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自動車運搬船の火災対策、28年指針策定へ

2026年3月16日 (月)

行政・団体国土交通省は16日、国際海事機関(IMO)で3月9日から13日に開催された第12回船舶設備小委員会(SSE 12)の結果を公表した。会合では、自動車運搬船やコンテナ船の火災安全対策、救命設備の基準見直しなどが審議され、日本提案をもとに自動車運搬船向けの包括的な火災安全対策ガイドラインを2028年を目標に策定することで合意した。電気自動車などリチウムイオン電池搭載車の海上輸送が増えるなか、32年予定のSOLAS条約改正を待たず、実務上の安全対策を前倒しで整備する方向が確認された格好だ。

今回の会合では、日本が自動車運搬船の包括的な火災安全対策ガイドラインの早期作成に加え、車両甲板での火災への迅速対応を目的としたビデオモニタリング・検知システムのガイドライン案などを提出した。審議の結果、これらを28年までに取りまとめることがアクションプランに追加された。背景には、EV(電気自動車)などに搭載されるリチウムイオン電池火災が熱暴走や再発火といった特徴を持ち、従来の自動車運搬船向け消火・監視体制だけでは十分に対応しきれないとの問題意識がある。完成車物流では自動車運搬船が国際輸送の基盤を担っており、火災リスク対策の前倒しは船社、荷主、自動車メーカーの実務にも影響しそうだ。

コンテナ船の火災安全対策も前進した。欧州の調査結果を踏まえ、これまで議論されてきた携帯型赤外線熱画像装置の搭載義務化や、ウォーターミストランスの設計・性能・試験・承認に関するガイドライン案、さらにそれに対応するSOLAS条約改正案が今回最終化された。これらは26年12月開催予定の海上安全委員会(MSC 112)に承認手続きのため上程される。近年はコンテナ船火災が一度発生すると鎮火に長時間を要し、貨物損害だけでなく港湾運用やサプライチェーンにも波及しやすい。火災の早期発見や局所消火能力の強化は、コンテナ輸送の安定性を高める施策として位置付けられる。一方、ハッチカバー下の防熱や固定式・移動式放水モニターに関する議論は継続審議となり、対策の全体像はなお流動的だ。

救命設備分野では、救命艇の換気基準見直しでも進展があった。部分閉囲型救命艇について、艇内のCO2濃度が時間平均5000ppm、最大3万ppmを超えないことを確認する試験要件の大枠で合意した。船舶事故時の退船後、艇内の換気不足で乗員が体調を崩した事例を踏まえた対応であり、非常時の避難環境改善を狙う。また、自己復原式または両面式救命いかだの搭載義務の適用範囲拡大に向けた検討も進み、新造の外航旅客船や外航貨物船への適用拡大に向けて、SOLAS条約やLSAコード改正案の詳細検討が続くことになった。

▲SSE 12の審議の様子(出所:国土交通省)

環境・新技術対応では、フッ素系物質を含む泡消火剤の使用規制を巡る議論も行われた。PFOSに続き、PFOAなどを含むPFAS全体を規制対象に広げるかについては、日本側がストックホルム条約で規制対象となっている物質に合わせるべきと主張したのに対し、欧州側はより広範囲の規制を求め、結論は次回以降に持ち越された。加えて、GHG削減に向けた代替燃料や新技術の導入に必要な安全規制の整備では、リチウムイオン電池などのバッテリーエネルギー貯蔵システムを使う船舶向けの暫定安全ガイドラインを、目標指向型かつ技術中立で策定する方針が確認された。船舶の脱炭素化が進むなかで、安全規制の整備も同時並行で求められている。

今回のSSE 12では、日本提案が自動車運搬船の火災対策で具体的な成果につながった。完成車やEVの国際輸送が拡大するなか、海上輸送の安全確保は物流の継続性そのものに直結する。火災対策の国際ルール整備はまだ途上だが、32年の条約改正を待たず、ガイドラインで先行対応を進める方向が確認されたことで、船社や関係事業者には設備投資や運用見直しの準備が早めに求められる局面に入ったといえる。

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