
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「中部空港で自動運転トーイング実証、DMPなど」(1月22日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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話題空港の制限区域内という、航空機や特殊車両が混在する極めて難易度の高い環境で、自動運転の社会実装が大きな一歩を踏み出した。ダイナミックマッププラットフォーム(DMP)ら4社は、中部国際空港で情報集約基盤「VIPS」(空港内情報集約基盤)を活用した自動運転トーイングトラクターの走行実証を実施。これまで「車載センサーの限界」とされてきた航空機走行経路の横断という難所を、デジタル地図とインフラ情報の融合によって突破した。その舞台裏には、空港のみならず物流センターや港湾の未来をアップデートする、独自のデータ連携戦略があった。
「見えないものを見せる」VIPSの正体
「自らのセンサーで見えない情報も、インフラからの情報を利用することで見えるようになる」。DMPの事業担当者は、独自開発したVIPSの意義をこう説く。
自動運転車両が搭載するカメラやLiDAR(ライダー)といった物理センサーは、構造物による死角や、濃霧・大雨といった悪天候時に認識能力が低下する弱点がある。VIPSは、空港内のAI搭載カメラやセンサーから得た動的情報(航空機や車両の位置など)を集約し、車両が必要なデータのみをリアルタイムで配信する。これを車両側の高精度3次元地図と統合することで、いわば「千里眼」を持った正確な走行が可能になるのだ。
世界初、航空機横断の「壁」を突破
今回の実証で最も画期的なのは、航空機の走行経路を横断する「サービスレーン」での自律走行に成功した点だ。航空機の位置情報は通常、管制塔が管理しており外部には公開されていない。そのため、横断判断は極めて高難度とされ、海外でも類を見ない挑戦だった。

▲空港内における「VIPS」システムイメージ図(出所:ダイナミックマッププラットフォーム)
DMPらは、AIカメラで捉えた航空機のリアルタイム位置情報をVIPSで解析し、車両へ送信する仕組みを構築。これにより、これまでターミナル周辺に限られていた自動運転可能エリアを、離れた駐機場(沖止めエリア)まで拡大できる道筋を付けた。これは人為的ミスによるインシデントが発生しやすいエリアの安全性向上にも直結する。
物流施設や港湾へ、「バレーパーキング」の横展開
この技術の射程は空港にとどまらない。DMPはすでに、物流デベロッパーやシステム会社と連携し、物流センター内での「レベル4自動運転トラックのバレーパーキング」に向けた実証の検討を開始している。
VIPSは、インターフェースをカスタマイズすることで、物流倉庫や港湾施設へも転用可能な設計となっている。政府も物流産業の効率化や港湾ロジスティクスの強化を打ち出しており、建物による死角が多い物流拠点において、インフラ側から車両に情報を流す「協調型」の自動運転は、運搬効率と安全性を飛躍的に高める鍵となる。2026年度にはビジネスモデルの本格的な議論を予定しており、ユーザー間でのコストシェアモデルなども視野に入れているという。
地図データがもたらす「省エネ」と「冗長性」
高精度3次元地図が果たす役割は、単なるナビゲーションではない。車両側で交通規則や道路形状を事前に把握できるため、走行中のCPU処理能力、時間、さらにはエネルギーの節約にも貢献する。これはバッテリー駆動の自動運転車両にとって、稼働時間の延長という実利をもたらす。
また、悪天候への耐性も大きな強みだ。豪雨や霧でカメラが白線や周囲を視認できなくなった場合でも、地図データ上の情報を座標と照合することで、安定した走行を継続できる。物理センサーを地図データで補完し、情報の冗長性を高めるこの手法こそが、全天候型のレベル4実現に不可欠なピースだ。
過渡期に求められる「人と機械の共存」技術
深刻な労働人口の減少と採用難が加速するなか、あらゆる物流現場で省人化・機械化の推進は避けて通れない課題だ。しかし、全ての現場をいきなり完全自動化し、人間を完全に排除することは現実的ではない。空港や物流センターの多くは、依然として自動化された機械と人間が複雑に入り交じって働く「混在型」の現場であり続けるはずだ。
VIPSが提供する情報は、完全無人化のためだけではない。「非熟練作業者や外国人労働者が、事故なくスムーズに業務に取り組めるようサポートする」という側面も併せ持っている。完全に機械化することが最適な現場もあれば、人と機械が共存せざるを得ない現場もある。だからこそ、人間の作業者の動きをリアルタイムで把握し、繊細かつデリケートな挙動で協調できる技術は、物流の自動化が進む過渡期においてこそ、真に求められる「必須技術」と言えるだろう。

▲使用機材のトーイングトラクター(出所:ダイナミックマッププラットフォーム)
日本の物流が「選ばれる産業」であり続けるためには、技術による省人化と、現場の人間を支えるインフラの両輪が不可欠だ。今回の実証で示されたのは、単なる車両の自動化ではなく、空間そのものをデジタル化して「安全」を担保するという方法論だ。このデジタル地図という技術が、次世代のさまざまな物流現場へと広がる日は、そう遠くないかもしれない。
公道での自動運転は安全性の確保はもちろん重要だが、各種法制度との整合性を取ったり、時には制度の変更の必要もあるためなかなか進まないという側面もある。であればせめて、空港などのクローズドなエリアだけでも積極的に自動化、無人化していくべきだろう。中国の港湾では陸揚げされたコンテナをAGVを使って無人で移動させるといった運用も始まっている。国内ではまだまだ効率化・省人化が進んでいるとは言えない港湾の領域でも、こうした取り組みの推進が必要だ。(土屋悟)
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