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軽油375円のシナリオも、全規模で赤字転落の恐れ

2026年3月7日 (土)

環境・CSRカタールのサアド・カービ・エネルギー相が6日、海外経済紙に対し「タンカーが海峡を通れなければ原油は1バレルあたり150ドルに達する」との見方を示した。本誌が3日に報じた悲観シナリオは原油140ドルで軽油300-330円だったが、原油はすでに90ドルを超え、150ドルが視野に入りつつある。今回は為替156円/ドル(紛争前の実勢)を前提に、150ドル時の軽油価格と運送事業者の経営への影響を試算した。軽油はリットル350-375円、全日本トラック協会(全ト協)の経営分析報告書をもとにしたシミュレーションでは、大手を含む全規模の事業者が営業赤字に転落する計算になる。(編集長・赤澤裕介)

原油90ドルの「次」を試算する

3日配信の「軽油300円超も、封鎖長期化の衝撃」で、本誌はNRI(野村総合研究所)の木内登英エグゼクティブ・エコノミストが示した3つの原油価格シナリオをもとに軽油小売価格を独自推計した。同日配信の「軽油300円最悪想定、運送97%が赤字圏に」では、全ト協の経営分析報告書(2023年度決算版)のデータを使い、車両規模別の経営影響をシミュレーションした。

3日時点のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は75ドルだった。6日の終値はWTI90.90ドル、ブレント92.69ドル。WTIは1983年の先物取引開始以来、最大の週間上昇率(+35.63%)を記録した。同日、トランプ大統領がイランに「無条件降伏」を要求し、紛争の長期化が意識されている。

カタールはホルムズ海峡経由でLNG(液化天然ガス)を輸出する当事国であり、このエネルギー相発言を受けて、150ドルを前提にした試算を追加する。

今回の試算の前提を整理する。

為替は紛争前(2月27日)の実勢を採用した。中東有事で157-158円台に円安が進んでおり、156円は保守的な前提だ。軽油引取税の暫定税率17.1円分は25年11月以降、補助金で同額が相殺されており、実質的に本則15.0円の負担で試算している。26年4月に暫定税率は正式に廃止される。消費税は本体価格と石油石炭税に10%が課され、軽油引取税には課税されない。

原油が65ドルから150ドルに上がると、ドル建てで2.31倍。ただし軽油の小売価格は原油コストに加え、精製マージン、流通コスト、販売マージンの積み上げで決まる。原油高騰局面ではこれらも連動して上がるため、本体価格の上昇倍率は原油の倍率を上回る。為替156円/ドルでの円建て原油コストを織り込むと、本体価格は紛争前の2.6-2.8倍、金額にして300-325円になる。

税を加えた軽油の小売価格は、リットル350-375円になる。暫定税率17.1円分は補助金で相殺済みのため、3月時点でも4月以降でも実質的な負担水準は変わらない。

※暫定税率分は補助金で相殺済みのため、3月時点の実質負担で試算。為替が158円台に進めばさらに上振れする

3日の記事(軽油300円超も、封鎖長期化の衝撃)で「ガソリンと軽油の価格差がほぼなくなる」と指摘したが、150ドル・為替156円ではその傾向がさらに進む。本体価格の上昇がガソリン税の二重課税構造の差を吸収するため、軽油がガソリンを逆転する計算になる。

この軽油価格を、全ト協の経営分析報告書に当てはめる。

前回の悲観シナリオ(軽油330円上限)では、100台以下の事業者がすべて営業赤字に転落し、黒字だったのは101台以上(業界の3%)だけだった。その101台以上の営業損益率も+0.4%だった。

軽油375円では、この+0.4%も維持できない。

全ト協の経営分析報告書(全国2451事業者の集計)によると、営業費用に占める燃料油脂費の構成比は全規模で14-15%だ。軽油が145円から375円に上がれば燃料油脂費は2.59倍になり、追加のコスト負担は営業収益比で23-24ポイントに達する。前回の悲観シナリオ(軽油330円)での追加負担は19ポイントだった。この4-5ポイントの差で、大手を含む全規模が赤字に転じる計算だ。

前回は「業界の97%が赤字」だったが、150ドル・為替156円では全規模が赤字圏に入る。

10台以下の事業者に限れば、前回の悲観シナリオで営業損益率▲4.8%、1者あたりの赤字額は3077万円だった。年間売上高6521万円に対し、売上の半分近くが赤字だ。軽油375円では▲6%に迫り、赤字額は3800万円を超える。23年度の時点ですでに52%が営業赤字であり、ここに燃料費の急騰が加わると、廃業・倒産が広がる可能性がある。

この試算は「燃料費だけが動いた場合」の最低限の悪化幅だ。タイヤ・オイル代の上昇、荷動き減少、金利負担の増加は織り込んでいない。一方で、燃料サーチャージの再交渉による緩和効果も反映していない。実際の影響は、運賃転嫁がどこまで進むかで大きく変わる。しかし全ト協の調査では価格転嫁は道半ばであり、中小事業者ほど交渉力が弱い。コスト上昇が運賃に反映されるまでのタイムラグが、資金繰りの圧迫要因になる。

ホルムズ海峡の封鎖は7日目に入り、原油は90ドルを超えた。3日時点で最悪シナリオだった原油140ドルは、今のペースが続けば数週間で到達しうる水準だ。150ドルになれば軽油は375円、全規模が赤字になる。全ト協の経営分析が示す業界の利益率は、燃料費の追加負担を吸収できる水準にない。燃料サーチャージの交渉と荷主への運賃転嫁を急ぐ必要がある。

軽油300円最悪想定、運送97%が赤字圏に

軽油300円超も、封鎖長期化の衝撃

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