イベント現在開催中の「物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2026」で、パネルディスカッション「ロボ導入はどこから始めるべきか― 経営視点で考える成功へのアプローチ」が開催された。初日の開場直後の開催にもかかわらず満席となり、ロボティクス導入への関心の高さがうかがわれた。

▲ソフトバンクロボティクス(東京都港区)ロジスティクス事業本部事業企画課課長の矢野覚士氏
本セッションの登壇者は、Exotec Nihon(東京都港区)の立脇竜社長、ギークプラス(渋谷区)マテリアルハンドリング事業部の小池智也事業部長、ソフトバンクロボティクス(港区)ロジスティクス事業本部事業企画課の矢野覚士氏の3人。本誌記者の鶴岡昇平がモデレーターを務めた。
スモールスタートの「光と影」
議論の口火を切ったのは、導入のハードルをどう下げるかという点だ。ギークプラスの小池氏は、多くの企業が「まずは1億円程度から」という規模での導入を検討している現状に触れ、「最初から完璧を目指しすぎず、特定の工程からスモールスタートすることで現場に成功体験を作ることが重要」と説いた。特にAMR(自律走行搬送ロボット)のような柔軟なシステムにおいては、現場スタッフがロボットとの共存に慣れる期間を設けることが、結果として全社展開への近道になると語った。

▲ギークプラス・マテリアルハンドリング事業部長の小池智也氏
ソフトバンクロボティクスの矢野氏もこれに同調し、スモールスタートで得られる「生きたデータ」の価値を強調した。「ロボットを動かしてみて初めて、現場の真のボトルネックが可視化される。そのデータを分析し、次のステップへ繋げるDX的な運用のサイクルを回すことこそが、投資の確実性を高める」と、データに基づいた段階的投資の有効性を指摘した。
ここで、モデレーターの鶴岡が「では、100億円規模の投資検討についてはどう考えるべきか」と問いを投げかけた。これに対し、Exotec Nihonの立脇氏は「大きく始められるのであれば、その方が望ましい」と断言し、安易なスモールスタートが孕むリスクを指摘した。
「失敗しない」ためのインテグレーション
「部分的な自動化を継ぎ足していくと、将来的にシステムが『パッチワーク』のようになり、工程間に必ずボトルネックが生まれる。拡張を繰り返す過程で運用が複雑化し、結果として全体の効率を下げてしまう。可能であれば初期段階で相応の資本を投下し、全体最適を見据えた一貫性のある設計を行うべきだ」と、経営指標としてのROIC(投下資本利益率)を最大化させるための視座を提示した。また、「一般に倉庫や物流は『コストセンター』と考えられがちだが、デジタルで効率化することで、利益を生む『プロフィットセンター』にすることさえ可能だ」と語り、経営視点で戦略的に倉庫の設計・運用をするべきであることを強調した。

▲EXOTEC NIHON社長の立脇竜氏
一方で、高額な投資には失敗のリスクがつきまとう。立脇氏は「ロボットを入れたが上手くいかなかった」という業界の失敗例を認めつつ、その原因は「箱(機械)」だけを見て運用を見ていないことにあると分析する。
「EXOTECでは、荷物の扱いから現場のオペレーションまで、あらゆる要素をインテグレーションし、物流の最適化をコンサルティングすることで結果にコミットする。単なる機械の導入ではなく、事業を止めないための戦略的パートナーシップこそが成功には不可欠だ」と語った。
この「運用の重要性」について、矢野氏も自社の清掃ロボットや配膳ロボットでの知見を交えて補足した。「ロボットは導入がゴールではない。現場の既存のフローにどう組み込み、人とどう役割分担をさせるかという『現場への浸透プロセス』を設計できなければ、どんなに優れた機械も宝の持ち腐れになる」と、導入後の伴走支援の重要性を説いた。
100万円の使い道が企業の未来を変える
小池氏は、マテリアルハンドリングの観点から「失敗しないためには、将来の物量予測を過信しすぎないこと。拡張性に優れたシステムを選びつつ、導入パートナーと共に現場の声を吸い上げ続ける体制が必要だ」と述べ、ベンダーとユーザーが一体となって改善し続ける姿勢が、最終的な売上拡大に寄与すると指摘した。

▲LOGISTICS TODAY記者の鶴岡昇平
セッションの締めくくりとして、立脇氏は経営者へ向けた力強いメッセージを投げかけた。
「同じ業務を行うにしても、人を雇って支払う人件費は『消費』であり、支払えば二度と戻ってこない。しかし、自動倉庫やロボティクスへの支出は、企業の価値を高める『資産』となる。この差を理解することが、売上を伸ばすための経営の第一歩だ。いきなり億単位の決断を迫るわけではない。目の前にある100万円を、単なる人件費として消費するのか。それとも、自動化の知見を蓄積するために投じるのか。その判断が、数年後の大きな差となって現れる」
ロボティクス導入は、もはやコスト削減の手段ではなく、売上を最大化し企業を成長させるための「投資」である。会場に詰めかけた聴講者たちは、最新のテクノロジーをどう「経営の武器」に変えるべきか、その本質を突きつけられた格好となった。
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