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国際海運のGHG新規制を定量的評価、東大など

2025年11月19日 (水)

ロジスティクス東京大学と海上技術安全研究所、運輸総合研究所は18日、国際海運での温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とした新規制「GHG Fuel Intensity 」(GFI)規則の影響を定量的に評価する計算モデルを開発したと発表した。提案段階にあるGFIの影響、制度の柔軟性の有無による違いを定量的に評価した初めての研究成果で、GFIの導入は短期的に規制順守コストを低減する可能性があるとした。

▲シミュレーションを用いた国際海運脱炭素化規制の影響評価(出所:東京大学)

国際海事機関(IMO)で議論が進むGFI規則は、燃料のライフサイクル全体でGHG排出量を規制する仕組みで、従来の燃費規制や運航効率規制に比べ、直接的にクリーンな燃料の普及を促す点で効果が期待されている。しかし、規制をどのように設計するかが大きな論点となっている。

研究では、制度の順守に一定の柔軟性を持たせる「Pooling」と呼ばれる仕組みに着目し、国際海運の将来に与える影響を定量的に評価した。Poolingとは、船舶ごとに規制値を達成するのではなく、複数船をグループ化して、全体の平均値で規制値を満たすことを許容する制度で、柔軟性措置の1つとして検討が進められている。

定量的評価を行うために、船の建造や燃料選択、コスト計算を統合的に計算できるシミュレーションモデルを構築。そのうえで、従来の輸送需要や燃料価格の不確実性を考慮するため、モンテカルロ・シミュレーションを行い、制度への影響を分析した。

その結果、GFIにPoolingを導入すると、個々の船舶単位ではなく、船隊全体として柔軟に燃料を選択できるようになるため、短期的には規制を順守するためのコストを低減できる可能性があることが分かった。また、将来の不確実性に起因するコストのばらつきも抑制され、短期的な規制対応の安定性向上にも寄与することが確認できた。

しかし、長期的にみるとPoolingによって従来の燃料船の退場が遅れ、最終的にバイオディーゼルなどの利用が不可欠となり、バイオ燃料の価格が高価になった場合は、コストが逆に上昇する可能性があることも示された。

このため、東大などは「制度に柔軟性を持たせると同時に、従来船舶の入れ替えを促進する仕組みを持たせることが重要だ」と指摘している。

研究の意義について東大などは「GFIの影響とその制度の柔軟性の有無による違いを定量的に評価した初めての成果であり、国際海運の規制設計に対して重要な示唆を与える。IMOでの国際的な規則の詳細な制度設計や規制値などの議論に寄与することが期待される」としている。

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