調査・データ厚生労働省がこのほど公表した「働き方改革関連法施行後5年の総点検」では、労働時間規制の定着が進む一方、運輸・郵便業では人材確保、健康確保、収入維持の間で現場の思惑がなお揺れている実態が浮かんだ。調査は労働者3000人へのアンケートに加え、企業327社、労働者97人へのヒアリングで構成され、このうち運輸・郵便業は企業72社、労働者21人を対象とした。2024年4月から自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されたことを踏まえ、同業種は建設業と並ぶ重点調査対象となった。
労働者アンケート全体では、労働時間を「このままでよい」とした回答が59.5%で最多、「減らしたい」「やや減らしたい」の合計は30.0%、「増やしたい」「やや増やしたい」の合計は10.5%だった。これに対し、運輸・郵便業では「減らしたい」が13.4%、「やや減らしたい」が16.4%で、計29.8%と全体並みの水準だった。「このままでよい」は59.7%でほぼ全体平均と同水準。一方で「やや増やしたい」は6.7%、「増やしたい」は3.7%で、計10.4%となり、労働時間を増やして収入を確保したい層も一定数存在する構図が示された。
調査全体では、1か月あたりの時間外労働等として「0時間超20時間以下」が43.9%、「20時間超45時間以下」が27.4%で、93.0%が45時間以下を妥当と考えていた。上限規制を大きく超える長時間労働を肯定する回答は少数にとどまる。運輸・郵便業でも、法規制の緩和を一律に求める流れより、現実の受注や生活費との折り合いをどう付けるかが論点になっている。
企業ヒアリングでも、その傾向は鮮明だ。全327社のうち、現状の労働時間を「このままでよい」とした企業は201社、「減らしたい」は73社、「増やしたい」は53社だった。運輸・郵便業では、現状維持や削減を望む理由として、ドライバーの健康、安全、人材定着が繰り返し挙がった。自動車運転者の時間外労働が月100時間に及ぶ状況は健康面、安全面で厳しいとの認識や、無理をさせれば採用や定着が難しくなるとの声が目立つ。残業の少ない他業種とも人材を奪い合う局面に入り、労働時間の短さ自体が採用条件になっていることもうかがえる。
一方で、運輸・郵便業には「もっと働きたい」という声も残る。ヒアリングでは、繁忙期に「もっと稼ぐために働きたい」というドライバーの要望や、子育て費用、住宅ローン負担を背景に残業を望む声が紹介された。特に歩合制や日給月給に近い賃金構造では、労働時間の抑制がそのまま収入減に結び付きやすい。企業側からも、条件の良い仕事を断っている、戻り便のバラ積みなど改善基準告示に抵触しそうな業務を見送っているといった実情が示され、規制対応が営業機会の制約として表れている。
ただし、増やしたいという企業であっても、無制限の長時間労働を求めるトーンではない。上限規制の範囲内で柔軟性を求める声が中心で、現行基準を超えれば健康管理や交通事故増加への不安があるとの認識も併存する。つまり、運輸・郵便業の現場は「規制か緩和か」の単純な二項対立ではなく、収入確保と安全確保の綱引きの中で揺れている。
制度面の要望としては、荷待ち時間の解消が引き続き大きい。企業からは、運転時間を圧迫する荷待ちや荷受け時間の削減に向け、行政には荷主の理解促進や元請への指導強化を求める意見が出た。運送会社単体の努力では労働時間規制への対応に限界があり、発着荷主や利用運送を含む取引全体の見直しが不可欠という認識だ。これは24年問題以降の物流政策とも重なる論点で、労務規制の議論が取引慣行の是正なしには完結しないことを改めて示している。
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