況が続いているが、要因の一つとして、中古EVの海外輸出が増加傾向にあることが挙げられる。欧州では「Missing Vehicle」と呼ばれる行方不明の廃車の存在がLIB回収の課題となっており、トレーサビリティーや監視を強化する動きがある。
LIBリサイクル市場は23年にBEV市場の拡大や炭酸リチウム相場の上昇を背景に活況を呈したが、BEV市場の成長率が停滞し、炭酸リチウム価格も調整局面に入ったことで、リサイクル業界は事業モデルの再構築が求められる状況となっている。
特に中国では環境対策を含む高コストな生産ラインを持つ正規企業(ホワイトリスト企業)が、ブラックマスなどリサイクル原料の調達に苦慮しており、日本や韓国からのリサイクル原料調達を増やそうとする動きがみられる。このため、日韓ではリサイクル原料が中国に流れる構図となっている。
このような状況から、同社は「今後は自国内での資源循環の取り組みが進み、リサイクルビジネスも委託加工事業モデルへの移行が進む可能性もある」と指摘。「リサイクル事業者にとっては、加工技術の高度化・差別化が取り組むべきテーマの一つになり、環境対策などを含めたデューデリジェンスへの対応の重要性も高まる」としている。
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