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日・中央アジア首脳会談

カスピ海ルート実現に向けて物流協力を協議

2025年12月19日 (金)

イベント日本政府は12月19、20日の2日間にわたり、中央アジア5か国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス)の首脳を東京に迎え、「中央アジア+日本」首脳会談を開催する。外相・高官級では継続してきた同枠組みを、初めて首脳級に引き上げて実施するもので、日本と中央アジアの関係は新たな段階に入る。今回の会談では、経済協力や地域の安定に加え、カスピ海を経由する国際物流ルートの整備が重要なテーマの一つと位置付けられている。

中央アジアは、豊富な資源を有する一方、アジアと欧州を結ぶ地政学的要衝に位置する。近年は、ロシアを経由しない輸送ルートの確保が国際的な課題となっており、その代替・補完ルートとして注目されているのが「カスピ海ルート」(トランス・カスピ国際輸送回廊)だ。中央アジアからカスピ海沿岸へ陸上輸送し、フェリーなどでカスピ海を横断、さらに南コーカサスを経由して欧州へと接続するこの回廊は、輸送リスクの分散やサプライチェーンの多元化につながる可能性を秘めている。

課題はハードよりも「制度」と「人」

もっとも、カスピ海ルートの実用化に向けては課題も少なくない。鉄道や港湾といったインフラ整備に加え、国境をまたぐ通関手続きの煩雑さや人材不足が物流のボトルネックになっているとの指摘は多い。複数国を通過する回廊では、通関の遅延がそのままリードタイムの長期化やコスト増につながる。

こうした課題を踏まえ、日本政府はハード整備と並行して、制度・人材面の支援を重視する方針だ。具体的には、港湾や国境で使用される税関保安機材(大型X線検査装置など)に関する技術協力に加え、通関職員の教育・研修支援を通じた能力強化を支援策の柱の一つに位置付ける。リスク管理型通関や機材の適切な運用、不正防止に関するノウハウを共有することで、通関の迅速化と信頼性向上を後押しする狙いがある。

日本の狙いは「実務協力による関与」

日本にとって中央アジアとの連携強化は、単なる物流支援にとどまらない戦略的意義を持つ。中央アジアはロシアや中国の影響力が強い地域だが、日本は特定の陣営に偏らない形で、インフラ、制度、人材といった実務分野で協力を積み重ねてきた。通関制度や人材育成への関与は、目立ちにくい一方で、物流の質と信頼性を左右する基盤整備でもある。

今回の首脳会談では、物流分野に加え、エネルギー、資源、デジタル分野などを含む幅広い協力の方向性が確認される見通しだ。カスピ海ルートの整備が進めば、日本企業にとっても中央アジアや欧州市場への新たなアクセス手段となり、サプライチェーン戦略の選択肢は広がる。

物流回廊は「育てる」フェーズへ

カスピ海ルートは、一度インフラを整備すれば完成する単線的な構想ではない。通関制度の運用や人材育成を含め、回廊として機能し続ける仕組みをいかに構築できるかが成否を分ける。通関職員の教育支援は、その基盤を支える取り組みの一つだ。今回の首脳会談を通じ、日本が中央アジアとどこまで実務レベルの協力を積み上げられるかが、カスピ海ルートの実効性を左右することになる。

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