イベント名刺管理アプリ「Eight」(Sansan)が主催する日本最大級のスタートアップ展示会「Startup JAPAN EXPO 2025 in 大阪」が17日、大阪市内で開幕した。関西での開催は今回が初めて。

今回は、「製造業AI・DX EXPO」(MDX 2025)と「物流&SCM変革テックEXPO」(LGX 2025)も新たに併催され、全450社が出展。17日-18日の2日間にわたり、マイドームおおさか(大阪市中央区)と隣接する大阪商工会議所を中心に、シティプラザ大阪、OMMビルへと複数の会場にまたがる“アーバン開催モデル”で実施する。

開会式では、主催者であるSansan執行役員Eight事業部Event Business部部長の石本卓也氏が司会を務めた。石本氏は、関西の産業界・行政の後押しを受けて初開催に踏み切った経緯を紹介し、「関西から日本の魅力を強くするアクションにつなげてほしい」と来場者に呼びかけた。テープカットには、近畿経済産業局局長の信谷和重氏をはじめ、大阪商工会議所会頭でサントリーホールディングス副会長の鳥井信吾氏、神戸商工会議所会頭で神戸製鋼所特任顧問の川崎博也氏らが名を連ね、関西での初開催を祝った。
テープカット後には開催記念講演が行われ、近畿経済産業局局長の信谷氏が登壇。講演では、スタートアップが国の活力を左右する存在であることを前提に、成果が社会・経済に表れるまでには長い時間軸が必要になる点を強調。関西は大学発ベンチャーや研究開発拠点の厚みを背景に、ディープテック領域で国内外の投資家の関心が高まっているとし、スタートアップと産業界が交差する場として本展の意義を訴えた。

今回の大阪開催について、主催者のSansan Eight事業部Event Business部Climbersディレクターの郡司弘明氏と、同社コーポレートブランディング室 プロダクト広報グループの鬼久保明日香氏に話を聞いた。
郡司氏は「関西での開催を望む声は以前から多く、行政や産業界からの後押しもあって、今回初めて大阪での開催に踏み切った」と説明する。これに対し、鬼久保氏は、スタートアップイベントとして一定の規模と実績を積み重ねてきた点に触れ、「東京以外でも開催すべきフェーズに入ったという社内認識があった」と補足した。

「製造業AI・DX」と「物流&SCM」を併催テーマとして掲げた背景には、出展規模の拡大に伴うマッチング精度への課題意識があった。郡司氏は「450社規模になると、来場者が自社に合うスタートアップを見つけにくくなる」と指摘。来場者・出展者双方から、業界テーマを明確に区切ったエリア設計を求める声が高まっていたという。鬼久保氏も「大阪の産業集積を踏まえ、まず製造業に焦点を当てる判断があった」としたうえで、メーカー各社へのヒアリングを通じて、調達から物流までを含むサプライチェーンマネジメントが経営課題の中枢に浮上していることが見えてきたと話す。こうした背景から、物流・SCM領域の併催に踏み切った。
出会いを加速させるための仕組みづくりも特徴だ。郡司氏は、来場者が事前に出展企業を検索し、ブース訪問の予約ができるアポイントシステムについて、「出展者側も来場予定者の企業属性を把握したうえで提案できる双方向型とし、偶発的な名刺交換に終わらせない設計を意識した」と説明する。さらに、来場目的や課題を入力すると関連スタートアップや回遊ルートを提示するAIエージェントも活用し、多数の出展の中から効率的にマッチングできる環境を整えている。

▲ROMS、Logpose Technologies、LogiMeets、Univearthといった物流関連企業も出展
こうした取り組みの成果は初日から表れている。郡司氏によると、午前中だけでも物流領域の出展企業に対し、運輸業の担当者が来場し、後日改めて詳しい説明を求められるケースが2件発生したという。「ほかにも引き合いは出ており、スタートアップと事業会社が実務レベルでつながり始めている」と手応えを語る。物流はスタートアップ側から見ても、まだテクノロジーが入り込む余地が大きい分野であり、今回の併催が新たな接点を生む入り口になったとの見方を示した。

▲クラウド型WMS「COOOLa」を提供するブライセンの担当者は、関西での取引拡大を背景に、今後は関西を起点に西日本への展開をさらに加速させる構えだと語った。
今後の開催について、郡司氏は「年2回開催を基本に、東京と地方での開催を組み合わせていく」との方針を示す。東京をフラッグシップと位置付けつつ、地方開催は大阪を含めて継続的に検討する考えだ。鬼久保氏は海外との連携にも言及し、「韓国、香港、台湾に加え、ヨーロッパからの関心も高まりつつある」と説明。「グローバル展開というより、海外スタートアップが日本に出展し、日本企業と出会う場をつくることが重要だ」と述べ、日本にいながら国際的な技術や事業動向に触れられる展示会としての進化を見据えた。

展示会と並行して連日開催する、物流・製造業界の変革を巡る実践的なカンファレンスも見所だ。18日には、LGX 2025のプログラムの1つとして、改正物流2法と「トラック・物流Gメン」の実務を扱うセミナーを予定。トラック・物流Gメンとして監視・指導の現場を担う、国土交通省 中国運輸局 自動車交通部貨物課長の田中幸久氏が登壇し、制度対応の判断が分かれる現場の実情や、是正指導に至る考え方について解説する。モデレーターは本誌・赤澤裕介編集長が務める。
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