ロジスティクス本誌が3日付で「軽油300円超も」と報じたシナリオ※1が、わずか1週間で現実の射程に入った。9日、国際指標のブレント原油は一時119.50ドル、WTI(ウエストテキサスインターミディエイト)原油も119.43ドルまで急騰し、いずれも100ドルを大幅に突破した。危機前の原油65ドル時点で1リットルあたり145円前後だった軽油小売価格は、現在の原油水準が続けば260円台まで上昇する計算で、危機前の8割増。一時高値の119ドルベースなら288円と、ほぼ倍になる。(編集長・赤澤裕介)
国内の軽油小売価格は原油市況から1-2週間遅れで反映されるため、現時点ではまだ急騰していない。だが来週以降、運送会社の燃料コストが一気に跳ね上がる可能性が高い。
本誌のシミュレーション(為替158円/ドル前提)では、9日の終値圏(原油108ドル)で軽油263円、一時高値(119ドル)で288円、供給途絶が長期化して140ドルに達した場合は326円となる。7日付で報じた150ドルシナリオ※2(軽油350-375円)も、もはや絵空事ではなくなった。

▲原油急騰による軽油価格シミュレーション(※為替158円/ドル前提。精製マージン連動係数1.1、軽油引取税15.0円(暫定税率は補助金相殺)、石油石炭税2.8円、消費税10%で算出。軽油引取税には消費税が非課税、クリックで拡大)
※1「軽油300円超も、封鎖長期化の衝撃」
※2「軽油375円のシナリオも、全規模で赤字転落の恐れ」
サーチャージ交渉、価格変動に追いつけるか
運送会社にとって最も深刻なのは、燃料サーチャージの改定が価格変動に追いつかないリスクだ。全日本トラック協会の標準的な燃料サーチャージは、軽油価格の上昇幅に応じて運賃に上乗せする仕組みだが、算定の基準期間と実勢価格には時間差がある。今回のように数日で原油が30%急騰する局面では、サーチャージの段階が実態より1-2段低い状態が続き、その差額が運送会社の持ち出しになる。
2024年4月施行の物流関連2法で標準的運賃の告示制度が強化され、燃料費の転嫁は制度上やりやすくなった。しかし原油が短期間で倍近くに跳ね上がる事態は制度設計の想定を超えている。荷主との交渉を即座に始められるかどうかが、中小運送会社の資金繰りを左右する。
海上輸送も同様の構図だ。日本船主協会は1日からホルムズ海峡の運航を停止しており、シンガポール市場のバンカー価格も急騰している。コンテナ船、バルク船ともに運賃への転嫁が避けられない情勢で、荷主が負担するトータル物流コストは陸海空すべてで上昇する。航空貨物では、シンガポールのジェット燃料価格が4日に1バレル=231ドルの過去最高を記録しており、航空会社の燃油サーチャージは4-6月期に大幅な引き上げが確実視される。
さらに懸念されるのは、価格だけでなく「量」のリスクが加わり始めたことだ。中国は5日、国家発展改革委員会(NDRC)がガソリン、軽油、ケロシンの輸出停止を精製大手に指示した。タイも6日に首相令で石油製品の輸出を禁止。インドのマンガロール製油所も燃料輸出を抑制している。アジア域内で精製品の供給が絞られれば、日本の元売りが軽油を調達しようとしても「買い負け」するリスクが出てくる。
政府は石油備蓄基地に放出準備を指示し、G7も戦略備蓄の共同放出(3-4億バレル規模)を協議中だ。ただし備蓄放出は原油の話であり、精製品(軽油・ジェット燃料)の域内供給を直接増やすものではない。原油を放出しても、精製して末端に届くまでにはさらに時間がかかる。
運送会社が今すぐ取り組むべきことは明確だ。1つは荷主への燃料サーチャージ交渉の即時開始。原油100ドル超は「想定外」ではなく「現実」になった以上、交渉の前提が変わったことを荷主と共有する必要がある。2つ目は、自社の燃料調達契約の条件確認。長期契約でヘッジが効いている事業者とスポット調達に依存する事業者では、今後数週間の損益が大きく分かれる。ホルムズ危機の行方とともに、運送経営の耐久力が試される局面に入った。
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