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丸紅ロジ、TC構想が変えるペット物流の常識

2026年1月21日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は丸紅ロジ、ペットフード物流でTC構想を本格化(1月6日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクスペットフード・用品業界が、物流の維持という大きな岐路に立たされている。犬猫の小型化や商品のプレミアム化に伴う「多品種・少量配送」の加速、そして「2024年問題」による輸送能力の不足だ。この危機に対し、丸紅ロジスティクスは物流会社が主導するプラットフォーム構築という解を提示した。

▲右から、丸紅ロジスティクス執行役員・ペットソリューション事業本部本部長の内田康夫氏、ソリューション営業本部プラットフォーム推進部部長の渡邉祐哉氏、プラットフォーム推進チーム長の湯舟航耶氏

「川上から川下まで」一気通貫で支える戦略

丸紅ロジスティクス執行役員・ペットソリューション事業本部本部長の内田康夫氏は、同社の戦略について「調達・国際物流の上流から国内配送の下流まで一気通貫で支援しており、国際部隊とも連携して川上から川下までサプライチェーンを提供しているのが我々の強みである」と語る。同社はこれまでも、生産国でのコンソリデーション(混載)から輸入通関、そして国内拠点での「個パック」(リパック)と物流機能の統合といった取り組みで、一定の成果を上げてきている。

特に注力してきたのが、複数メーカーの商品を混載して配送する共同配送だ。内田氏は「一つの物流センターの中に、複数メーカー様の在庫を同床化させ、各卸・小売りのセンターへ混載して配送することによって、積載率の向上・CO2削減効果を拡大。各メーカー様の単独配送と比較するとかなりのコスト削減とムダ・ムラを解消する機能」とその実効性を強調する。

顧客外の荷物も集約する「TC構想」の狙い

これは、現在同社が倉庫運営を受託していない「顧客外」のメーカーの商品も、同社拠点をハブとして

2026年1月、この取り組みは「TC(通過型拠点)構想」へと進化した。これは、現在同社が倉庫運営を受託していない「顧客外」のメーカーの商品も、同社拠点をハブとして既存の共同配送網に載せるという画期的な試みである。ソリューション営業本部プラットフォーム推進部部長の渡邉祐哉氏は「今回のTC構想は、関東・中部・関西のプラットフォームセンターをTCとしても使い、我々が在庫していないメーカーの商品も共同化しようというサービスである」と説明する。

プラットフォーム推進チーム長の湯舟航耶氏は、この構想の具体的な運用について「我々の顧客でないメーカー様が個別に手配しているチャーター便は、基本的には満載ではないはず。これを一回我々のセンターに複数納品先分まとめて持ってきてもらい、当社が仕分けをして共配便に乗せることで高積載の配送を目指す」と、車両の有効活用という側面を補足した。中堅以下の企業こそメリットが大きく、渡邉氏は「チャーター1台を仕立てるより、共配便の隙間をパレットやケース単位で利用してもらう方が安価になる。中堅メーカー様にもお声がけを始めている」と明かす。

▲丸紅ロジの主な拠点。青枠が既存のTCで、赤枠が新規にTC機能を持つプラットフォーム拠点

成長を続けるペット市場と集約の意義

日本全体で人口が減少していても、核家族化により世帯数はまだ減っていないため、ペット数もまだ増え続けている。渡邉氏は「当面はペットの数も増えていく。ペットフードは年率3%ほど伸びており、物量が増えている成長マーケットである」と分析する。

この成長市場においてペットフード・用品を集約することには、特有の意味がある。特にペットフードは海外生産が多く、輸入から店頭に並ぶまで2~3か月という長いリードタイムがかかる。このため「食品のように数日で回るサプライチェーンとは異なり、在庫管理の難易度が高い」と渡邉氏は指摘する。物流会社が需要予測やBPOまで踏み込んで顧客の在庫を最適化することに価値が生まれるのだ。

また、積載面でも「重い缶詰や袋物と、水槽やペットシートのような軽いものを組み合わせると、容積と重量のバランスが勝手にいい具合にミックスされる」というペット用品ならではの組み合わせの妙が積載率向上に寄与している。パレットの積み方にしても、重いフード類を下段に、軽いシート類を上段に配置するパレチゼーションの最適化が、この独自の集約によって可能となる。

システムと実運用で実現する「全体最適」

丸紅ロジスティクスの強みは、単一拠点にとどまらない全エリアを統合した最適化にある。湯舟氏は「中部の拠点の人は関東の配車状況が見えていない、関東の人は中部の配車状況が見えていない。この実務視野を広げて、どこからどこに、どのタイミングで輸配送したら全体が最適になるのかという、人が解けない問題を解きにいくのが画期的である」と語る。

この最適化を支える基盤がデータの標準化である。湯舟氏は「既存の共同化センターでもデータが標準化されておらず、いわゆる手組みで配車している現状があった」と振り返る。そこで内閣府の「SIP物流情報標準ガイドライン」に準拠した統合データベースと可視化システムを構築した。これらのシステムによって、配車担当が過去の配車実績を多角的に分析し、改善効果を定量的に提示できるようになった。この「事実に基づくフィードバック」が、当初は「ライバルと一緒に運ぶなど許さない」と強い拒否反応を示していたメーカー同士の心理的な壁を取り除き、今では「どんどんやってくれ」とスタンスを変える決定打となったのである。

2024年問題への危機感と「荷役」という課題

背景にあるのは、荷主・物流企業双方に共通する24年問題への強い危機感だ。内田氏は「24年問題で時間の制約が厳しくなり、メーカー様も間違いなく危機感を持っている。プレスリリースを出すと、自ずと問い合わせが入ってくるのがその証拠である」と語る。

なかでも、共同配送の推進を阻む深刻な課題が、納品先での「荷待ち・荷役」の問題だ。渡邉氏は「納品時にアイテム別に仕分けをしたり、パレットを積み替えたりといった付帯作業が山のようにあり、放っておくと2時間ルールをオーバーしてしまう」と現状を危惧する。例えば、1枚のパレットに複数のアイテムを混載して運んでも、納品時には「アイテムごとにパレットを分けて仕分けし直す」といった、物流効率に逆行する商習慣が依然として根強く残っているのである。

同社はすでに、事前出荷情報(ASN)を活用して待機時間を短縮するなどの成果を上げている。湯舟氏は「実運用するとなれば、当社が開発した情報共有基盤に外部インターフェースをつないで、翻訳(変換)を自動化する仕組みになる」と、デジタルによるさらなる効率化の展望を示す。内田氏は「物流の立場、メーカーの立場、小売りの立場で一緒に改善しないといけない。国も規制を強めていく方向であり、今後はさらにシステムの運用面でうまくやっていくとともに、荷役が減るようなパッケージ化(外装サイズの統一など)を含め、効率化・省人化に向けた業界全体の課題解決を目指していく」と締めくくった。

関東から全国へ、そして未来へ

丸紅ロジスティクスは、26年6月に九州プラットフォームセンターの立ち上げを予定しており、関東から始まったプラットフォームが東北から九州までの広域なネットワークとして完成する。今後は実績・データに基づく改善サイクルを速やかに回し、車両積載率や走行距離、CO2排出量を計測して迅速な改善につなげていく方針だ。同社が構築するペットプラットフォームは、単なるコスト削減の手段ではなく、日本のペットライフを支える「持続可能な血流」になろうとしている。(土屋悟)

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