サービス・商品音楽フェスで若者が手にするクラフトビール。ラベルには「物流」の文字が踊る。物流コンサルティング会社CAPES(ケイプス、東京都目黒区)が2024年5月からシリーズ発売している”物流人礼賛”がコンセプトのオリジナルビール「LOGI BEER」だ。一見珍しい、物流業界への労いを込めた一本として、発売当初から業界の内外で話題を集めた。
「物流を、かっこよくしたい」というシンプルな旗印を掲げ、CAPESは本業の倉庫自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に飽き足らず、アパレル、雑貨、果てはビール販売まで手がける。さらには「物流百貨店」というプロジェクトを立ち上げ、”物流×デザイン”をテーマにグッズを作り、売り、物流のおもしろさを世に問う。同社のブランディングとカルチャーデザインを統べる澄田果林氏に、その想いと物流応援の実情を聞いた。

「物流をテーマに、音楽、食、物販などを通して、物流の魅力を発信する催し、ロジフェス構想を持っています」と話す澄田果林氏
物流の現場を知って感じる「イメージとのギャップ」
CAPESの本業は倉庫自動化やDX支援といった物流現場のコンサルティングだ。創業から7年、数多くの現場に入り込み、オペレーション改善を手がけてきた。物流という仕事の奥深さと社会的重要性は骨身に染みている。だが同時に、業界が背負う重い十字架も見えてきた。それは世間が抱く物流への「ネガティブなイメージ」だった。
活動の原点は西尾浩紀社長の苦い体験だ。新卒で物流業界に飛び込んだ西尾氏は、合コンで職業を聞かれるたびに口ごもった。世間が物流に抱くイメージは「きつい・汚い・危険」か、せいぜい裏方仕事。仕事の中身は誇れるのに、「物流」という看板だけで胸を張れない。社会インフラとして日本経済を支える仕事なのに、当の働き手が誇りを持てずにいる。このギャップを埋め、物流を学生や若者が憧れる職業へ昇華させる。その想いがCAPESの原動力だ。
ファッション業界から転じた澄田氏は、業界外の反応にまず驚いた。だが現場に入り込むと、物流の仕事が想像以上に多面的で面白いことに気づく。「データ分析も戦略も、システム設計も全部やる。なのに世間の認識は『ヤマトか佐川か』で止まっている」。この認識のズレに、澄田氏は静かな闘志を燃やすようになった。
フェスでビールを売り「関係人口」を増やす
そうした認識を持つ企業だからこその戦略だ。CAPESは一般消費者向けブランド「MERRY LOGISTICS」(メリーロジスティクス)や「TOJO」(トジョ)を立ち上げ、音楽フェスやマーケットイベントなどに出展を重ねる。来場者は物流会社のブースとはつゆ知らず、「可愛い店がある」「ビールが旨そうだ」と足を止める。スタッフとの会話の中で初めて「実は物流がテーマなんです」と種明かしする算段だ。

▲2024年、愛知県蒲郡市で開催された野外音楽イベント「森、道、市場2024」に出店(出所:CAPES)
同社はターゲットを「元ロジ」「今ロジ」「未ロジ」の3層に分ける。「元ロジ」はかつて物流業界で働いていた人々、「今ロジ」は現在物流業界で働いている人々、そして「未ロジ」はまだ物流業界との接点がない人々を指す。特に未来の担い手である若者層に狙いを定める一方、現場で汗を流す「今ロジ」が胸を張れる土壌を耕し、一度は去った「元ロジ」にも再び振り向いてもらえる仕掛けを重ねている。音楽やファッションの文脈に「物流」を忍び込ませる。「このビール、どうやって運ばれた?」そんな一言から、暮らしと物流の接点に気づいてもらう。これが澄田氏の草の根活動である。
フェスでの草の根活動が、思わぬ形で業界内に広がった。グッズやアパレルに目を留めた同業者から、「うちのノベルティも」「ユニフォームを変えたい」と声がかかる。ノベルティといえばボールペンと軍手が定番だった業界で、若手経営者たちは社員が誇れるデザインを求めていた。
物流現場を知ってこその「デザイン×機能性」の提案
先頃の「国際物流総合展」で、CAPESはデザインとブランディングを前面に押し出した異色のブースを構えた。ユニフォーム刷新やオリジナルグッズ制作の相談が相次いだ。「ずっとダサいと思っていたが、どこに頼めばいいか分からなかった」という声に応えられるのは、物流現場のオペレーションや安全性を熟知した同社ならではだ。機能性とデザイン性を両立させた提案が可能になる。
とある大手上場企業のイベント用ユニフォームを手がけたときのこと。まず現場に足を運び、どう見られたいか、どんな「らしさ」が必要かを聞き取る。コンセプトづくりから始めるのだ。目指すのは表層の改善ではない。企業の核心を見つめ直す作業を通じて、業界の内側から「かっこよさ」を生み出そうとする同志が、静かに増えている。
「かっこよさ」が物流の未来を変える
澄田氏の持論は明快だ。毎日着るユニフォームや倉庫の案内板が垢抜けていれば、働く人の気持ちは変わる。「現場の人たちの心に届くデザインこそ、物流の改革」という澄田氏の言葉が印象的だ。輸送という機能を超えて、物流を一つの物語として読み解く。そんな視点が、ここにはある。

2024年に三軒茶屋で開催された「SANCHA HAVE A GOOD MARKET!!!」に出店した際の様子。物流をテーマにセレクトした古着などを販売した(出所:CAPES)
「かっこいいユニフォームを着たい」「業界の古臭いイメージを変えたい」。そんな想いを持つ物流企業があれば、共にアクションを起こしてほしいと澄田氏は呼びかける。一社では動かせぬ慣習も、志を同じくする仲間が集まれば、やがて大きなうねりとなる。「物流業界で働く全ての人が胸を張れる社会にしたい」。これが同社のミッションだ。また、CAPESでは関西物流展をはじめとする今年の展示会用ノベルティや、入社式・表彰式・周年記念といった社内イベント用グッズの制作依頼・相談を受け付けている。コンサルティングの枠を超え、ビールを売り、デザインをし続ける。「かっこよさ」という、実は人間にとって最も強力なエンジンが、この国の物流の未来を変える鍵になるかもしれない。(星裕一朗)
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