ロジスティクス日本GLP(東京都中央区)は10日、「冷凍・冷蔵物流施設マーケット メディア懇親会」を開催し、今後3-5年間で2000億円を投資し、冷凍・冷蔵面積を現在(2025年11月時点)の40万平方メートルから43万平方メートル規模まで拡大する方針などを説明した。
懇親会の前半では、みずほ銀行産業調査部次世代インフラ・サービス室社会インフラチームアナリストの南勇希氏が、コールドチェーン市場動向を解説。国民一人あたりの冷凍食品消費量が年々増加していることを背景に、給食・病院食・宅配食需要の高まりなどから、市場規模は今後も緩やかに拡大するとした。冷凍食品・チルド食品を主要品目とする冷凍・冷蔵倉庫のニーズも増す一方、既存倉庫の庫腹占有率が逼迫し、老朽化による建て替え需要が高まる点も追い風になると説明。ただし、ドライ倉庫に比べて建築費が高いなどの課題も依然大きいと述べた。
また南氏は、こうした課題がデベロッパーの賃料設定と、コールドチェーン事業者の想定保管料のギャップとして表れていること、さらに“アセット自前主義”が根強く、所有から賃貸への移行が進みにくい要因になっていると指摘。トークセッションでは、日本GLP営業開発部営業推進グループシニアマネージャーの伊藤晋氏、同部シニアマネージャーの草原洵也氏を交え、賃貸型冷凍・冷蔵倉庫の今後について議論した。

▲(左から)みずほ銀行の南氏、日本GLPの草原氏、伊藤氏
加工食品のEC(電子商取引)拡大においては、商品パッケージを含めた容積増加を想定する必要があり、スーパーマーケットだけでなくコンビニエンスストアやドラッグストアなど販売チャネルの広がりも倉庫スペース拡大を後押しする。加えて、既存の大手コールドチェーン事業者が自前倉庫の建て替え局面に入ることも、新たな倉庫需要増の材料になるという。
一方で、ゼネコンに加えて設備サブコンの確保も難しくなっている現状や、賃料と保管料のギャップ、すなわち「賃料の高さ」が普及の妨げとなっている点も議論された。GLPでは、内陸の通過型施設の供給や、バース接車機能など業務効率化を支援する施設開発を通じ、こうした賃料ギャップ解消に向けた取り組みにも注力している。輸配送領域でコスト転嫁が進みつつあるように、倉庫領域でも適正賃料として荷主を説得できる材料が揃いつつあるとの意見も示された。
3氏は共通して、賃貸型冷凍・冷蔵倉庫の浸透にはまだ時間を要すると予測。その理由として、用地確保の難しさ、テナントとのすり合わせ、参入障壁の高さなどを挙げた。ドライ倉庫の賃貸需要を加速させたECだが、食品分野ではEC化率が低く、家庭用に向けては冷蔵庫の容量や宅配ボックスの制約も普及のネックとなっていると見る。
それでも伊藤氏は「2000年から普及が進んだドライ倉庫と比較すると、GLPの冷凍・冷蔵倉庫は17年から本格化したばかり」と述べ、完成物件が100%稼働を維持している現状を踏まえ、今後も賃貸型冷凍・冷蔵倉庫市場をけん引していく姿勢を強調した。(大津鉄也)
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