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アジアSCは地殻変動期、“新顔リスク”対応に出遅れ

2025年12月17日 (水)

ロジスティクス経営コンサルティングのローランド・ベルガーは16日、最新の経営レポート「アジアのサプライチェーン再構築」の発行に合わせ、その内容を解説する記者説明会を東京・虎ノ門の同社オフィスで開催した。同社の小野塚征志パートナーが1時間半にわたり、アジアのサプライチェーンの現状と日本企業が取り組むべき課題について説明した。

小野塚氏は産業革命以来、世界のサプライチェーンはひたすらグローバル化の道を歩んできたが、今や潮目が変わったと指摘。トランプ関税や欧州の産業保護政策が象徴するように、各国は自国産業の育成に舵を切っている。アジアでは日中韓が主導権を握る一方、東南アジアが中国を上回る投資を呼び込み、「チャイナプラスワン」の流れは止まらない。なかでも興味深いのはインドの躍進だ。「10年、20年先には日中韓と肩を並べるかもしれない」とアジアの地殻変動を見据える小野塚氏の言葉が印象的だった。

▲CLO選任は「声が大きい人」が鍵という小野塚氏

さらに、小野塚氏が指摘したのは日本企業の“アキレス腱”だ。地震や台風には慣れているが、サイバー攻撃や人権問題といった新顔のリスクには及び腰。欧米企業が既に走り出している領域で、日本は出遅れている。小野塚氏は「取引先の取引先まで目を光らせなければ、リスクは見えてこない」と解説。サプライチェーンの奥深くまで見通す目が求められる時代になったと警鐘を鳴らした。

説明会の終盤、小野塚氏が来年4月施行の物流統括管理者(CLO)選任について語った見解が興味深い。それが「最低限必要なのは声が大きいこと」──。製造部門が幅を利かせる会社なら製造出身の実力者を、営業が強い会社なら営業出身の実力者をCLOに据えるべきだと小野塚氏は解説した。物流の専門知識よりも、各部署に物申せる人物こそが適任だという。

さらには、「物流のことをよく知らない人の方が改革を言える」という小野塚氏の逆も真なりと思えた。門外漢だからこそ、古い慣習に縛られず、全体最適の視点で物を言えるという。一人で抱え込むのは無理だから、営業、製造、調達といった各部門の専門家を集めた「チームCLO」体制で臨むべきだと小野塚氏は提言した。

質疑応答では、機能分担の実現可能性やインドの位置づけ、サイバーセキュリティー対策などについて活発な議論が交わされた。小野塚氏は、物流改正法の施行を「日本企業が新しいステージに進むいいきっかけ」と位置づけ、法令順守にとどまらず、戦略的なサプライチェーンマネジメントの実践を呼びかけた。(星裕一朗)

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