
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「ウズベキスタンで特定技能ドライバー育成」(11月10日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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ロジスティクスProud Partners(プラウドパートナーズ、東京都新宿区)は、ウズベキスタン政府と連携し、特定技能制度を活用したトラックドライバー育成プロジェクトを本格始動した。第1弾として、イズミ物流(江東区)向けに300人のドライバーを現地で育成し、2026年以降の来日を目指す。
これまで飲食業や建設業での外国人採用支援を手がけてきた同社が、なぜ今、物流業界のドライバー育成に注力し、通常よりも長い8か月という期間をかけるのか。取材に応じた同社取締役の岡村アルベルト氏は、その理由を業務の特殊性と安全への責任にあると語る。

▲プラウドパートナーズの岡村アルベルト取締役
同社はフィリピンでの外食業向け人材育成などで実績を重ねてきたが、今回のドライバー派遣にはこれまでの業種とは決定的に異なる課題がある。外食であれば店長やリーダーが、建設であれば親方がすぐそばにおり、チームで仕事をするため指示を仰ぎやすい。しかし、トラックドライバーは唯一、特定技能の中で一人で業務を完結する時間が圧倒的に長い職種だ。
一人でハンドルを握り、トラブルシューティングまでこなさなければならない環境では、万が一の事故が起きればその影響は甚大だ。企業にとっても社会にとっても取り返しがつかない事態を招きかねないため、単に在留資格の取得要件を満たすための試験対策や、簡易的な免許の切り替え手続きだけでは不十分だと岡村氏は警鐘を鳴らす。このリスクを極限まで減らすために同社が導入したのが、徹底した事前教育だ。ウズベキスタン政府の内閣直属移民庁から職業訓練センターや車両の提供を受けることで、経費を削減でき土地や建物への固定費を圧縮。浮いたコストを教育の質に転嫁し、通常よりも長い8か月間の研修期間を設けることで、質の高い人材育成を実現する。

▲ウズベキスタンでの募集説明会(出所:プラウドパートナーズ)
研修の後半では、提携先であるイズミ物流の安全基準やノウハウを詰め込んだ、300ページにも及ぶ独自マニュアルを使用する。日本語教育の例文一つとっても、「私はペンを持っています」ではなく「私はトラックを運転しています」といった、現場で即座に使える言葉を徹底して教え込む。日本の交通ルールや車両感覚に加え、企業ごとの明文化されていないルールまで言語化して教育することで、来日直後から安全運転を遂行できるプロフェッショナルを育てる。
育成地として選ばれたウズベキスタンは、国民の多くがマイカーを所有する車社会であり、すでに欧州へ多数のドライバーを輩出している実績がある。岡村氏は今後の展望について、ウズベキスタン以外の2か国とも協議を進めており、カントリーリスクを分散させると語る。
将来的には、日本で技術を磨いた人材が帰国し、現地に進出した日本企業で活躍する循環型モデルの構築も視野に入れる。単なる人手不足の解消にとどまらず、国境を越えた教育で物流の根幹である安全を支える新たな挑戦が始まった。(菊地靖)
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