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迫る2030年問題、倉庫を救うのは攻めの自動化だ

2026年3月12日 (木)

イベント12日、13日に開催された「物流倉庫ロボティクス・オペレーション展2026」で「物流の2030年問題について真剣に考える、今から行う人手不足対策。~なぜ今から考えなくてはいけないのか。今ならまだ間に合う!~」と題したパネルディスカッションが行われた。

登壇者は、KURANDO(クランド、東京都品川区)代表取締役の岡澤一弘氏、ロジザード執行役員・企画営業部長の垣野充洋氏、Exotec Nihon(エグゾテックニホン、港区)代表取締役社長の立脇竜氏の3人。本誌記者の鶴岡昇平がモデレーターを務めた。

トラックドライバー不足の陰に隠れた「倉庫の人手不足」

2030年問題において、世間ではトラックドライバーの不足ばかりが注目されがちだが、その陰で物流拠点の「倉庫の人手不足」が深刻化している。KURANDOの岡澤氏は、倉庫の人手不足について「影響の出方が非常に緩やかであったり、いろんな形でコストに跳ね返ってきながら影響が出てきている」と指摘し、時間帯や曜日、エリアによって状況がまちまちであることを説明した。また、ロジザードの垣野氏は、ドライバー不足に比べて「会社全体として危機感を持っているけど、そこまでではない」と業界の空気を分析し、「変える一歩目が踏み出せてない企業が多い」と警鐘を鳴らした。

▲ロジザード執行役員・企画営業部長の垣野充洋氏

「守り」から「攻めの自動化」への転換

人手不足対策として真っ先に挙がるのが「自動化・省人化」だが、Exotec Nihonの立脇氏はこの風潮に対し、「人が足りないから自動化、省人化するというのは、完全に守りに入った発想」と違和感を呈する。同氏は「自動化は金銭コストがかかるし、導入を実運用に載せるの自体も非常に大変」であるからこそ、「攻めのためのツールとして自動化を考えていくべき」だと主張した。そのためにはデータの見える化が不可欠であり、「経営が持っているKPIと倉庫の自動化のKPIがどこでどういうふうにつながっているか」を設計し、ビジネスを伸ばす図式を作ることが重要だと説いた。

▲Exotec Nihon社長の立脇竜氏

これに対し垣野氏もデータ活用の重要性に同意しつつ、「何億円投資するのだけが自動化ではない」と語る。「自動梱包機からでもいいから入れてみようとか、一つ一つ、やっぱり自分たちが変わっていかないといけないんだ」と述べ、自社の規模に合わせた小さな投資から段階的に進めるアプローチの必要性を訴えた。

激化する「優秀なセンター長」の争奪戦

こうした自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む一方で、現場を統括し、機械のパフォーマンスを最大限に引き出す「管理者」の重要性はむしろ高まっている。岡澤氏は「優秀なセンター長がいると、感覚値として10%くらいの費用に違いが出る」と指摘した。優秀なセンター長がいれば100人で回る現場も、そうでない人材の元では110人の人員が必要になるというイメージだという。一般的な物流会社の営業利益率は5%程度であるため、この10%の差は「軽く黒字か赤字かが変わってしまう」ほどの決定的な意味を持つ。垣野氏もこれに同意し、「現場のマネジメントスキルによって、倉庫運営の精度、クオリティーが全然違ってしまうというのは、実体験としてもある」と語った。

▲KURANDO代表取締役の岡澤一弘氏

その結果、有能な人材の争奪戦が激化している。岡澤氏は「有能な3PLのセンター長が取りあいになっているのが現状」と、他企業からの引き抜きが横行している状況を暴露し、荷主からも「あのセンター長いいから変えないでくれ」と強い引き留めがあることを明かした。

こうした事態に対し、垣野氏は「バリューを出せる方々に対して給与を払えるためのコスト構造にしなきゃいけない」と主張した。岡澤氏も、これだけの経済インパクトを出せるのであれば「現状の方が平均して600万、700万という給与ベースだったとした時に、700万、800万、900万ぐらいまでを払うべきだし、原理的には可能」だとし、管理者に対する適切な処遇と評価基準の再設計が急務であると訴えた。

2030年に間に合わせるために「今」動く

議論の最後には、2030年の労働力不足に向けて「今すぐ」行動を起こすことの重要性について、3人から物流業界に向けた強いメッセージが発信された。

岡澤氏は、問題を本質的に解決するには経営陣に「ぜひ関心を持ってほしい」と要望した。経営層が「今の物流をなんとかしないとダメだ」と方針を出すことで、「そういうことに関心を持ってもらえているんだなとなり、現場からも意見が上がりやすくなる」と語り、物流部門だけでなく企業全体を巻き込んだ意識改革を推奨した。

立脇氏は投資判断の基準について、「ROI(コスト削減の回収年数)ではなく、ROIC(投下資本に対する事業リターン)で意思決定」することが重要だと述べた。「投資をしてそこからビジネスのリターンがどれぐらい戻ってきたか、事業がどれだけ伸びたかという考え方」を持つことで、予算規模に関わらずマインドセットを変革できると提言した。

最後に垣野氏は、「今、一歩目を踏み出せないでそのままでいることは、これからの5年間動かないということにつながる」と警告した。「そして、きっと5年後にはもうどうにもならなくなっている」と強い言葉で危機感を示し、「1日でも早く改善に向けて一歩踏み出す行動を起こしてほしい」と語り、早期の行動開始を促してパネルディスカッションを締めくくった。

コストセンターから脱却し「稼げる物流倉庫」を作れ

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